第30話 群れウルフとの戦い(後編)
咆哮が空気を裂き、リーダーウルフが地を蹴った。
巨体が弾丸のように突進し、セレナが吹き飛ばされる。
「くっ……!」
衝撃を受け止める間もなく、フィオラの結界が瞬時に展開。
淡い光がクッションとなり、セレナの身体を優しく受け止めた。
「ナイス、フィオラ! セレナ、これ飲んで!」
ミナがポーションを投げる。
セレナはそれを一気に飲み干し、再び剣を構えた。
「助かりました。すぐに立て直します!」
「こっちも囲まれてる! ハヤト!」
ウルフたちが俺たちを囲い込み、牙が迫る——だが、ここで引く気はない。
俺は覚悟を決め、ウルフたちへと立ち向かう。
「ミナ、グレネードで牽制を! フィオラはセレナの援護を頼む」
「分かった!」
ミナのグレネードの爆炎と砂煙が周囲を裂いた。
その爆風の中、フィオラの詠唱が重なる。
「イクサイトメント——力の加護を」
光の粒子が舞い降り、セレナへ降り注ぐ。
「無双稲妻突き——連撃!」
稲妻が地を這い、ウルフの群れをまとめて薙ぎ払った。
倒れたウルフの焦げた毛の匂いが戦場を焦がす。
だが、リーダーウルフだけは怯まなかった。
巨体で瓦礫を踏み砕き、咆哮と共に大きく跳躍した。
「跳躍力、やばっ!」
「ハヤト、避け——」
言葉より早く影が落ち、俺の視界を覆った。
だが、俺は一歩も退かなかった。
「……今こそ好機!」
左手を地面に叩きつけ、提唱を紡ぐ。
「グラビネーション!」
周囲の空気が歪み重力が一点に収束していく。
激しい轟音と共に、地面ごとリーダーウルフの巨体が叩き潰される。
リーダーウルフは抵抗の咆哮を行うが、数秒も持たなかった。
轟音が止み、静寂が訪れた。
砂煙の中、崩れた瓦礫の上にウルフの巨体が沈み、動かない。
群れの残党も怯え、森の奥へと消えていった。
「………終わったな」
息を整えながら呟くと、仲間たちが肩を並べた。
セレナは剣を地面に突き立て、安堵の笑みを浮かべた。
「すごい……これが重力魔法」
「近くで見ると、迫力が桁違いですね」
セレナとフィオラが周囲を見ながら呟いている。
「威力が凄すぎて、あーしのグレネードが完全に霞んじゃったじゃん!」
ミナがサイドポーチを叩きながら、ため息を吐く。
「ミナのグレネードが無かったら、セレナは危なかった。ホントに助かったよ」
「……ま、まぁね!」
ミナが照れ隠しに鼻を鳴らす。
辺りに夕陽が差し込み、焦げた大地に長い影を落とした。
戦場の熱気が冷め、静かな風が頬を撫でる。
こうして——俺たちの初任務は無事に幕を下ろした。
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