第24話


 俺とララは東へと進むことにした。

 ちなみに今回の同行には、新たな同行者がついてきている。


「わふっ」


「よしよしベルトちゃん、良い子ですね」


 一月前にテイムした、あの大きなプラチナウルフなる狼だ。

 今俺達はこいつの上に乗りながら、東への道を進んでいた。


 ちなみに名前はベルト。つけたのはララだから、なんでこの名前なのかは知らない。

 性別は雄だ。


ベルト 忠誠度 79


 忠誠度も更に上がっている。テイムした魔物にも忠誠度があるのは少し不思議な感じだ。


 ベルトはかなりの巨体のため、俺とララを乗せても問題なく移動することができる。


 そして狼の足というのはなかなかに俊敏で、俺達は自分達で歩くよりはるかに早いスピードで進み続けることができていた。


「そろそろついてもおかしくないな……よし、ここから先は下りて進んでいくか」


 『スペル・シンフォニア』のマップ端あたりまでやってきたので、以後は慎重を期してペースを落として進んでいくことにした。


 道中でベルトのレベル上げもしており、今のこいつのレベルは41だ。俊敏だけならばあのゴールデンウルフに匹敵するほどのものがあり、ここにサンダーアクセルをかけてやればその速度は上回るほどになる。


 そしてベルトは狼なので、とにかく鼻と耳が利く。

 索敵能力は俺達より高いため、隊列はベルト・俺・ララの順だ。


 ゴールデンウルフの戦闘でレベルを上げられたこともあり、俺とナナのレベルは45と43。

 ゴールデンウルフがやってきた東側に進むにしても、最低限のレベリングは済んでいるはずだ。


(さて、どんな魔物が出てくるか……)


 辺りを探りながら進んでいくことしばし。

 ベルトがすんすんと鼻を動かし始めた。


「ガルル……」


 どうやら敵を見つけたらしい。

 少し大回りになりながら後をついていくと、そこには一匹の魔物の姿があった。


 棍棒を持ちながら森の中をふらふらと徘徊する、赤色の肌をした巨人だ。


 頭部は禿げ上がっており、触手のようなものが頭の端からうにょうにょと出ている様子はエイリアンか何かのようにも見える。


(トロルか……なるほど、たしかにダート大森林より高難易度なのは間違いないらしいな)


 鬼型魔物、トロル。

 分類的にはゴブリンやオーガなどと同じとされるが、前述の魔物達とはタフネスが段違いな魔物だ。


 体力自動回復(中)のスキルを持つトロルは、ターンが終わるごとにある程度自分の体力を回復してしまうため、とにかく倒すまでに時間がかかる。


 無駄に攻撃力が高いため回復魔法や回復アイテムを無駄に消費させられ、そのせいで多くのプレイヤーから嫌われていた。


「ベルト、とりあえず一当てするぞ。ララは少し距離を取って援護に徹してくれ」


「了解です」


「わふっ」


 サンダーアクセルを使い全員にバフをかけてから、ベルトと共に前に出る。


「ガルルルッ!!」


「GURYAAA!?」


 先に敵の下に辿り着いたのはベルトだった。

 ベルトの噛みつき攻撃がトロルの喉元へと突き立つ。

 トロルはそのまま手に持った棍棒を振り回して見せた。


 ベルトが距離を取ったタイミングで、発動準備を終えていた魔法を起動させる。


「ライトニングボルト」


 中級雷魔法、ライトニングボルト。

 チェインライトニングと同様ライトニングの上位版に当たり、こちらは対単体用の魔法になる。


 雷を食らい怯んだ隙にベルトが爪による一撃で足下を削る。

 その鋭いつま先が足の肉をえぐって見せたが、叫び声を上げるだけでトロルに倒れる様子はない。


「GYAAGYAA」


 シュウシュウと全身から煙が発し始める。

 見れば先ほどベルトが噛みついてできた穴が、煙を上げながら塞がり始めていた。


 なるほど、この世界の体力自動回復はこうやって傷を塞いでくれるのか。

 こちらでも持久戦になるのは間違いなさそうだな。


「ベルト、とにかく休まずに削っていくぞ」


「ガルッ!」


 ベルトが近づけば魔法の準備をし、離れたタイミングで発動。

 ベルトを追いかけようとトロルが動けばその背後を取る形で斬りつけ、俺達に意識が集中したタイミングでララが援護を飛ばしてくれる。


 たしかに体力は多く、その攻撃力は当たったらと思うとひやりとするほどに高いが、さほど知能が高くないおかげで攻撃自体が単調なので、避けることはそれほど難しくはない。


 数分ほどの戦闘で、問題なく倒してしまうことができた。


「ふうぅ……少し休憩してから、先に進むか」


「わふ」


 全力で動き続けていたので少々息切れ気味だが、被弾はせずに戦えた。

 可能であれば近接戦闘だけでなんとかして、魔力を節約しながら先へ進んでいきたいところだ。


 俺は魔力量自体の多さと持っているスキルのおかげで滅多なことで魔力切れになることはないが……それでも上級魔法を何度も連発すればその限りではないだろうから名。


 ベルトにトロルだけを狙ってくれるよう頼むと、彼は望み通りトロルとだけ接敵するように上手く森の中を進んでくれた。


 どうやらトロルの経験値はなかなか高いらしく、その後も何度か戦って感触を確かめているうちにレベルがすぐに上がってくれる。

 最終的にはベルトが44、俺が46、ララが45になった。


 トロルを魔法を使わずに倒せるようになったタイミングで、その後は調査探索に切り替える。


 他の魔物も確認していくといました、ゴールデンウルフが。

 ただどうやらゴールデンウルフはこの界隈ではさほど強力な魔物ということもないらしく、個人的な討伐難易度としてはトロルと同程度といったところに思う。両者が戦っている場面も何度か見たし。


 ただ経験値的には、ゴールデンウルフの方が美味しかった。


 というものこいつは遠吠えで仲間を呼ぶ。

 遠吠えをさせてシルバーウルフを連れてきてもらい、それを魔法で一網打尽にして最後にゴールデンウルフを倒す。

 これがめちゃくちゃにタイパがよく、数日もするとガンガンレベルが上がっていった。


 そして最終的には俺とララのレベルが54、そしてベルトのレベルが53になった。


 ちなみに一応同族だが、ベルトは何も気にせずに積極的に戦闘に参加していた。

 野生の強さを感じる一幕だ。


 森の中でのキャンプをするのにもずいぶん慣れている。

 寝泊まりができそうなスペースを確保したら、ララに障壁を張ってもらいそのまま就寝。

 数発程度の攻撃になら耐えられるので何かあれば起きて即座に戦闘に移ればいい。森暮らしも長いからな、それができるくらいには俺も野生に適応してしまっている。


 そんな生活をしながら、魔物を殲滅する勢いで東に進み続けること数日ほど。


 既にここらの魔物でレベルが上がらなくなるほどに強くなった俺達は、ようやくゴールデンウルフ達をダート大森林へと追っていた者の正体を知る。

 そこにいたのは……。


「ん……そちら、何者だ?」


 赤く燃えるような髪をした、美しい女性だった――。

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