第18話 赤いポシェット
ゴブリン討伐を終えてギルドに戻った僕とミオは、報酬を受け取った。
はじめての大きな仕事を無事こなせた記念に、僕はミオへご褒美をあげることにした。
――赤い、小さなポシェットだ。
手作りで縫った簡単なものだけれど、肩からかければミオにもぴったり。
中には、あめ玉と、僕が書いた迷子札を入れておいた。
「ミオ。これ、お前のだ」
「ムキュッ!? ムキュムキュッ!」
ミオは大喜びで、短い手をばたばた振りながら行進を始めた。
「ミーーー!」と興奮して声を上げ、ぴょんぴょん跳ねながらギルドの中を練り歩く。
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「おいおい、なんだあれは」
「……はは、赤いカバンぶら下げて歩いてやがる」
ギルドのおじさん冒険者たちが苦笑いしながらも、どこか和やかな目で見ていた。
ミオは短い手でポシェットを高く掲げ、
「ミーー!」と誇らしげに鳴く。
中からあめ玉を取り出し、次に迷子札をつまみ上げる。
それから「ムキュッ、ムキュッ!」と弾むように鳴きながら、たしたしとポシェットを叩いて僕を見上げてくる。
「……ふふっ。自慢したいんだな。かわいいやつ」
「ムキュッ!」
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周囲の冒険者たちも「変わったスライムだな」「でも、悪くないな」と笑みを浮かべている。
和やかな空気の中で、僕は改めて思った。
――この世界で生きていけるのは、ミオがいるからだ。
赤いポシェットを揺らしながら誇らしげに歩くミオを見て、胸がいっぱいになった。
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