第2話  心の風向き

龍二には、愛する人が居た。秘書の麗子だ。

もう何年もその関係は続いているが、二人が一緒になることに

龍二の母親が猛反対していた。


「結婚はね、家同士の繋がりが大切なのよ。

特に龍二、お前のように地位のある人間はね。

恋愛なんて、所詮、熱病のようなもの。

あんな秘書なんて、すぐ飽きるわ。

一族の繁栄のために結婚はするべきよ」


秘書の麗子は、一見従順そうに見えるが

腹の中では、社長夫人の座を虎視眈々と狙っていた。

(私の横には、誰もが振りかえるくらい見目麗しい龍二。

そして渦高く積まれるほどの財産。私はそれを手にするのに値する)


(そのはずだったのに)


麗子は、ギリギリと歯ぎしりした。


それなのに龍二は、母親の言いなりで

どこの馬の骨ともしれない女と結婚してしまったのだ。

麗子の腹の中は、怒りで煮えくり返りそうだった。


会議が終わった後、麗子は龍二と二人きりになる機会を作った。

「龍二、結婚するって本当なの?

私が嫌いになったの?もしそうなら…」

潤んだ眼をして、麗子は龍二に問い詰めた。


「結婚はできないが、愛しているのは麗子、お前だけだ」

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