黄色鎌を持った死神

五布団 睡

プロローグ 大学の噂について

この大学には、ひとつの奇妙な噂がある。

 ──夜の校舎に「黄色の鎌を持った死神」が出没する。

 見た者は数日以内に事故や病で命を落とす。

そんな荒唐無稽な話を、講義の合間に学生たち

が面白半分で囁き合う。

 しかし、誰もその真偽を確かめようとはしなかった。

 新聞部の篠原 しのはら つかさは、そんな噂を耳にした瞬間、胸の奥がざわついた。


「死神、ね……。怪談特集にはちょうどいい」


 編集会議でそう口にすると、周囲は半ば冗談、半ば好奇心で盛り上がった。


「夜の校舎に忍び込んでみようぜ」


「篠原、どうせお前がやるんだろ?」


 笑い混じりの声に押される形で、篠原は調査を引き受けた。

 真夜中、懐中電灯片手に校舎へ足を踏み入れたとき、静まり返った廊下には自分の靴音だけが響いていた。

 風のない夜だったのに、不意にカーテンが揺れた。

 篠原が息を呑んだ次の瞬間──暗闇の先で、黄色に輝く弧を描くものがふっと浮かび上がった。

 それはまるで、死神が鎌を振り上げているかのように見えた。

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