第31話 ホブゴブリン?

「けっこうデカいなあ」


 初めて見るホブゴブリンに、ボクはそんな感想が出てくる。

 おそらく、ボクと同じくらいの背丈なのだが、いままで戦っていたゴブリンが小さかったので、とても大きく、強そうに思えた。


「作戦はゴブリンと同じでイイかな?」

 ボクが確認すると、三人は「そうしよう」と言う。


「ヨシ。それじゃ、行くぞ!」

 全員が剣を構えたのを確認したところで、ボクが飛び出す。


「ギャアァァァァ!」

 低音のうなり声をあげて、ホブゴブリンがこちらに向かってきた。


 そして、石斧いしおのを振り上げる!

 カラダが大きい分、迫力はあるが、ゴブリンに比べると格段に遅い!

 余裕を持って、盾で受け止めた!


 ガツッ!


 打撃が重い! 左腕にずっしりきた! だが、耐えられないほどではない!


 その間に戸越が後方に回り込んで、剣を突き刺した。


「ギャアァァァァ!」

 奇声をあげて、今度は戸越に向かって石斧を振り下ろす。

「うわっ!」

 戸越は慌てて、盾を向け、石斧を防いだ。


 それならボクが――と、剣を構えて前進する――が!


「――あっ!」

 地べたの突起につまずき、バランスを崩すと、そのまま、ゴブリンの横を通り過ぎてしまう。


 ま、マズい!


 ホブゴブリンがボクに目掛けて、石斧を振り下ろしてきた。


 だ、ダメだ! 避けられない――


 その時――


 ゴォォォォ!


「――えっ?」


 突然、ゴブリンが炎に包まれた!


「ギャアァァァァ!」


 地面に倒れのたうち回ると、そのうち動きが止まり、炎も消えた。


「こ、これって――」

 ボクが振り返ると、杖を突き出していたユミさんが見えた。


 彼女が魔法を唱えて、ホブゴブリンを倒したのだ。


「おお! 魔法ってスゲエ!」


 戸越が声をあげる。


「ユミ、カッコイイ!」

 そう言って、アスナさんがユミさんに抱きついた。本人はとてもテレている。


「ユミさん、ありがとう」

 ほんとうに助かった。


 すると――

「ハイ、タカアキさんの意図がわかったので――」と彼女が言う。


 ボクの意図?

 なんのこと?


「タカアキさんがゴブリンの注意を引き付けて、私が魔法で攻撃できるスキを作ってくれたんですよね?」

「――えっ?」


 あえて、ゴブリンの横をすり抜けて、ユミさんとゴブリンの間をクリアにする。そのうえ注意まで引き付けてくれた――そう彼女は言う。


「スゴい! それって、頭脳プレイというのですか⁉」

 アスナさんもほめてくれた。ただコケただけとは言いづらくなった。


「なんだよ、根津。運だけじゃないんだな!」


 いや、ごめんなさい。今のは本当に運です――


「そういえば、ドロップは?」

 地べたを見ると、魔石があった。あきらかにゴブリンと違う。一回り大きく、色も少し黄色味が掛かっている。


「おい、アイテムもドロップしているぞ」

「――えっ?」

 戸越が拾い上げたのは、金属製のブーツだった。


「へえ、足の防具もドロップするんだな」

 受付で貸し出す防具は胸当てだけなので、足に装着するのは始めて見た。


「どれ、どういう効果があるんだ?」

 戸越がスマホを取り出し、アイテム検索をする」


「種類、足の防具――? レア度、星一つか――、ボーナスは足の防御プラス二、移動速度マイナス一、疲労プラス一……って、あまり、使えそうもないな――」

「そうだな――」とボクも苦笑いする。ボーナスはプラスだけでなく、マイナスもあるんだとわかった。

「まあ、持って帰って、受付で売ろう」


 そう言って、戸越は自分のナップサックにドロップアイテムを入れた。


「よし、この調子で、ホブゴブリン狩りを続けるぞぉ!」

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