鈴波様のお気に召すままに!

花色 木綿

プロローグ

 なんなの、なんなの、一体どーなってるの!? 私の人生、どうしてこんなことばかりなのっ!!

 来世では普通の人生を送りたいなーなんて、現実逃避している場合ではなかった。

「お下がりください、鈴波すずな様!」

 安成やすなりが私を抱き上げた直後だ、カカッ……! と鋭い音が鳴り響く。何枚もの手裏剣が目の前の地面に深く突き刺さった音だ。

「ふははははっ! 抵抗しても無駄だ。鈴波お嬢様は、我が一条寺いちじょうじはじめがもらい受けるのだから」

 なにが、『もらい受けるのだから』よ。ふざけるのもいい加減にしてよ!

 忍者集団の中心にいる一条寺は、おかっぱ髪を揺らして高笑いしている。憎らしいことに、もう勝った気になっている。

 嫌よ、嫌! 初めて顔を見た男と結婚──、生涯をともにするなんて。初恋だってまだなのに、そんなの、絶対に嫌っ!! こんなおかしなことを考え付くなんて、ひいおじい様ったら、どうかしているわ。

 そう。私が命……ではなく正しくは身を狙われているのは、全てひいおじい様のせいよ。

 ひいおじい様のひとでなし──っ!!!

 時代錯誤も甚だしい忍者集団を前に、私は心の中で思い切り叫んだ。

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