大型劇―舞台
ユイ
チャイムが鳴った…!
ウチは急いで結奈の所へ行く。
「結奈ちゃん、あのさ、今日の授業、どうだった?」
「あえっとぉ、数学が難しかったかもしれないけど他のはめっちゃいけた!」
しゃべり方の癖が強いんだよねぇ…。
「マジ?ウチさ、あんまり国語が得意じゃなくて、教えてくれたらうれしいな!」
これは素直に思ったこと。
「え、いいよ?今やる?教室で。」
ちょっと油断してるみたい。これは別にただいつも通りに会話してるだけだけど、
ホントは裏でみんながめっちゃ動いてるんだよね…。
「ありがと。教科書の、あそこの物語なんだけど…。」
「あ、あそこね、えっと、あれはここの表現をちゃんと見て、でそこから考えると、主人公の気持ちとかがわかってくるんよ、事実と基づけるといいかも!」
メイリより、教え方がわかりやすいんだけど…。
これで性格もよければなぁ…。どうしてこんなにマウントとるんだろ、結奈って。
時計だと、あと2分でシグレが来るから…。
「主人公の気持ちってさ、そんなの分かるかって思っちゃうんだけど、確かに事実と基づいてやればいけるかも!」
「そうそう、その調子だよ。」
結奈ちゃんが丁寧に教えてくれてる。やっぱり、舞台の上にいるとはいえ、いつもの毎日と特に差ないんだよね。
トントン。
ドアが叩かれる音がする。
「ね、結奈ちゃん、ドア叩かれてるけど、出る?」
「じゃぁ、ウチ、誰か見てくる。」
モチロン、シグレなんだけどね。
ドアを開けた結奈とシグレの目が合う。
「わ、東雲先輩…!」
「いいところにいたね。本条さん。あのね、実は君に紹介したい人がいるんだ。
今、時間はある?あるんだったら紹介しようと思うんだけど。」
「はい!行きますっ!」
はい!、今のところ、シナリオ通りに物事が進んでる…。
「ってことでユイちゃん、ごめん。私ちょっと会ってくる。」
「じゃぁ、ウチ図書館で勉強してるわ」
ってことで荷物をもって図書館に行くふりをしてメイリの所へ。
もう、シグレはC棟まで結奈を連れて行ってるはず!
シグレ
さてさてさて、僕の出番。
本条さんって元気な人だから、騙しやすいけど、ちょっと罪悪感がある。
っていうか、騙してない、これは騙してるんじゃない。
教室のドアを叩けばやっぱり、本条さんが出てくる。
「わ、東雲先輩!」
「いいところにいたね。本条さん。あのね、実は君に紹介したい人がいるんだ。
今、時間はある?だったら紹介しようと思うんだけど。」
「はい、行きますっ!」
元気な返事だけど…。いじめって影なんだよね、表側からだと何にも見えない…。
とりあえず、本条さんの質問を適当に
「うん、」とか「へぇ。」とか「なるほど~」とかで受け流しながら、
C棟校舎裏へ。ちょっと夕日がまぶしいな。まぁまだ夕日ってほどでもないけど。
僕の役目はここまでかな?
「もうそろそろ、来るんだ。…。あっ!ごめん本条さん、
生徒会で急用があったの忘れてた。僕はもう行くね。」
もの言いたげな本条さんを置いて僕は逃走。そして行く先はメイリちゃんのところ。
美鈴
シグレさんが、何か言って走っていった。たぶん、今なんだろう。
本条結奈は突っ立ってる。校舎の壁に寄りかかって。
「本条さん。」
思い切って声をかけてみた。
後ろにはヒスイもいるんだ。怖がることなんかない。けどコワイ。
私を見ると本条さんは急に
「は?なんであんたがいるの?」
怒りだした。
「いや、
東雲先輩に紹介したい人がいるって言われたからここに来たの。」
「あんたが?東雲先輩に?ありえるわけないでしょ?幻覚でも見たの?」
いや結奈、私の方が東雲先輩とは仲いいですから…。
「でね、私、貴女に話したいことがあるの。」
結奈の笑顔がひきつった。
「貴女、私のコト、イジメてたでしょ?それをさ、この学校のみんなにばらしてもいい?いじめた側が平然としていじめられた側がめそめそしてるなんて違うと思うんだよね。だから。」
「はぁ?何言ってんの?私あんたのコト、イジメてなんかいないよ?
勝手に勘違いしてくるのやめてくれない?」
いや、もうこっちには証拠が全部あるの。
「結奈、貴女が私にしたことの証拠、まだ全部取ってあるから。
それに、真紀ちゃんのシャーペン奪おうとしようとしたところとかも全部あるよ。」
私がそう言って、色々見せると、結奈は案の定、全部もみ消そうとしてきた…。
強引だなぁ、どうせ、証拠には残ってるんだし、ヒスイこれ動画撮ってるし。
私はちょっとずつずれて、結奈を誘導。それで、ヒスイが隠れているところまで行って合図を出す。
「ヒスイ。」
「ん?」
結奈は急に物陰から出てきたヒスイにびっくりしてるみたいだった。
「ねぇ、ウチの妹イジメてたのやっぱり、君だよね。」
「まさか、そんなことウチ、しませんよ!」
「参考資料も残ってるってコト、俺もう知ってるんだ。」
「まぁ、でもそんな資料、どうせ作り物にきまってるわ。美鈴のね。」
「いや、君が筆箱捨ててるところの動画とかもちゃんと撮ってたよ。」
「もう、!いいよ!
確かに私は美鈴のもの隠したけど!別に美鈴が困ってなかったからよくない?
お母さんに言って、あんたらなんか退学にさせるんだから!」
ついにトンチンカンなことを言い出した…。この人大丈夫かな。
だって、イジメする人っていつだって、その人自身にもあんまり余裕がない。
私の傷は、まだ癒えてないけど、でも
結奈ちゃんはまだ傷つきながら何かと戦ってるんだと思う。
だからこそ、分かって、ちゃんと学んでもらわなくちゃ。
カスミ
ヒスイ君の妹さんのために、今私はフル稼働中。
ユイと私が見つけた情報だと、今日、この地区でのいじめ問題についての会議が開かれる。だからそこに押しいるのである。
無茶な行動かもしれないけど、でも、私そこの校長先生と面識あるんだよね。
校長先生と、たぶん、校長先生の補佐みたいなカンジの本条さんの母ハッケン!
ってことで突撃!
「すいません、あの、実は知人が、貴方の勤めていらっしゃる小学校に通っていたことがありまして、その時あったことについて少しだけ、歩きながらでもいいのでお話しさせていただけないでしょうか。」
モチロン、急に話しかけてきた女子高生にびっくりしている校長先生。
「すこしだけなら。」
やった!
「今年中一になります、霊堂美鈴、という子をご存じでしょうか、
実はその子、小学校でイジメられていたらしく今も教室に入れずにおります、
イジメの証拠はこのような具合で…。」
わっせわっせと資料を校長先生に見せていく。
隣にいた本条さんの母は思いっきり焦ってて…。
「こんなことが…。」
案外簡単に信じてもらえた。
「ちなみにイジメていた子はわかるかね?」
「ええ。」
ヒヨリとサエと同時に、
「主犯は本条結奈でございます。このように今の中学でもまだ友達からシャーペンを奪おうとしたりと悪行を…。」
ヒスイがとってくれたのめっちゃ使える…!
「本条結奈と言えば、本条さん、君の娘さんじゃないかい?」
校長先生の目がいつになく厳しい…。これは勝ったと思う!
「ええ、まぁでもウチの子はそんなことしません。」
「と言っているが。」
「では、動画をご覧になればわかるでしょう。本条さんのお母さまも、校長先生も、結局結奈さんの嘘に騙されておられたのですね。」
そういって、ビデオ通話を流す。
めいりちゃんのスマホが写した本条さんが自分からいじめをバクロするシーン。
一連の流れもビデオに残ってるから。
「結奈!結奈!」
ビデオ通話から話しかける本条さんの母。
それに気づいた、メイリちゃんのスマホに映る本条さん。
よし、こっち劇完了。、
ヒスイ
さて、さっきから結奈がいろいろ言っているが正直何を言っているのかわからない。
理論っていうか感情論で押し切ろうとしてるけど、論理と感情だったら裁判の場合論理が勝つ。っていうことで無駄。メイリちゃんのスマホから結奈のお母さんの声。
「結奈!結奈!」
「あ、お母さん!あのね!コイツらが私のコトをいじめて…。」
「ごめんね、結奈もう、騙されないの。ちゃんと謝りなさい。」
「やだ。コイツが!ずっと、うざかったのはこいつじゃん!」
あぁ、なんかまた言ってる。
「じゃぁさ、何がどうして美鈴ちゃんのコト嫌いだったのかちゃんと説明してよ。」
メイリの声。
「だって、顔も可愛くてさ、勉強もできて、
でもできない運動の時間だけは毎回見学。そんなのずるくない?」
見えた…。本条さんの美鈴に対する憎悪の塊。
悪化してる!
「めいり!悪化してる!」
俺はとっさに叫んだが、正直、悪化した結奈のとげに当たったらひとたまりも…。
メイリ
「めいり!悪化してる!」
急にヒスイさんの声が聞こえて、目の前を見ると、何か大きな黒いとげとげがこっちに向かって、攻撃してきた…。結奈ちゃんの心みたいなのが、黒い色になってる。
これが悪化なの…?
まって、よけられないかも…!?
「あのねぇ、華嵐にお手数かけないでよ。」
シグレさんと華嵐!
華嵐がさっき襲ってきた大きなとげとげから私も守ってくれた。
あたり一面に式神持ちにしか見えない花吹雪。
「でも、私は、ちゃんと、演劇班のマスターとして、ちゃんと結奈ちゃんのホンネを知りたいの!」
とりあえず、結奈ちゃんの所へ行きたいけど悪化した心の下が邪魔して何にも見えない。
「めいり!これ!これ使って!」
ユイの声。結衣が結奈ちゃんのいつも持っている筆箱を投げてきた。
まって、音が聞こえる。
「なんで、美鈴ちゃんはできるのに、あんたはできないの?」
「お姉ちゃんよりも結奈は全然なんにもできないわね。」
「受験なんて無理に決まってるわ。」
結奈
美鈴を見てると、なんかすっごく悔しくなる。
お母さんの言葉を思い出して悲しくなる。
なんで、ウチじゃなくて美鈴が褒められるの?なんでウチはお姉ちゃんよりも勉強ができないの?こんなに頑張ってるのに…。
それなのに、美鈴は全然努力しないで軽々と私の上を行く。
なんでよ、お母さんは美鈴のことやお姉ちゃんのコトばっかりほめる。
っていうか、家が近所だっただけで天才と比較されてさ?
わけわかんない。できないもんはできないの!
「なんで、美鈴なの!おねえちゃんなの!ウチだって、努力してる!」
メイリ
筆箱から、本条さんのお母さんの声が聞こえてきた。
「なんで、美鈴なの!おねえちゃんなの!ウチだって、努力してる!」
そっか、結奈ちゃんは…。
「結奈ちゃんはさ、認めてもらいたかったんだ、努力してること。
ホントは努力してるけど、おねえちゃんとか美鈴ちゃんと比較されるのが嫌だったんだね。これが、結奈ちゃんのホンネ、で合ってる?」
「そうだったの…ごめんなさい。結奈。」
結奈ちゃんのお母さんの声。
その瞬間、悪化したそのでっかいとげとげが、少し小さくなって…。
「ごめんね。美鈴ちゃん。ほんとは、悔しかった。でも勝てないってわかってたんだ。だから、イジメしちゃった…。」
結奈ちゃんが謝っていた。
「ちゃんと謝ってくれてありがと。とりあえず、仲直りの握手しよ。
で、そのあとどうするか考えよう?」
美鈴ちゃんはそう言って笑った。
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