いまわのきわのきわきわに

緒方えいと

第1話/奇妙な男(その①)

 佐々木ささきとうしていた。


 いささか奇妙で奇矯な人間を、その身に引きよせてしまうところが彼にはあった。


 通学のために鶯谷の改札口を出れば、見知らぬ中年男からいきなり、「大宮まで行きたいんで金をくれ」と声をかけられたり、しかもその数日後、同じ中年男から今度は大宮駅の改札口で、またも同様に金を無心されたりするのだ。


 ひとり住まいのアパートのある川口の街を歩けば、これまた見知らぬ黒人の若い男から、「ヘーイ、私、いぎりすカラ来タ、あいずりー、言イマース。コレカラ私ト六本木デ、カワイイ女ノ子、ナンパ、シマショー」と誘われたりするのだ。


 あまりの唐突さに戸惑っていると、相手は場所の選定に不満があると勘違いしたのか、「ソレジャ、大宮、行キマショー。OK?」などと言いだす始末。


 とうは〝あかり〟とも読める。

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