第8話 中心

「すげぇ音だな」

ヤミを抱えた龍希は後ろから聞こえた轟音に驚きながらも

「まぁローズ達なら大丈夫でしょ、早く行こ」

ヤミは気だるそうに眠そうにしながらもローズと笹島を信じており後ろを振り返らない

「だな、でもこの音はさすがに心配だ、多分アイツらの攻撃の音ではないからあの鎧女の可能性があるな、少し心配だ」

「珍しいね、そこまで部下の事を思うような人だったけ?」

「いや、いつもならこんな胸騒ぎしないんだが……嫌な予感がするんだよ」

そんな話をしていると中心部に到着し、東京タワーの建物の上に来た、上空を見ると東京タワーの骨組みがハッキリと見えその上には少し光るものが見えた。

「……とてつもない生気を感じる、「A」の可能性がある。」

軍隊には敵のレベルを表す専門用語のようなものがある。

下から順にC,B,Aと危険度が上がっていく、Cはほんの危険動物のようなライオン程度の危険度だ。

Bはとても説明しにくい、育成学校の先生も説明に困るほどの中途半端な強さ

だが油断をすると命を奪われる。

Aは説明する程もなく危険度がいちばん高く油断をしていなく気を張りつめていても少しの瞬きほどの隙があれば首を断ち切られる。

「こんな感じでな、」

気づけば敵は目の前に来ていて手刀で首を断ち切ろうとしていた、

瞬時に反応し動き先程拾っていた木の枝と首の位置を入れ替えていた。

「……」

首をきりかかった緑色の髪色の女は無言のまま後ろに飛び身を引く

「君は……Silver Variationだね?なぜ私たちと同じ政府の機関が地球にいるんだ?」

ヤミは手を前に出しジェスチャーをしながら質問をする

「…………答える意味があるのか」

冷徹な声だ、見る相手全てに恨みを持っているかのように目にハイライトもなく声も何も感じない、まるで感情がないかのように

「…………簡単な話だ」「と言うと?」

口を開き話す気になってくれたようだ

「俺は捨てられた、本当は育成学校でトレーナーに育てられてきたんだ、でも捨てられた。どんな理由があるかは知らないが俺はあいつを許さない、そしてお前らも許さない!」


─────2ヶ月前


「トレーナー!!ご飯食べに行こ!!」

「おいぃ、人間校舎まで来んなよ?怒られるぞ?俺が」

「だったらいいや!行こ!」

「サラッと俺切り捨てたな?」

私たちは、とても仲が良かった、連携も素晴らしかった。

「シオリ!!!前に!」「了解トレーナー!!」

金髪のトレーナーはシオリを前に出しその後ろに隠れ

「今よ!!!」「おし来た!!」

死角から体を出し瞬時に刀を心臓に突き刺し1発でSilvervoidを倒す。

『俺たちは、一生一緒だと思った。死ぬまで離れないと思ってたんだ。』

でも………………

「お前はいらない、消えろ」

今までの笑顔は嘘だったかのように、金髪のトレーナーは冷徹な顔になり雨の降る路地裏に捨て、姿を消した。

「なんでなんでなんでなんで?なにか悪いことをしたの?私が悪い子だったから?もっと強ければ?なんで捨てられたの?なんでなんで

………………」


─────現在


「嘘だろ……そんなやつ聞いたことない」

「そりゃそうだよ、あいつはもう軍には居ない、何か問題を起こしたらしくてね、追放されて地球を彷徨ってるよ、どうせ死んでんだろ」

緑の髪色の女は下に俯き願いなのかなんなのか吐き捨てた。

「トレーナーなんだろ……?なんでそんなことを」

「あんなやつトレーナーなんかじゃない!!!ならなんで私を捨てたの!?!?どうせ金が足りないとか面倒みるのがめんどくさいとか死にたくないとかしょうもない理由で私を捨てたんだよ!!トレーナーなんか死んでしまえ……人間なんか死んでしまえ……この世の生き物全て消え失せろ!!!!!」

髪の毛が伸びその先から稲光が発生しこの建物全体を雷鳴で轟かせる。

東京タワーは大きな揺れを起こし崩れ落ち全壊する。

地面は割れ始め足の踏み場が無くなるほどに地下が空洞になるほどの衝撃が出来る。

「くっ!?ヤミ!俺の手を!」

「龍希君っ…………!?!?」

ヤミの体を緑髪の女が抱え、時空移動装置を発生させ、中に放り込む。

「ヤミ!!!!!!!!」

龍希が叫ぶと見覚えのある顔が時空移動装置から顔を出す。

「龍希君……久しぶりだね!」

その顔はとても不快感のある、ゴミムシのような顔だった。

「六連!!!!!!!!!!!!」

その顔は『新馬六連』だった、ニヤッと笑い目はゴミを見るような目でその顔のまま時空移動装置に姿を消した。

「……っクソが!!!おいお前!」

緑髪の女を指さす。

「お前の名前を最後に吐け!!重要指定人として晒しあげてやる!!」

「…………ならこの名を世に知らしめろ。

『時空の覇者。ネオシオリヴォース。と』


ネオシオリヴォースは姿を消した、そこには地下へと落ちていく俺の身体だけがあった、ここで死ぬのか、助けてくれよ、笹島、ローズ………………

するとバッと体を抱えられ抱き上げられた。

笹島か……ローズか?

俺は曖昧な意識のまま目を少し、残りの力の限り開く。

「大丈夫?龍希君……」

ヤミ……?なんでだ、お前は連れていかれたんじゃ……

「目を覚ましてくれ、龍希君。君のヤミ君が連れていかれたんだ。早く戦略を立てて攻め込まないと」

その姿は金髪の男。

金色の暴君。ナーヴェストヴル。

またの名を田守龍希の大親友、俺の唯一の友達だった、同じ育成学校に通ったのに姿を見せなかった男。

「仙波雄一郎……?」

それは、久々に見る顔だった。

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