第9話 入れ食い状態なんだがぁ?
⑨
食事関係のもろもろが終わって、家づくりもすいぶん進んだ。
進捗としては、七割は超えたかねぇ。
もうすぐ昼ご飯だし、休憩がてら今後のことを考えてみようか。
喫緊の問題は、野菜と魚だよねぇ、やっぱり。
お肉も美味しいんだけど、胃袋はやっぱり若くないみたいだしねぇ。
肩ロースはやっぱり一切れが限界だったよ。
「魚、は湖があったはずだから、それを探す感じかねぇ。野菜は、どうしようかねぇ……?」
湖に向かう途中で野生の何かがあればいいんだけどねぇ。
一応、ストレージの中に種はあるんだ。
栽培師系のジョブもアドバンスジョブ以下は全部カンストさせてるからねぇ。
ただ、どれもこれも普通じゃないというか、まあ、危ないしろものなんだよねぇ。
小世界樹でこれだったし、ちょっと手を出せない。
試すならもっと色々準備してからだねぇ。
確率でレイドボスが発生したり周辺一帯を死の大地に変えるようなものばかりだから。
最悪、初期村に行けば普通の野菜の種も手に入るでしょう。
面倒ごとを押しつけられたらさっさと逃げれば良いだけだし。
人払いの結界を張っておけば、ここには誰も近づけないはず。
「とりあえず、湖に行こうか。フィア、コペン、付いてくるかい?」
二匹とも小世界樹の下でゴロゴロしてたけど……ああ、付いてくるのね。
それなら警戒は二匹に任せちゃっていいねぇ。
えっと、初期村があっちだから、こっちかな?
「あ、もし食べられる植物があったら教えてくれないかい?」
「んにゃ」
「いや、君たちはいらないかもだけど、僕は欲しいんだよねぇ」
「にゃぁ」
「うん、頼んだよ」
仕方ないなぁって。
まあ、手伝ってくれるならそれで十分かねぇ。
うーん、無いねぇ。
スズナとかスズシロくらいならあるかとも思ったんだけど。
大根か蕪があれば、それだけでレパートリーは広がるからねぇ。
よく出汁を吸った大根なんて、日本酒のアテとしても優秀だし。
「お、水の匂いだねぇ。着いたかな?」
木の隙間でキラキラしてるのも見えるし。
うん、やっぱり湖だ。
僕の記憶も案外あてになるねぇ。
えっと、釣り竿釣り竿っと……。
あったあった。
聖樹の枝を削ったり貼り合わせたりして作った特注品だ。
これなら、メガロドンがかかっても安心ってねぇ。
こんな初期村近くの湖にはいないけど。
「フィアとコペンはどうする? 僕ぁしばらくここで魚を釣ってるつもりだけど」
「にゃぁ……にゃっ!」
ゴロゴロしてる、と。
まあいつも通りなのかねぇ。
「んにゃ」
「もたれかかってていいのかい? それは助かるねぇ」
あのふかふかな毛に包まれるなら、腰への負荷も少なくて済みそうだ。
はてさて、どれくらい釣れるかなぁ?
ほいっと。
「……うん? もうかかった?」
かかってるねぇ。
これは、知らない魚だ。
マスっぽいけど、この世界固有の種かな?
とりあえずシメて、ストレージへ。
生き物が入らない仕様だけはちょっと不便だねぇ。
いや、贅沢言いすぎか。
それじゃあ二投目。
一匹じゃぜんぜん足りないだろうしねぇ。
ってまたかかった。
今度は、アユの仲間かな?
ああ、なるほど。
こんな危険地帯で釣りする村人なんていないかぁ。
魚がまだスレてないんだねぇ。
こりゃ、しばらくは入れ食いだ。
ふぅ釣れた釣れた。
百匹は釣ったんじゃないかなぁ。
「お昼は、今釣った魚焼こうか」
「にゃぁっ!」
コペンの方が嬉しそうだねぇ。
尻尾が一定のリズムで揺れてて可愛いよ。
腸を抜くのと串打ちは、例によってジョブの力で一瞬っと。
熱源はその辺の枝を薪に、【トーチ】の魔法で着火。
あとは塩を振って焼くだけだねぇ。
待つだけなのもなんだし、ちょっと遊ぼうか。
木工師と細工師、それから錬金術師のジョブスキルを駆使しして、丈夫なおもちゃを作ろう。
猫じゃらしっぽいヤツ。
普通の素材だとコペンの力にも耐えられないだろうから、魔界の素材を使おうか。
僕の装備ほどじゃないけど、十分丈夫だしねぇ。
うーんと、こんな感じかなぁ。
うん、いい感じ。
あとは、神獣の二匹が食いつくかだねぇ。
「ほれ、ほれほれ」
おー、すっごく見てる。
超見てる。
フィアまでこれほど食いつくとは思わなかったねぇ。
ただ、僕、今フィアにもたれかかってるから、急に動かれるととんでっちゃうよぉ?
あ、フィアは諦めたかぁ。
やっぱりしっかり大人だねぇ。
コペンに譲った感じかなぁ?
それじゃあしばらく、コペンと遊んでようか。
うーん、可愛い。
焼き魚はちゃんと美味しかった。
やっぱり魚だねぇ。
大根おろしが欲しくなっちゃったけど、ないものは仕方ない。
明日の朝には家も完成するだろうし、そうしたら村に行ってようかねぇ。
何事も起きないことを祈って。
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