第2話 どう言うこと……!?

 銀行への入行も決まり卒業式が間近に迫ったある日、僕は憧れの同級生の女の子の下宿に招待された。


 彼女は何かと僕に頼ってきて、ノートを貸してあげたり卒論の資料も探してあげたりした。くりくりした目のかわいい人で僕の好みだった。


 下宿に着くと少し待つよう言われ、僕はドアの前にいた。しばらくして一人の男が出て来た。「ども。どうぞお入り下さい」と言って彼は何処かへ出かけて行った。


 兄が田舎から出て来て、しばらく泊まっているのだと彼女は言った。申し訳ない、僕のために気をつかわせてしまった。


 その晩、僕は彼女と夢の様な、めくるめく経験をした。まるで天国にいるかと思った……。


 明け方、気がつくと彼女は正座して僕のかたわらにいた。そして神妙な顔をしてこう言った。


 「実は私、卒業したら結婚するの。出て行ったのは兄じゃなくて婚約者なの。嘘ついてゴメン!」


 は、どう言うこと……!?


 そのあと彼女が何か言ってたが、もう僕の耳には聞こえなかった。とりあえず身支度をして彼女の部屋を飛び出した。


 頭がクラクラして足元もおぼつかなかった。何で彼女は僕を誘ったんだ?今までのお礼のつもりか?僕はその気になって、これから彼女との将来とか考えてたのに、何てアホなんだ!


 彼女もそうだが婚約者の男もどうかしている。自分の女を他の奴に何で差し出すんだ?結婚してあのふたりは上手くいくのか?


 僕は卒業式に出席する気にもなれず、しばらく寝込んでしまった。



 あれから二十年が過ぎたが、僕は独身のままだ。どうやら女性不信というより人間不信になってしまったようだ。


 彼女は今どこでどうしているのか、そんなこと僕の知るところではない。


 


 

 


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