【結婚相手は魔女に選ばせる、お気楽王様なんかと結婚しない!】第2回ルビーファンタジーBL小説大賞応募作

手塚エマ

第一章 未来世療法

第1話 未来世療法

 俺の友達は心理療法家だ。

 しかも未来の自分に会いに行き、現世での問題解決のヒントをもらうという未来世療法家。


「未来の自分がどうなってるのかがわかるのか?」


 俺は疑心暗鬼に問いかける。俺の会社帰りに合わせて飲みに来たけいは事もなげに言い放つ。


「催眠状態にしてから未来に誘導すれば、未来の自分に出会えるし、今抱えている問題がどうなっているのかとか、未来の自分から問題へのヒントや解決策も教えてもらえる」

「マジか」

貴弘たかひろは今の弁護士事務所を退職して独立するかしないかで悩んでるんだろう? だったら未来を見に行かないか?」

「えっ?」

「俺もまだ駆け出しだし、練習がてら受けてくれるクライアントが欲しいんだ」

「なんかそれ、すごく怖いんですけど」


 未来の自分がどうなっているのかなど知ってしまっていいのかもわからない。もし現状より悲惨な未来だったとしたら立ち直れない。


「大丈夫。催眠状態の領域では否定的な未来は自動的に弾かれる。前向きになれるような未来にしか行かないよ」


 ビールジョッキを手にした佳が前のめりになる。目の前には端正な男前。力説されて気圧される。


「危険じゃないんだな」


 正直、退職すべきかどうかを誰かに答えて欲しかった。それなら未来の自分に聞くのが一番なのではないかと思ってしまう。


「いいよ。わかった」

「本当に?」

「ああ。未来の自分がどうなっているのかが分かれば、どの道を選択すればいいのかもわかるしな」

「そうなんだ。そのための未来世療法なんだ」


 佳はビールをぐびりとやってから、カツオのたたきに箸をつける。さっそく日にちと時間をすれ合わせる。佳のマンションの一室がセッション室になっている。俺は今週の土曜日に訪ねる約束をした。



   

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