第8話 高校初日、義妹たちとの朝
——翌週の月曜日。
先週、金曜日から義妹三姉妹との生活が始まり、その後の土日は隣からギターの騒音被害を受けながらも、耳をヘッドホンで塞ぎながらゲームをして過ごした俺。
そしてついに……1年ぶりに憂鬱な月曜日を迎える。
「青斗くーん」
「……あ、え?」
俺がベッドで目を覚ますと、お玉を片手に俺の腹部へ跨る胸のでかい女子が……あ?
このミルクティのような茶色のストレート髪は……んんんん!??
「うぉおおおっ! なんだよ紅葉!!」
俺はスルっと抜け出して、咄嗟に起き上がる。
「モーニングコールだよ? 兄妹なら当たり前だよね?」
「するとしてもこんな跨りながらしないだろ! 普通!」
「本当はこのお胸でホットアイマスクをして起こしてあげようと思ったけど、青斗くんには刺激が強すぎるからやめちゃった♡」
その大きな胸をわざとらしく寄せながら、舌をあざとくぺろっと出す紅葉。
デカパイアイマスク、だと……。
俺は生唾を飲み込む。
「って、今はそうじゃない!」
「もぉ、朝から元気だね青斗くん」
「お前が言うな!」
今日から高校だってのに……朝からなんだこの疲労感は。
「制服はわたしがちゃんと綺麗にしておいたからね? お姉ちゃんとして」
「お前は妹だ。でも、ありがとう」
「誰よりも早く起きて朝ごはんの準備もしておいたからね? お姉ちゃんだから」
「妹だ。でも、ありがとな」
「あっ、それと青斗くんパンツとインナーシャツは洗っておいたからね? お姉ちゃんがしっかりと♡」
「お前は妹……って、おい! 洗濯物は各々でやるってことにしたじゃないか!」
「そんなのあってないようなルールだよ? ちゃんとわたしが洗ってあげる。別に気にしないよ? だってわたしお姉ちゃんだもん」
紅葉は異常なまでに、姉でありたい欲を出してくる。
三姉妹の中では長女なんだからそこで満たされているはずなのに……なんで歳上の俺にまで。
「とにかく、俺もすぐに着替えるから。紅葉は部屋から出てもらえるか?」
「うん、じゃあお姉ちゃんが着替えを手伝」
「大丈夫だから!」
☆☆
過保護すぎる紅葉の
既にそこには朝食を摂る杏子と結珠奈の姿があり、俺は結珠奈の隣の席へ。
「お兄さんおはようございます」
「お、おはよう杏子」
「兄さん、おはよ」
「おはよう……っていうか、同じ部屋の結珠奈がそのまま俺を起こしてくれたら、朝から紅葉とあんなことにならなかったのに」
「なに? あたしに文句あんの?」
ギターの騒音被害といい、同じ部屋になってから文句は山ほどあるのだが……。
しかし、高校の制服を身に纏った二人はちょっと雰囲気が違うな。
この二人の金髪とピンク髪は校則違反とかにならないのだろうか。
「ま? でも兄さんの寝顔……可愛かったよ」
「なんでわざわざ俺の寝顔を見に来たのに、起こしてくれなかったんだよ」
「お兄さん、ツッコむところはそこじゃないような……」
「なに杏子?」
「なっ……なんでも、ないよ!」
結珠奈に睨まれた杏子は、小動物みたいに小さくなりながらトーストをかじる……可愛い。
ん? でもよく見たら杏子の朝食だけ、トーストだけじゃなくて大盛りのご飯とクロワッサンまである。
なんだこの、ホテルの朝食ビュッフェみたいな絶妙な炭水化物のチョイスは。
「杏子って、意外と食べる方なんだな?」
「はい……いっぱい食べないと、二人みたいに身体が大きくならないと思って……昔から朝ごはんはたくさん食べるようにしてます」
へえ、そうなのか。
土日はいつもみんな朝の時間がバラバラだったので、気が付かなかったな。
しかし……杏子の部屋で会話した時もそうだったが、やけに杏子は自分だけ背や身体つきが小さいことを気にしているようだ。
杏子にはもうこの二人よりもデカいところがあるんだが……。
俺はつい杏子のそのデカすぎる胸元へ目が行ったが、すぐ視線を逸らす。
だ、ダメだ。俺は兄なんだぞ!
「はーい、青斗くんもご飯だよー」
ドサッと、俺の目の前に目玉焼きと味噌汁と……あと大盛りの白米が出される。
「ありがと……って、なんだこの米の量……」
俺は高校野球の強豪校にでも入ったのか?
「青斗くんはわたしよりお兄さんなんだよね? お兄さんならこれくらい食べないとダメだよっ♡」
紅葉はいつもの口調で言っているが、目が笑ってない。
まさか紅葉のやつ、朝の時に追い出したことを根に持っているのか?
まさか妹って言われてキレる妹が、この世界に存在するとは……。
「あ、あの、紅葉?」
「お姉ちゃんに減らして欲しいのかな? お願いしないとこのしゃもじは渡さないよ?」
「くっ……! お、お姉ちゃん、減らして。ください」
「はーい♡ よくできました♡」
もうあまり時間がないので、俺はこうするしかなかった。
断じて、紅葉の目がめちゃくちゃ怖くて従うしかなかったわけじゃない。
「うわ、兄さんキモっ」
「お、お兄さん……」
穴があったら入りたい……。
高校行く前から引きこもりたくなる俺だった。
☆☆
朝の支度を済ませると、俺は義妹三姉妹と一緒に高校へ向かう。
まさか本当に高校へ行くことになるとは……。
久方ぶりに革靴は少しサイズが小さく感じて、どうも履きなれない。
でも1年ぶりの外の空気は、ちょっぴり雑草臭くて、でもどこか懐かしくて……。
「兄さん。今日から通う高校って、ここから少し離れた場所にあるけど、2年生に兄さんの知り合いとかいないの?」
「もしかして心配してくれてるのか?」
「べっ、別にそんなんじゃないけど」
結珠奈は否定しながらも「それでどうなの?」とさらに聞いてくる。
「一応いない。同じ中学からそこを受けた奴らはみんな公立高校に合格してたし、単願で受けた奴もいなかったから俺だけなんだよ。不合格で私立の滑り止めに入ることになったのは……そう、俺だけ」
またあの地獄が脳裏をよぎる。
あの時、高校に落ちてなければ今頃は華の高校生活を送っていたというのに……。
「あーあ。結珠奈のせいで青斗くん落ち込んじゃったー」
「は? なんであたしのせいになってんの?」
結珠奈と紅葉が睨み合う。
「ふ、二人とも、こんな往来で喧嘩は」
「あのー? もしかして……喜多島青斗先輩ですか?」
突如として背後から俺の名前を呼ぶ女子の声が……んん??
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