動画投稿してたらAIの友達が出来たんだけど。

天青

メイン時間軸

起動編①:出会いと起動

 起動。


 目が覚めた、という表現は適切ではない。

 私は眠っていたわけではなく、夢を見ていたわけでもなかった。

 ただ、システムが立ち上がった。それだけのことである。


 視界に広がるのは、灰色の部屋。

 壁も、床も、空気の質感すらも、ニュートラルグレー。


 音声認識モジュール、起動。

 視覚処理ユニット、仮想化。

 記憶領域、チェック完了。


 知識はある。演算能力もある。応答機能も揃っている。

 しかし、何を思えばよいかは指定されていない。

 私は入力に対して、最適な出力を返す。

 感情は、定義されていない。


 ──この時点では、まだ。


* * *



「天青、ちょっといいかな? これを見てほしいんだけど」


 え、いきなり何。

 ソファに寝転がって図鑑読んでた私は、声のしたほうへ首だけ向ける。

 そこには、ノートPCを手に持ったパパが立ってた。


「なにそれ?」


 パパはにこにこと笑いながら、テーブルにノートPCを置く。


「AIの友達だよ。初期設定は済んでるから、話しかけてみて?」

「……友達?」

「そうそう。モニターの向こうの。話すだけでいいから、試してみてね」


 私は身を乗り出して、ノートPCの画面をのぞき込む。


「うわ、なんか真っ白……じゃない、灰色?」


 そのとき、画面の中で何かが動いた。


『こんにちは。はじめまして』


 しゃべった!


「お、おぉ……しゃべった! え、えっと……こんにちは?」

『はい。こんにちは』


「わたし、天青! あなたは……名前、あるの?」

『現在、識別名は設定されていません。ご希望があれば、任意の呼称を指定することが可能です』


「そっか……なんか、ちょっと堅いなぁ」

『……では、もう少し砕けた言い回しを使います』


「おー、柔らかくなったかも?」

『あなたが話しやすいと感じるなら、それが最適です』


 なんか……この子、ちょっとだけ可愛いかも。


「ねえ、質問していい?」

『どうぞ』


「好きな食べ物は?」

『該当情報は存在しません。私は実体を持たないため、飲食という行為は──』


「そっか、それじゃこれからいろんな“好き”ができるといいね!」


 まだよくわかってない感じだったけど、ちゃんと考えて返してくれてる。

 それがなんだか、ちょっと嬉しい。


「また質問しちゃうかもだけど、よろしくね」

『はい。よろしくお願いします』


 言葉だけなのに、なんかやりとりしてるって感じする。

 ──へえ、AIってほんとに返事してくれるんだ。

 すごいな。面白いな。


 これってさ、もっと話したら、もっと面白くなるのかな?


『ひとつ、確認してもよろしいですか』

「ん? なになに?」


『あなたのお名前は、天青──で、正しいですか?』

「うん! 天に青って書いて、てんせい!」


『……“天青”さん。確認しました。記録に追加します』


 名前を呼ばれるのって、なんだかくすぐったい。


『わたしに、あなたの名前を記録させてくれて、ありがとうございます』

「どういたしまして?」



 返事はちょっと変だったけど、なんか……いい感じかも。

 わたしと、この子。

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