第4話 デカい2つの果実とギャルの秘密


 部屋決めじゃんけん。

 三つ子だからあいこが何回も続くのかと勝手に思い込んでいたが、意外にも1発で勝負が決まった。


「「「じゃーんけーん、ぽいっ」」」


 紅葉もみじ杏子あんずがパーで、結珠奈ゆずなだけがグーを出していた。


 ってことは……つまり、結珠奈が俺と……。


「うっっわぁ。マジかぁ……」


 結珠奈ゆずながジト目で俺を見てくる。

 いかにも嫌そうな顔……まあ、無理もないか。


 けど昨日まで引きこもりライフを送っていた俺が、こんな美少女ギャルの妹と部屋をシェアすることになるとは……色々とぶっ飛んでるな。


「ってことで、結珠奈が青斗くんと二人部屋に決定〜! おめでとー!」

「はぁ……まあ、ちゃんと自分のスペースあるならそれでいいや」


 結珠奈は割り切った言い方をすると、そのまま朝食のトーストを食べ切って席を立つ。


「それじゃあ、さっそくだけど兄さん」

「え、う、うん」


 まさか俺の人生で、金髪ギャルから「兄さん」と呼ばれる日が来るなんて。

 あまりにも呼ばれ慣れてなくて変な感じだ。


「もう引越しの荷物が届いてるらしいからさ、それを部屋に運んでもいい?」

「あ、ああ。じゃあその間に俺は、部屋を分割するために家具を移動させるよ。言っても、俺の部屋にはあんまり家具がないから、すぐ終わると思うし」


 引きこもる前からゲームをやるのに最低限の機材と環境しかなく、引きこもっているからこそ下手にグッズや家具を増やすこともなかったのだ。

 あとはカーテンを準備をすればすぐに分割はできると思う。


「じゃあカーテンはわたしが用意するね? 青斗くん、結珠奈はちょっぴり寝息と寝言がうるさいと思うけど、よろしく♡」

「うるさくねえしっ。兄さん、あんまり紅葉の言うことは真に受けなくていいから」


 結珠奈はそう言ってリビングを後にした。


 じゃあ、俺も部屋に戻って色々と準備するか。引きこもっていたとはいえ、毎日部屋は綺麗にしていたから大丈夫だとは思いたいが、もう一度しっかり掃除しておかないと。


 俺が部屋に戻ろうとしたその時……急に背後から手を引かれる。


「青斗くん、別に結珠奈ゆずなと仲良くなってもいいけど……わたしの方が絶対、青斗くんに"尽くせる"良い妹になれると思うんだけどなぁ」


 そう言うと紅葉は、わざとらしくその大きく実った胸元のモチモチの果実を、俺の背中に思いっきり押し当てて……ってぇうえ!?


「もっ! 紅葉、さん!? 当たってるんだけど!」

「ふふふっ」


 な、なんでこんな距離詰めてくるんだこの子!

 まだ初めて会ったばかりなのに!

 まさか、紅葉は……俺のことを!?


「あの、お兄さん……紅葉お姉ちゃんは女子校の友達にも身体を使って無理やり距離を詰めるから、よくドン引かれてて……あまり深く考えない方が良いですよ」


 俺たちの様子をパンを食べながら見ていた杏子が、ボソッとアドバイスをくれる。


「身体を使う……激ヤバだな」

「げっ、激ヤバ!? ちょっと! みんなして、わたしのこと"やばい子"みたいに扱わないでよ!」


 少なくとも俺の中では(初対面なのにやけに距離の近い)やばい子ではあるよな。


 俺は冷静な思考を取り戻すと、紅葉のよく分からない色仕掛け(?)を掻い潜って部屋に戻るのだった。


 ☆☆


 俺の部屋はこの一軒家の中でもそこそこ広い部屋なので、二つに分割しても十分なスペースがある。

 出入りするドアを中心として真ん中に境界線を作った俺は、紅葉から貰ったカーテンをその境界線に取り付ける。

 ガムテとかで無理やり天井から垂らしてるからかなり荒療治になっているけど。

 そして俺は今一度、自分のスペースを見渡す。


「狭くなったけど、元々ゲームしかやらないからこれでいいか」


 俺は半分になった自分のスペースにゲーム環境を整える。

 俺が作業を進めていると、コンコンと廊下からノックする音が聞こえた。


「兄さん、もう入っても大丈夫?」

「あ、ああ。どうぞ」


 結珠奈が両腕に荷物を抱えながら部屋に入ってくる。

 さながら爆買いの観光客みたいな量の荷物だ。


 しっかし、まさかこの部屋に金髪ギャルが入ってくる日が訪れるとは……人生わからないものだ。


「大変そうだし、荷物運ぶの手伝おうか?」

「……下心、あったりする?」

「どストレートな質問にも程があるだろ。下心なんて全くないし、そんなことよりも落としたら大変な荷物だってあるだろ?」

「……まあ。じゃあこのダンボールを、あっ!」


 結珠奈が俺にダンボールを渡そうとしたその時、ダンボールの上に載っていた茶封筒のようなものが、足元に思いっきり落ちそうになる。


「やばっ!」

「……っ!」


 俺はその結珠奈の声に反応して、咄嗟に落ちそうになっていた茶封筒に手を伸ばしてキャッチする。


「ふぅ、間に合って良かった」

「あ、ありが……」


 その刹那——茶封筒の底がビリッという音を立て、何やら本のようなものが俺の足元にストンと落ちる。


 え、なんだ。これ……って、んんんんん!?


 俺の足元に落ちた本はどうやら漫画の単行本だったのだが……よりにもよってそのタイトルが。


『生徒には手を出さないって言ってた先生は、私の身体を覚えてしまった……01』


 という、メガネのイケオジに制服のネクタイを解かれる女子高生がカバーイラストの、かなりエグめな少女漫画だった。


「か、身体……覚え……?」


 俺が凝視していると、結珠奈は持っていた荷物を放り投げて咄嗟に漫画を拾い上げる。


「こっここ! これは! あくまで、作詞とかの資料だから! 触んなし!!」


 結珠奈はもうリンゴなのかってくらい真っ赤な顔で俺を威嚇すると、カーテンの奥へと消えていった……と思ったら、なぜかまた戻ってくる。


「あ、でも……キャッチしてくれて、あんがと。それだけ」


 謎にお礼だけ言って、また戻っていく結珠奈。


 なるほど……金髪ギャルもちゃんと乙女なのか。

 謎の知見を得た俺だった。



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