第7話 生姜焼きが美味すぎるんだがぁ?
⑦
やっぱり神獣たちかぁ。
どうしてまた来たんだろうねぇ?
ん?
あそこに置いてあるのは、ロック鳥じゃあないか。
もしかして、お礼はまだ終わりじゃなかった?
大きいねぇ。
木の上から見ても大きい。
片翼だけで仮設小屋より大きいんじゃないかい?
推奨討伐MLは、たしか、二千八百くらいだったっけ。
フォレストオーガジェネラルより少し下くらいだった覚えがあるねぇ。
おっと、キョロキョロしてるし、とりあえず声をかけてみようか。
もし上がってこられても、あのサイズなら玄関部分のデッキに乗るのも余裕なはず。
「おーい、君たち、またお礼を持ってきてくれたのかい?」
「んにゃぁっ!」
やっぱりあのロック鳥はお礼かぁ。
うん?
子猫を咥えたってことは、あ、跳んでくるね。
「この辺に頼むよぉ!」
伝わったかねぇ?
うん、伝わったようだ。
ちゃんと広いところに乗ってくれた。
賢くて助かるよ。
「にゃぁ」
おお、子猫の頬スリスリ。
これが一番のお礼かもしれないねぇ。
「僕は今から夕食を作るけど、食べてくかい?」
「んにゃ」
これは、たぶん肯定かなぁ?
まあ、違うならどこか行くでしょ。
そういえば玉ねぎとか生姜は大丈夫なのかねぇ?
聞いてみようか。
神獣ならたぶん、理解するだろうし。
「君たちって、こういうの食べても大丈夫かい?」
「んにゃ」
さっきと同じ返事。
大丈夫ってことかな。
それじゃあいいか。
しかし、この二匹が満足する量ってなると、漬けてあるの全部使わないとかもねぇ。
それでも足りない可能性もあるかぁ。
まあ、その時は諦めてもらおう。
「じゃあちょっと焼いてくるから、待ってて」
「んにゃぁ」
ふむ、あとでちょっと吸わせてもらえないか聞いてみようかねぇ。
「さてさて、お肉の方はどんな感じかなぁ?」
うん、良さそうだ。
たしか、クエスト用につくった巨大フライパンがあったね。
アレを使おうか。
「よっこらせっと」
いやぁ、大きい。
目玉焼き何十個作れるんだろうか?
今度試してみてもいいかもねぇ。
それはそれとして、だ。
コンロも大きめに作って良かった。
四つ口全部使わないとだけど、乗る分には乗るねぇ。
先に点火して、中火に調整。
魔導コンロだからけっこう高火力にできるんだけど、それじゃあ焦げちゃうしねぇ。
油をひいて、温めてる間に肉を取り出す。
余分なタレはキッチンペーパー擬きで拭き取っておかないとねぇ。
ふむ、油もいい感じだ。
ここに肉を一気にどかっと入れる!
「おー、良い匂いだねぇ」
じゅーって音もいいよねぇ。
お腹が空いてくる。
うん?
「君たち、そんな所で覗いてるくらいなら入ってきてもいいんだよ?」
ぎりぎり玄関も通れるだろうし。
……なるほど、この家に足りないのは猫だったか。
部屋の片隅でちょこんと座って待つ猫二匹。
素晴らしい光景だねぇ。
おっと、ひっくり返さないと焦がしちゃう。
この量をひっくり返すのは大変そうだけど、宮廷調理師の補助がある今なら……。
「ほっ!」
よし、上手くいった。
こんな大きなフライパンでも、振るだけで全部きれいにひっくり返せるもんなんだねぇ。
失敗したら【テレキネシス】の魔法で動かすつもりだったんだけど。
うん、そろそろかな。
じゃあ残りのタレと玉ねぎも入れてっと。
玉ねぎがしんなりしたら完成っと。
「ほら、できたよ」
彼ら用の皿は、木材の余りを削ろうか。
間に合わせだし、これは
うーん、良い香り。
そこに僕は、作り置き(炊きたて)の白ご飯を召喚するよ!
いやぁ、時間の流れが止まったストレージって便利だねぇ。
「それじゃあ、いただきます」
なっ、これは!
とろとろとした脂身と柔らかな赤身、その両方がしっとりと甘くて、濃厚な肉汁が溢れてくる!
そこに香る生姜の香り。
白ワインに底から支えられた旨味が合わさって、至福のハーモニーを奏でてるようだよ!
これは、ちゃんと漬け込んで良かったねぇ。
漬け込まない版だと、タレが肉に負けてたかもしれない。
それぐらい味のしっかりした、美味しいお肉だ。
「はぁ、はぁ、はぁ……。これは、ご飯が進むぜ……!」
我ながら妙なテンションになってる自覚はあるけど、これは仕方ないよねぇ。
だって美味すぎるんだもの。
神獣達も無言でがっついてるし。
そこに、秘蔵の日本酒!
「ぷはぁっ!」
これは、優勝だねぇ。
生姜焼きでお酒とご飯が進んで、お酒で生姜焼きが進むよ。
さて、おかわりは……無い、だと……?
いつの間に僕らは食べ尽くしたんだ?
恐ろしい、これがオークジェネラルのお肉……。
他の部位も楽しみだねぇ、これは。
「ごちそうさまでしたっと」
ふぅ。
まだ食べ足りないけど、満足もした感じがするねぇ。
やっぱりカップ麺やコンビニ弁当ばかりの食事とは比べものにならない。
食事の時間ばかりは弁当を作ってくれる奥さんがいる同僚が羨ましかったもんなぁ。
結婚願望は湧かないどころか、考えてる暇もなかったけど。
「うん? なんだい?」
肉球でぷにぷにされるのは吝かではないけど、何か伝えたいことがあるっぽいねぇ?
おかわり、って感じでもなさそうだ。
「どうしたんだい?」
「んにゃっ!」
うん?
メニュー画面が勝手に立ち上がった。
新着のメッセージが二件?
えーっと、神獣ラインカッツェが友誼を求めています……?
まじ……?
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