第11話 冒険者へ

 食べ終わった後は食器を片付けて、机の上にランク二のフレイムと書かれているマジックスクロールを開く。中にはシンプルな魔法陣や見たことのない文字が書かれていた。


「この魔法陣に魔力を通せばいいんだよね」


 私は魔法陣に手を置いて魔力を流す。すると頭に魔法陣が刻まれた感触がした。しばらく目がチカチカして、瞬きをする度に魔法陣が浮かんで見える。


「これが魂に刻まれるということか」


 なるほど。理解した。軽く頭を振って人差し指を立てた。その数センチ上に魔力を集めて火を灯すイメージをすると魔力が変化して火に変わった。時間的には五分ぐらい掛かった。


「成功だけど時間がかかったな。生活魔法だからいいけど……そうか。魂に刻んだ後に使用を繰り返して習熟度を上げないと行けないのか。その習熟度を早める為に魔物退治をするんだね」


 使用してみて理解が深まった気がした。


 もう一枚のランクが四のアロー系と呼ばれる攻撃魔法も同様に開いた。マジックスクロールに書かれている図形や文字が複雑化し量も増えている。それら全ての文字や図形に魔力を通していくと綺麗に染め上がり、そして先程同様に魔法が魂に刻まれた。


 だが、さすがに攻撃魔法を室内で試すわけにもいかない。それに師匠が冒険者ギルドで待っているだろうから、そろそろ行ったほうがいいだろう。


 私は食堂から出て冒険者ギルドのある建物を目指した。


 冒険者ギルドに到着した私は師匠の元へ駆け寄る。


「遅くなりました」

「うむ。では登録しようか」

「はい」


 受付カウンターで冒険者登録をする。記入するのは名前と年齢だけ。用紙を渡して、しばらく待っていると職員が一枚のカードを差し出した。


「十歳の未成年ですので受けられる仕事は基本的には街の中になります。もし街の外か又はダンジョンに入るのなら大人と一緒に活動することが条件となります」


 師匠が頷き、私を指していった。


「では、彼女に指名依頼を出す。仕事は荷物持ちじゃ」


 受付の職員が頷き「手続きをします」と言って書類の作成を始めた。


 手続きが終わったら今度は街の外を目指す。途中で雑貨屋に寄って道具を買う。師匠が手にとってのは、枯れて乾燥した木の枝とクリーム状の塗り薬だ。


「何ですか、これ?」

「どちらも虫除けじゃ。二種類あって木の枝の方は火に焚べて辺り一帯を煙で燻して成分を撒くタイプじゃ、クリームの方は肌に直接塗るタイプじゃな。どちらにも一長一短がある。火に焚べるタイプは周囲を結界で仕切ってから使用するんじゃが……結界は分かるか?」


 日本の創作物に出て来た事もあるから想像はできるが、認識が間違っている可能性もあるので首を横に振っておく。


「いえ」

「結界とは空間を霊的に仕切るものだな。空間は分かるか?」

「はい」

「そうか。よろしい。この結界は結界石と呼ばれる石で作り出す」


 そう言って、雑貨屋の一角に案内された。拳大の黒い正方形の石が並んでいる。


「これが結界石じゃ。陽の光にかざしてみろ。表面と中に魔法陣が見えるじゃろ? これは表面に闇の魔法陣が。中には光の魔法陣が描かれておる。この二つをかけ合わせて特殊な空間を作り出すのじゃ。中に書く光の魔法陣の種類で色々効果が変わる。例えばオークの多い地域ならオークの魂を除ける光の魔法陣を描く。するとオークが寄って来づらくなる」

「来づらくなるだけ?」

「そうじゃ。なのでオークが強い興味を示すような何かがあれば結界を突破して寄ってくるな」


 なるほど。


「持ち歩いても効果は発揮するんですか?」

「いや。残念ながら。これは場所を固定してしか使えん。例えば家だけとか。村だけとかな」

「人を除けることも?」

「当然出来る。人を近づけたくない場合に使うな」


 ほぇえ。色々とあるんだねぇ。


「さて。虫除けと結界についてはこのぐらいかの。次に傷薬や毒薬。解毒薬についての説明じゃな」


 師匠は、実地で商品を手にとって見せながら、これは何。これなどういう時に使うもの。ということを教えてくれた。


「一度で覚えろとは言わん。まぁ困ったら店員に聞けばいいことだしな。でも覚えておいて損はないぞ」

「はい!」

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