第11話 錬金術師
ベッドに横たわるセレナは、額に玉のような汗を浮かべ、荒く苦しげな息を漏らしていた。
顔や手の一部に黒い痣が浮かび、見るからに毒が全身を蝕んでいるのが分かる。
「セレナ様! どうかご無事で」
フィオラが両手をかざし、光の癒しを注ぎ込む。しかし症状は一向に治まらず、セレナは苦悶の表情を浮かび続けていた。
「このような毒は見たことがありません。私の力では毒の進行を抑えるのがやっとです」
フィオラの額にも汗が滲み、祈るように必死な表情で魔力を注ぎ続ける。
彼女の姿は気高くも痛々しかった。
その時、俺の視界に赤いウィンドウが二つ、鮮烈に表示された。
『仲間の詳細情報→ロール:アタッカー、場所:王宮宮殿』
『緊急任務:解毒薬を作成する為に錬金術師と接触せよ、場所:街の外れ』
街の外れーー詳細な座標まで赤字で示されている。
「……解毒薬の手がかりがあるかもしれない! 俺、行ってくる!!」
「お願いします! 私がセレナ様の命を……繋ぎますから!」
フィオラの声に背中を押され、俺は城を飛び出した。
広場を抜け、座標の示す先へと駆ける。
街の奥、寂れた一角にポツンと建つ一軒の店が見えた。
扉には『長期休業中』との札が掛かっている。
「ここで……間違いないよな?」
ノックを数度繰り返すが反応はない。
焦りと迷いが胸を締め付ける。
その時、視界に再びウィンドウが表示された。
『コマンド入力:三三七拍子でノックせよ』
「……コマンド入力って、こういう事か?」
呆れながらも、言われた通りに三三七拍子で扉を叩く。
——ガチャ。
「なんじゃ、儂に何か用かの?」
黒装束に身を包んだ小柄な老婆が静かに姿を現した。
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