第43話 ギルドマスターに呼ばれちゃったんだがぁ?

「――へぇ、ここの傭兵ギルドはずいぶん清潔だねぇ」


 役所みたいだ。

 学生が多いからなのかねぇ? 衝立で分けられた窓口が、十一かな? あって、それぞれに列ができてる。


 広さも市役所ぐらいはありそうだなぁ。人だかりができてる場所は、依頼でも張り出してあるのかねぇ。

 混ざってる若い子たちは、たぶん学園の生徒なんだろうねぇ。妙にこぎれいな格好してるし。


「汚いところもあるんですか?」

「あるある。というか、そっちの方が多いんじゃないかねぇ? ガラの悪い傭兵の方が全体で見れば多いし、そんな人たちの集まる場所が綺麗なわけないでしょ?」

「たしかに……」


 うん、けっこう酷い物言いをしたのに素直に受け止めちゃった。この辺はまだまだ子供ってことなんだろうなぁ。


 とはいえ、実際傭兵は何の職にも就けなかった人間が最後に行き着く立場だからねぇ。危険な仕事も多いし、乱暴な腕自慢ばかりになるのは仕方ない。


 一応そうでない傭兵も少なくないんだけど、総数で見るとどうしてもねぇ。


「さて、新規登録はどこに行けばいいのかねぇ?」

「誰かに聞いてみますか?」


 それがよさそうだねぇ。えっと、親切そうで暇してる人は……。

 

「にゃぁ」

「うん? あっちってどうして……って、酒場じゃないか。お腹空いたのかい?」

「にゃ!」


 さっき朝ご飯食べたばかりでしょうに。

 仕方ないなぁ。


「にゃぁ。ゴロゴロ」


 もうベーコン少ないなぁ。また作らないと。

 ん、今のやりとりでちょっと注目されちゃったみたいだねぇ。ある意味好都合。


 デレデレしてる人は、うん、彼女でいいかな? 学生っぽい女の子だ。格好的にたぶん魔術士。


「すみません、傭兵の新規登録に来たんですけど、どの列に並んだらいいですか?」

「うぇっ!? え、えっと、一番、だったはず?」


 凄くチラチラしてるねぇ。それじゃあ情報量だよ。


「どうぞ、撫でてあげてください。いいよねぇ?」

「にゃぁ……」


 フィアの賢さはこういう時助かるよねぇ。渋々だけど、頭を女の子に差し出してくれた。


「はわわ……。フワフワ……」


 そりゃあ、毎日いいもの食べてるからねぇ。時々、白地竜のたてがみで作ったブラシを使って毛繕いもしてるし。コペンはともかく、フィアのブラッシングはけっこう大変なんだよねぇ。


 リリア、うずうずしてるけど、君はいつでもさせてもらえるでしょ?


 一番は、この列か。そこそこ並んでるねぇ。

 入学前の時期だからかなぁ。


 えっと、うん、受付のお姉さんが登録作業ぽいことしてるからあってそうだねぇ。


「――すみません、僕とこの子の傭兵登録をしたいんですが」

「えっと、はい、新規登録ですね」


 この反応は、あれだ、おっさんが今更傭兵に登録するのかよみたいなやつだねぇ。

 僕ぁ見た目もちゃんとアラフォーだからねぇ。


 傭兵登録、ゲーム時代はしてあったんだけどねぇ。

 もしかしたら記録として残ってるかもしれないけど、別にランクとか拘りないしなぁ。


「ではこちらに記入をお願いします」

「分かりました。……ジョブの欄は、十六歳未満の場合は未記入でいいんですかねぇ?」

「はい、大丈夫です」

「だそうだよ」


 ……これ、大賢者って書いて大丈夫なのかねぇ?

 なんだか面倒なことになる気がするんだけど。


 あ、そういえば教授から紹介状貰ってたねぇ。


「学園の方でこういうの貰ったんですけど、ここで渡したらいいですか?」

「拝見します。……ゲホッゴホッ、し、失礼しました。この後は、お時間ございますか?」

「ええ、特に予定は無いですが……」


 嫌な予感がするねぇ……。


「それでは後ほどお呼びしますので、ギルド内でお待ちください。お嬢様の登録だけは済ませましょう」


 紹介状を受け取った別の職員がどこかへって、まぁ、上役の所なんだろうけども。

 仕方ない。せっかく貰った紹介状を無駄にするのも良くないしねぇ。


 リリアの登録だけ見守ろうか。

 文字の読み書きは僕と知り合った時点でできてたし、特に口出すことも無いでしょう。



「――お待たせしました。こちらへどうぞ」

「それじゃあリリア、行ってくるよ。フィアを残して行くから、依頼でも見てて」

「分かりました」

「にゃぁ」


 向かってるのは、上階かぁ。けっこう奥まで来てるし、ギルドマスターのところっぽいなぁ……。


「こちらです。……失礼します。お連れしました」

「入れ」

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