18禁ゲームの淫魔に転生したので、健全にスキルを使って自分を鍛えて、きままに世界を旅する冒険者をめざします −なのに出会った少女たちが新たな自分に覚醒めていくのですが−
第44話「ステラ、新たな自分に覚醒(めざ)める」
第44話「ステラ、新たな自分に覚醒(めざ)める」
「それじゃ眠ってくれ。ステラ」
「……ちょ!?」
俺は【スリープミスト】を発動した。
ステラは眠りについた。
ここは俺の個室にあるシャワーブース。
俺たちはここで、ステラの身体を調べることにした。
個室で作業をするわけにはいかなかった。
【スリープミスト】は
寝室で使ったら、ベッドも壁も湿気まみれになってしまう。
その結果、
それを防ぐために、シャワーブースで作業をすることにしたんだ。
ちなみに、ステラは寝間着姿だ。
女の子だということがよくわかるけど……今は気にしないようにしよう。
俺が
淫魔が女の子の身体をいちいち意識していたら、仕事にならないもんな。
だから気にならない。そういうことにしておこう。
それで、ステラにほどこされた調整だけど……。
「やっぱりペンダントが、ステラの
ペンダントは吸収した精気を、魔力に変換している。
変換された魔力は、ステラの中に戻って行く。
その魔力が、ステラに影響を与えているんだろうな。
──たとえば、ポーラに逆らえなくなるように。
──たとえば、ポーラの命令に、最優先で実行するように。
──たとえば、ペンダントをはずすことに、嫌悪感を覚えるように。
そういう役目を、このペンダントは
ペンダントを無効化すれば、ステラはポーラの
ただ、力まかせに外したり、
ペンダントはステラと繋がっているからな。
彼女に影響がないように、
そのためには──
「フルフル。来い!」
『ふるふるふるふる──っ!』
俺は
「フルフル、ステラの両手両脚を押さえていてくれ」
『ふるふる?』
「ああ。それでステラを、一時的に俺が支配したことにできるはずだ。そうすれば、安全にペンダントを外せると思う」
相手が『気持ちいい』状態にあるのか、それとは違う状態にあるのかもわかる。
身体がどれくらいの負担を感じているのかも、手に取るようにわかるんだ。
だから、安全にペンダントを外すには、ステラを一時的に支配するのが、一番かしこいやり方のはずだ。
『ふるふるー』
フルフルの
よし、これでステラを仮の『とりこ』にできたはずだ。
あとは……
このペンダントはステラの精気で動いている。
彼女の精気を魔力に変換することで、無限に
だったら、魔力切れにすればいい。
マジックアイテムが吸収した精気をからっぽにすれば、電池切れになるはずだ。
電池切れになれば、ペンダントは機能停止する。
安全に外すこともできるはずだ。
「
俺はステラの胸に手をかざす。
対象をペンダントだけにして、精気を吸収していくと──
────ルルルルルルル。
ペンダントが
まるで、苦しんでいるみたいだ。
ステラへの
彼女は眠ったまま『心地いい』状態にある。
よし。このままペンダントの
────ルルルルルルッ!
ペンダントが
必死に精気を求めているのがわかる。
でも、こいつにはもう、どんなエネルギーも与えない。
変な条件付けのアイテムは、ここでぶっこわす。
そういえば……ゲームに登場するステラって、どんな状態だったんだろう。
物語の中で、彼女は主人公に正体を明かすわけだけど……そのときは、ポーラの影響から逃れていたんだろうか?
もしも、その後のステラも、ポーラの影響を受けていたとしたら……。
……ステラのエンディングって、ハッピーエンドじゃなかったのかもしれないな。
主人公とともに、王立学園に就職するエンディングだったからね……。
────ぱり……ん。
やがて、ペンダントの表面に、
俺は手をかざしたまま、精気を吸収しようとする。
けれど、もう、なにも感じない。
ペンダントは精気の吸収も、魔力への
完全に機能停止したみたいだ。
ステラの状態も問題なし。
じゃあ、ペンダントを外しても……大丈夫かな。
俺は彼女の首の後ろに、手を伸ばした。
ペンダントのつなぎ目に触れると……
ステラを
もう一度ステラの状態をチェックすると……うん。まったく異常はない。
彼女は『心地よい』夢を見ているみたいだ。
ちょっと体温が高くて、呼吸が早いのが気になるけど、問題ないレベルだ。
「これでステラがポーラに支配されることはなくなったと思う」
『ふるふるふるふるーっ』
「あとはステラを起こして、と」
俺はフルフルを『使い魔の宿』に戻してから、【スリープミスト】を解除する。
その後で、ステラの身体を軽く
「終わったよ。ステラ」
「…………あ、あれ?」
ステラが目を開けた。
俺はペンダントを拾って、彼女に示す。
ステラが目を見開く。
ペンダントが外れたことに、おどろいているみたいだ。
「ぼくのペンダントが外れたの? すごい……どうやったの?」
「ごめん。秘密にさせてくれ」
「う、うん。そうだね。わかったよ」
「ステラに変なことはしてないよ。それは保証する」
「そんな心配はしてないよ。ぼくはシンを信じてるから」
「ありがとう。あと、俺はペンダントを外しただけで、ステラの身体については一切見ていないから。そういうことにしておいて欲しい」
「……え? わ、わわっ?」
ステラはあわてて胸を押さえた。
「えっと……あのね。シン。これは……」
「大丈夫。俺はなにも見ていないから」
「そうだね。そういうことにしておくって約束だったもんね」
「そういうこと。あと、寝間着を
「わかってる。ありがとう。シン」
ペンダントを握りしめたステラは、うなずいた。
「……うん。ぼくの中から、母上の気配が消えたのがわかるよ。やっぱり、このペンダントが、ぼくにとってのスイッチになっていたんだね」
「ああ。たぶんそのペンダントは、ポーラの意思を、ステラに伝える役目を果たしていたんだと思う」
「そうだね。ペンダントが外れたことで……なんだか、すごくすっきりしたよ」
そう言ってステラは、笑った。
「でも、不思議だな。ちょっとだけ……不安になってるみたい」
「そうなのか?」
「うん。ぼくはいつも、母上の命令を、心のどこかで感じていたんだと思う。それがなくなったら……なんだか、不安になっちゃった」
ステラはペンダントを通して、常にポーラの気配を感じていた。
無意識状態とはいえ、彼女に命令されることに慣れていた。
それはステラを
ペンダントが外れたことで、ステラは
でも、代わりに、不安を感じるようになった……ってことか。
「……シンにお願いがあるんだ」
ステラは
「ぼくに……命令してみてくれないかな?」
「命令? 俺が?」
「うん。母上の影響が完全に消えるまででいいから」
ステラは震える手で、俺の服の袖をつかんだ。
「ぼくが……完全に自分の足で立てるようになるまで、シンに導いて欲しいんだ。だってシンは、ぼくに変な命令はしないでしょ? そんなシンの言葉を、ぼくは、生きる目印にしたいんだよ」
「大げさじゃないか?」
「も、もちろん、
「当たり前だろ」
「う、うん。当たり前だよね?」
ステラは大きな目で、まっすぐに俺を見た。
「じゃあ、シンがぼくに命令するとしたら、どんなこと?」
「『
「模擬戦のために全力を尽くせってこと?」
「そうだね」
「そのためには、あらゆる手段を許可するということでいいかな?」
「いいと思う」
「うん。わかった。じゃあ、そうする」
ステラは立ち上がり、ぱん、と手の平をあわせた。
「ありがとう。シン。ぼくは母上なしでもやっていけそうだよ」
「そっか。力になれたのなら、よかった」
「あと……ひとつ、いいかな?」
「うん?」
「二人部屋にいるときは……ぼくは、本当の姿になってもいい?」
「本当の姿に?」
「ぼくが男の子の格好をしているのは、母上の意思によるものだから……」
そういえばそうだった。
ステラは、男子の中で
それは母のポーラの意思であって、ステラの意思じゃない。
ステラはもう、ポーラの意思からは解放された。
だから自室にいるときくらい、女の子の姿でいたい、ってことか。
「いいよ。というか、俺はステラの姿についてはなにも言わない」
「うん。シンなら、そう言ってくれると思った」
「それじゃ、俺も部屋にいるときは『ステラ』と呼ぶよ」
「そうだね。そうしてくれるとうれしいな」
ステラは
こうして俺たちは、新たな関係を
──ステラ視点──
「……なんだか、長い眠りから覚めたみたいだ」
ステラは自室で、そんなことをつぶやいた。
これまでのステラは、いつも頭の片隅にポーラがいた。
彼女の言葉や態度、命令……そんなものが、ステラの心に住み着いていた。
それはステラを縛る鎖のようなものだった。
歩き出そうとするたびに、ポーラの言葉が、
『こんなことをしてもいいの?』『母上はどう思うだろう?』と、考えてしまう。
けれど、もう、ポーラの声は聞こえない。
ステラは自分で道を選ぶことができる。
それは不安なこともであるのだけれど……。
「……大丈夫。シンがいるからね」
シンは『
今は、それでいい。
目の前の小さな目標を達成することだけでいい。
そんなことを繰り返すうちに、いつか、自分の意思で進めるようになると思う。
それはステラの胸にともった、小さな確信だった。
「本当に……これまでぼくは、母上の言葉を気にしていたんだな……」
ポーラの言葉を気にして、怯えていた。
それが消えたことが、はっきりとわかる。
「だって、母上の言葉を思い出しても、なにも感じないもの」
──アストラ、あなたは優秀です。
──わたくしの期待に応えてくださいね。アストラ。
──えっちなのはいけませんよ。アストラ。
「……ん?」
かすかな引っかかりを感じた。
ステラはもう、優秀である必要はない。
ステラはもう、ポーラの期待に応える必要はない。
そして……ステラはもう、えっちなのを
「え? え? なにこれ? なにこれ……?」
最後の言葉が、ステラの頭の中をぐるぐる回る。
ポーラは『えっちなのはいけない』と言った。
その言葉に従う必要は、もうない。
だから、ステラは……そういうことを我慢する必要はもうないわけで……。
「ち、違うよ。ぼくは……そんなこと考えたりは……」
ステラは、ぶんぶん、と
なのに、次から次へと
──シンと見つめ合うステラ。
──シンと抱き合うステラ。
──いつの間にか、すべての服を脱ぎ捨てていて。
──シンが……アストラの身も心も
(…………え? え? ええええええっ!?)
さらに、様々な記憶がよみがえってくる。
──シンの部屋のシャワー室でのこと。
──眠っている間、すごく心地よかったこと。
──濡れた寝間着姿を、シンに見せてしまったこと。
──寝間着が肌にはりついて、なにも着ていないのと変わらない姿を──
(わーっ! わわーっ わわわわわ────っ!)
ステラは口を押さえて、あふれる声を押し殺す。
もう遅い時間だ。シンはもう眠っているはず。
隣の部屋で。たぶん、寝間着を着て。
おだやかな表情で。ステラの腕よりも太い腕を伸ばして。
さっき、起きるときに触れてしまった、厚い胸板をさらしているかもしれなくて──
(だ、だめだめだめ! 考えちゃだめ。だめだってば! だめになっちゃうんだってば……)
そうしてステラは、眠れない夜を過ごし──
どうやったら妄想が消えるのか、悩み続けて──
そして朝、シンが起きてくるのを待ってから、個室を出て──
「お、おはよう。シン!」
「ああ、おはよう。ステラ」
「いい朝だね! 気持ちのいい朝だねっ!」
「うん。そうだな」
「今日の予定はなにかな? 模擬戦まで授業はお休みだよねっ! シンの予定はなにかな!?」
「俺はダンジョンに潜る予定だよ」
「そっか。ぼくは模擬戦のために訓練をするよ。シンの命令だからね!」
「それはいいんだけど、ステラ」
「な、なにかな!?」
「なんで制服のシャツだけを着てるんだ?」
(そうすると
──と、言いそうになったステラは、思わず口を押さえる。
それから彼女は、深呼吸して、
「寝間着がびしょびしょになっちゃったからだよ」
「あ、そっか。ごめんな……」
「気にすることないよ。制服のシャツは予備があるからね!」
「うん。それなら、よかった」
「ちょっと体操をしてもいいかな? 朝の日課なんだ。ずっと個室でやっていたんだけど、もう、シンはぼくの正体を知ってるからね。ここでやってもいいかな? 共有スペースの方が広くていいから」
「そっか。じゃあ、俺は着替えてから、食堂に朝食をもらいに行くよ。ステラの分ももらってこようか?」
「うん。ありがとう。シン」
うなずいてから、ステラは体操をはじめる。
毎朝体操をしていたというのは本当だ。
身体の可動範囲や、状態を確認するのに必要なことでもある。
ただ、今は少し、目的が違う。
なぜか、思ってしまったのだ。
『シンの前で、薄着で体操をすれば、悶々とした気持ちが治まるかもしれない』と。
そう考えたら止められなくなってしまった。
そんなことを思いながら、ステラは軽くジャンプを繰り返す。
身体をひねってねじって、前後に動かす。
「……あのさ。ステラ」
「な、なにかな? シン」
「ステラは
「隙が?」
「うん。外でそういう姿になると、女の子だってバレるから」
「そんなことないよー。ぼくはいつも気をつけてるから」
「俺の前に、身体にタオルだけを巻いた状態で出てきたことが、数回ある」
「────っ!?」
「風呂上がりに、だぼだぼの寝間着姿で小窓を開けたのは……ほぼ毎日だった」
「──────えっ、えっえっ!?」
「そういうことだから、気をつけた方がいいよ。じゃあ、朝食を取ってくるから」
シンは部屋を出ていった。
その後もステラは、黙々と体操を繰り返す。
「…………ちょっとは、落ち着いたかな」
やっぱりシンはすごい。
彼の側にいると、色々なことが解決してしまう。
悶々とした気分は、薄らいだ。
代わりに、心地よいドキドキを感じる。
本当は、シンにもっと命令して欲しい。
シンのためなら、なんでもできる。
彼が命令してくれれば、この変な気分も、すっきりするような気がする。
でも、それは望みすぎだろう。
シンはステラにたくさんのものをくれた。
これ以上を望むのはぜいたくだ。
もしも、シンになにかをお願いできるとしたら、それは──
「
──それしかない。
結果を出したら、シンはお願いを聞いてくれるかもしれない。
きっとステラに新しい命令をくれる。
この、もやもやした気分を、すっきりさせるような、そんな命令を。
「……次にどんな命令をしてもらうか……考えておかないと」
できれば、気分が晴れて、すっきりする命令がいい。
それを調べるためにも、図書館に行ってみよう。
どうして
「まあ、それはあとの話かな。今は、模擬戦の準備をしないとね」
そして、自分自身の願いを叶えるために。
そんなことを思いながら気合いを入れる、ステラなのだった。
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