第23話 ソーサラー、姿を現す

「デフェンシオ・ムルス・マグヌス!」

 ユーリが杖を振りながら叫んだ。


 巨大な光の壁が現れ、室内に飛んできた割れたガラスは止まって床にバラバラと落ち、同時に白い煙が上がった。突然の魔法攻撃をユーリが止めたんだ。


 煙が晴れると、窓のこちら側に内田くんが立っていた。まさか……。

「お前……」

 ユーリが言葉を失ってる。内田くんは全身黒ずくめで、手に……杖を持ってる!


「待てって言われてたけど、もう我慢の限界だ。お前らみんな地獄じほくへ落としてやる!」

「やめろ、内田! いじめはオレがなんとかするから!」

 ユーリが叫んだ。あれ? ということは……。


「うるさい。余計なことしやがって。どうせボクのこと、ずっとバカにしてたんだろ! チビのくせに!」

「ああ、やっぱりオレのヴェラ・フォルマが見えてたんだな。でもお前、ソーサラーじゃないよな?」

 そういうことだよね。ユーリ、すごく冷静だ。チビって言われてるのに。


「イグニス・インフェルニ!」

 内田くんがそう叫ぶと、うずを巻いた巨大な炎が現れた。


「アクア・インフィニートゥム!」

 ユーリが杖を振ると水が吹き出し、一瞬で炎をかき消した。


「く、くそー」

 いじめっ子三人はずぶぬれになってすみにへたり込んでふるえ上がっている。


「内田。ソーサラーはどこだ?」

「ここにいるだろ!」

「そう言えって言われてるのか?」


「ラディウス・アトリ・テネブリス!」

 内田くんが叫ぶと、今度は大きな黒い剣が現れてユーリに襲いかかった。


「スクートゥム!」

 たてが現れ、剣を止めた。


「く、くそー!」

 内田くんは肩で息をしている。


「もうやめろよ、内田。お前、だまされてるんだよ」


「だましてはいないぞ。かわいそうなこの子にちょっと力を授けただけだ」


 突然、野太い声が聞こえた。技術室の天井に魔法陣が現れ、中から黒ずくめの服をまとい、不気味な銀色の仮面をかぶった男が下りてきて内田くんの横に立った。


「プルガトリウム・フェッリ」

 男がそう言うと技術室の扉が閉まった。あわてて手をかけたが開かない。

 結界‼ 

 陰陽術だとけっこう難しい技だけど、魔法にもこういうのがあるんだ。中の様子は扉の窓から見えるけど。


「五芒星の娘はこれで入れないだろう。ちっちゃいマグス・プエルくん、どうする?」

 私がいるの、やっぱりバレてた‼


「ちっちゃいとかちっちゃなとかチビとか言いたい放題だな、くそー!」

 チビって言ったのは内田くんだけどね。


「でも桜庭がいない方が好都合さ。存分にたたかえるからな」

「先日の私の攻撃を止めたのは、そこの娘の五芒星ともう一人のマグス・プエルだろ? 小さなお前に何ができる?」

「あ、今度は小さなって言いやがったな! とにかくオレは天才なの! お前ごときにやられるわけないだろ!」

「そう強がるな。マグス・プエルの分際で」

「だからオレはさ、ウィザード級に強いんだって!」

「それならばやはり、私と一緒に来ればよい。永遠が手に入るぞ」

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