第23話 可愛いと言われるおもちちゃん

「大翔君?それにおもちちゃんまで……」

「稲見ちゃん?どうしてここに……」


おもちと稲見が見つめ合う。


「稲見知ってるの?」

「うん。私の親友のおもちちゃん」

「おもちちゃんって言うんだ。可愛い名前だね」

「あ、ありがとうございます……」

「……ところで河野。この人誰?」


大翔が不満そうに男を指さす。


「あぁこいつは海老江正樹えびえまさき。恥ずかしいけど私の幼馴染」

「恥ずかしいってなんだよ」

「だってあんた空気読みデリカシー無く絡みに行くじゃない。そのせいで人から変な目で見られてるの気づいてない?」

「気になるから仕方ないでしょ。それに変な目で見ても僕には稲見という素晴らしい幼馴染がいる。仲良い人なんて一人いれば十分だよ」

「……こいつと幼馴染なことが恥ずかしい」


稲見は呆れた顔になっている。


「おもちちゃんは名前だけじゃなくて外見も可愛いね」

「えっ……!」


それを聞いておもちがドキッとする。そんなおもちを見て大翔は正樹を睨みつける。


「そのワンピースも似合ってる。さてはモテてるでしょ?」

「モテてないです……全然……」

「本当に⁉信じられない……こんなに可愛いのに……」

「///(何とも言えない恥ずかしさを堪える声)」


大翔は前に出て、正樹に殺気を放つ。


「もういいですか?俺達帰るので」

「待ってよ。まだ僕の話は……」


反論しようとすると、後ろから稲見が髪の毛をガッと掴む。


「二人共ごめんね!こいつは私がきっちり言っておくから」

「いたたた!ち、ちょっと!」


正樹が止める隙もなく、大翔とおもちは遊園地を出た。


「なんで止めるの?」

「あのね。なんであの二人を見ても気づかないの⁉」

「……?何のこと?」


正樹のキョトンとした顔に稲見の怒りが頂点に達した。


「大翔君は!!!おもちちゃんと!!!デートしてたの!!!」

「……デート?」

「だから邪魔したらダメでしょ!」

「二人付き合ってるの?」

「多分まだ付き合ってないけど……でも両片思いよ」

「ふ~ん……」


正樹はじっと退場口を見つめる。そこに大翔とおもちの姿はない。


(好きなら告白したらいいのに……なんでしないのかな?)



「はぁ~~~」


家に帰った大翔は大きくため息を吐いた。


「どうなさいましたか?お坊ちゃま」

「……何でもない」

「そうですか……お坊ちゃまには他にもいい人が現れますよ」

「……フラれてねぇよ」


博俊が用意したカツサンドを口に入れる。


(……ったくなんなんだよあの男。河野の幼馴染か何か知らないけど……折角の雰囲気があいつのせいで台無しになったじゃねぇか!)


帰り道も結局いつもみたいな感じで別れちゃったし……あの時に告白したら……でも告白はかっこつけたい時にしたいし……

難しい顔をしている大翔を見て、博俊はクスッと笑う。


「なんだよ?」

「いえ……昴様に似ていらっしゃるなと」

「最悪……あんなクソ親父と似てるって言われるなんて……」

「昴様も明美様と交際する前……障害があれば私に文句を言っていましたから」

「……」


大翔がカツサンドを食べ終わると博俊に聞く。


「ねぇ……聞きたいことがあるんだけど……」

「何でしょう?」

「どうしてクソ親父あいつは母さんを捨てたの?」

「……」


博俊の動きが止まる。


「……知ってるんだね」

「……その質問にはお答えできかねます」


大翔が完食したカツサンドの皿を持ち、去ろうとする。


「じゃあ母さんはどこにいるの?今何してるの?どうして俺と杏に会いに来てくれないの?」

「……」


大翔を無言でじっと見つめた後、食事部屋ダイニングルームを去った。


(なんで……なんで教えてくれないんだよ……)


大翔の拳が震えていた。



夕食を食べ終わったおもちはシャワーを浴びて入浴していた。


(今日は楽しかったな……)


肩まで水をつけながら、今日の出来事を思い出す。


(大翔君……あの時なんて言おうとしてたんだろう……もしかして……私に告白……?)


そう思うと顔が赤くなる。


(ううん……ありえない……大翔君みたいな御曹司が私みたいな人を好きになるはずがない……)


でも……そう思っていても……心は求めてしまう……

自分を好きでいてほしいと……

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