A#6「接触」

 屋根裏は、ボクが想像した世界とはまったく違ってた。

 いろんな物であふれた狭い部屋には、絨毯が敷かれ、大きな加湿器が二台、子供用の布団と冷蔵庫、それから壁一面にジグソーパズルが立てかけられてた。


 まるで、人間扱いだ。

 お供え物の量が、ご先祖さまを拝むレベルをこえてるんだ。

 ふたりがボクをここに近づけない理由もわかる気がして、呆れちゃったよ。


 座敷わらしの姿は、どこにも見当たらなかった。

『やっぱり、ウチから去ったのかなぁ』と思って、ボクは、向かいにあった窓から外へ顔を出した。

 これがびっくり。そこからの眺めが最高に気持ちよかったんだ。

 空にぐんと近づいたみたいで、畑に沿ってつらなるとんがり山とか、普段とは違って見えた。


 ボクの部屋とは大違いだ。高い木が邪魔して、外の景色なんてちっとも見えなかったから。

 でも、屋根裏の窓からは、隣の庭まで見下ろせた。

 七色の花がきれいに咲いてて、隣のおばさん、こわいのに、意外だったな。

 

「こわい?」


 そう、こわいんだよ、隣のおばさん。

 たまに道ですれ違うと、挨拶もなしにボクの顔をじろじろ見るんだ。いやな感じ。


 陽一は思わず失笑し、からかうように言った。

「キミは、相当好かれてるんだな」

 

 冗談やめてよ。

 めちゃくちゃ睨まれるんだぞ。


「ほんとに? それじゃあ、のんきに眺めてられなかっただろう」


 その時は、ボクのおなかが鳴ったからね。

 ポケットから鍵を出して、お母さんに怒られる前に早く戻ろうとしたボクの足もとで、何かがうなった。

『ウゥ……』って声がした。

 ネコのしっぽを踏んじゃったのかと思って、ボクは慌てて足をどかした。

 そこには、茶色の大きな毛布が丸まって盛り上がってたんだけど、もぞもぞと動く気配がして、うさぎ小屋のようにぷんと何かが臭った。


『ネコだ!』

 ボクは調子に乗って毛布を取り上げた。

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