第34話 奥田部長の調査

 成岩部長と富貴巡査は、集会所で朝を迎えて、宿に戻る。宿では、湯上り姿の野間係長が成岩部長と富貴巡査に質問する。

 「二人で一晩過ごすなんて、そんなに仲が良かったの。」「違います。若者たちに集会所に連れ込まれてプロポーズされていたんですよ。」

 「富貴巡査、若い男に囲まれていい思いをしたというのね。私はもてると言いたいのね。」「違いますよー、成岩部長助けてください。」

 「富貴はモテていましたが、みだらなことはありませんでした。」「結局、富貴巡査は良い思いをしたわけね。」「違いますよー」

 「昨日仕事をしたのは奥田部長だけね。」「もちろん、調査を終えています。」

富貴巡査は、奥田部長に何か嫌なものを見る。彼の隣に若い女性が座っているのだ。死霊ではない。生霊かと思ったが、間違いなく人間である。

 あの奥田部長に若い女がついている。それもきれいだ。富貴巡査は目を疑う。その時、野間係長が言う。

 「富貴巡査、受け入れがたいかもしれないけど、現実を直視しなさい。あの奥田部長がもてているのよ。」「奥田、大丈夫か。何があったのだ。」

成岩部長が真剣に心配する。まるで奥田に大変なことが起きたような反応をしている。ちなみに半田部長は若い女性に声をかけるが無視される。


 昨日、奥田部長は役場や資料館で旧磯浦トンネルのことを調べる。そこで分かったことは、難工事の末に旧磯浦トンネルは完成したが奇跡的に死者を出さずに済んでいる。

 また、トンネル近辺の災害でも死者や行方不明者はでいなかった。奥田部長は何もないのになぜ心霊スポットになったのか気になる。

 そこで、図書館に郷土史と昔の新聞を調べに行く。郷土史を探していると、若い女性が高い棚に手を伸ばして本をとった拍子にひっりかえって頭を打ち付けそうになる。

 奥田部長はサイコキネシスで若い女性を浮き上がらせる。そして、女性に近づくとサイコキネシスを解いて女性を受け止める。

 「大丈夫ですか。」「見ましたか。私、浮いていました。」

 「はい、私がサイコキネシスを使ったのです。」「すごい、もっと見せて。」

 「分かりました。私のサイコキネシスのすごさをご覧に入れましょう。」

奥田部長は図書館の棚を全て浮き上がらせる。女性は喜ぶ。

 「お礼にあなたを手伝ってあげる。」「旧磯浦トンネルを市レベルために郷土史を探しています。」

 「郷土史は読んだことあるから内容が分かるよ。」「旧磯浦トンネルが心霊スポット化した理由を知りたいのです。」

 「郷土史には書いていないわよ。」「それでは、新聞を調べますか。」

二人は司書に資料室に入れてもらって、昔の新聞を調べていく。すると時折、旧磯浦トンネルと幽霊騒ぎの記事が見つかる。最も古かったのは1975年で、急速にテレビが普及していった時代だった。

 女性が言う。

 「テレビの時代になって、急速に情報が広がるようになったのね。」「誰かが心霊騒ぎを起こして、テレビに取り上げられたのですか。」

 「推測に過ぎないのだけど。」「協力ありがとうございます。」

奥田部長は女性と別れる。温泉旅館に戻ると図書館の若い女性がいる。

 「あなたがなぜここにいるのですか。」「私、ここの娘なの。」

それから、女性は奥田部長について回ることになる。

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