第2話

[BGM:−18dBで明るく/定位やや上]


莉愛:

 こんばんは。「星空サウンドウォーク」。今日は川崎駅前から、耳で歩きます。

 ……[SFX:自動改札ピンポン→足音(速歩)こつ、こつ]

 頭上は透明アーケード。風は左から右へ。

 氷の袋が揺れて——[SFX:ザラッ、ザララッ/紙札さらっ]

 手の甲に水滴、ひと粒。


幸輝:

(小声)質問、温度の言葉、足す?


慎也:

 足さない。今は滴で十分。


莉愛:

 角の先、金属が二回、正確に。

 ……[SFX:ぎゅ→カン、カン]

 靴のかかと、戻っていく歩幅の音が直る。

 ここで——[SFX:ぷつっ(通信ノイズ)]


幸輝:

 落ちました。中継側、再起動に入った。


里帆:

 BGMを細く延命。−24dB。スタジオで歩ける準備あります。


慎也:

 歩く。擬音で。観客は耳だ。——続行。


莉愛:

 了解。石畳はここで作ります。[SFX:滑り止めゴムを軽く叩く→こつ、こつ]

 八百屋の札が風に——[SFX:さらっ、さらっ]

 氷が頬の近くで鳴る。[SFX:ザラッ(近接)]


里帆:

 定位を左45度→中央へパン。ミスト追加。[SFX:しゅうう]


莉愛:

 ……角の陰に張り紙。「迷い猫」。片耳だけ夜の色。名前「コロ」。

 鈴を——[SFX:ちりん、ちりん(キーリング)]

 返事は、ない。代わりに——[SFX:缶ころころ]


幸輝:

 バッテリー復旧60%。SIM抜き差し完了、電波四本。テスト通話送る。


里帆:

 戻りはマイク3、遅延百二十ミリ、私が手合わせ。

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