第4話 DX版玩具なら見分けられた

2025年 4月7日(Man)



「和食……めっちゃ久しぶりだ……」


 朝食は鯵の塩焼きに味噌汁、白米と納豆。


 向こうの環境がどんな感じだか知らないが、確かに塩焼き以外は厳しいか?




「んじゃあ、オレらは魔物狩り行ってくるわ」


 朝食を食べ終わった柊命はリビングにポツリと立てかけられてあった剣を担ぎ、外に出ようとする。


「おい待て」


「なんだ?」


「お前、昨日までに何回職質された?」


「確か……10回くらい?」


「おま……それ……どうやって切り抜けてきたんだよ……」


「タイミングよく魔物とかが出てくるから、それ狩って修正力でいい感じに記憶が消えてる」


「そ……そうか……いや駄目だ! 流石にそれを担いで外出はマズいだろ!」


「まぁ、鎧はぶっちゃけインナーだけでいいんだよね。元々軽装だからダメージ喰らっちゃ焼け石に水だし。ただ、服持ってないし、武器はそうは行かないからねー」


「……竹刀ケースは?」


「細すぎる」


「ならギターケース……」


「取り出しにくそう」


「ク……なかなか手強い……」


 一体、何に武器を入れさせればいいんだ!


 明日までに考えておかなくては!


「あれ、そういえば愛鈴は?」


「アイツか? 部屋じゃね?」


 そんな話をした矢先、階段を降りる音が聞こえた。


「お待たせ〜」


「何してたんだ?」


「ちょっとメイク」


 あんま変わったようには見えないけど……それを言うのはノンデリだな。


「あんま変わったようには見えないが……」


 ノンデリだ……この勇者……


「えへへ、すっぴんでも可愛い?」


 このパターンで好感触なんだ……


「……あ、大学行かなくちゃか」


 財布から現金を取り出す。


「まぁざっと、10万くらいあれば服とか昼代とか足りるか?」


「え? 10万?」


「うん。10万」


「お前……貴族か何かなのか?」


「確かに実家は太いが、そんなもんだろ」


「そんなもんじゃないだろ!」


「いやそんなもんだって。な、愛鈴」


「まあ多少節約すれば足りるんじゃない」


「ほらー」


「まともなのはオレだけか!?」


「少なくとも必要とはいえど街中で大剣振り回すやつはまともじゃねぇよ」


「……行ってきまーす!」


「あっ、柊命〜待って〜」






PM


 大学直通バスを使い、そこから電車で2駅、家の近くまで戻ってきた。


 時刻にして4時ほど、米は予約炊飯のため問題なし。


 食材は……3人分で買っておかなくちゃな。


 帰りついでにスーパーに寄る。



 自動ドアが開くその瞬間、頭上を何かが飛び越えていった。



 いや、吹っ飛ばされていった。



 思わず頭上を見上げると、それは紛れもなく柊命であった。


「えぇぇぇぇぇ!?!? 何事!?!?」


「蒼馬!? なんでここに!?」


 高跳びのように吹き飛び激しく地面に打ち付けられた柊命は豆鉄砲を喰らったような顔でこちらを見ている。


「いやそれはこっちのセリフだわ! 一体何事……」


 店側を振り向くと、二足歩行で全長2m弱のイカのような怪物が店内で暴れていた。


「な、何事!?!?」


「お前は逃げろ! あれがエヴォクションだ! 魔物とは一味違う!」


 あ、あれが……確かにニチアサ系の怪人っぽい見た目してる!


「いいか! この場は俺が食い止める! お前は大人しくしてろ!」


「わ、わかった!」


 店から一度離れ、駐車場の車の影に隠れる。


 見たい……好奇心が……


「さっきはよくもやりやがったな!」


 柊命は武器を構え、店の中に突っ込む!


 その強靭な一太刀を振るうが、それをイカの手のようなもので真剣白刃取りの如く受け止められる!


「何ッ!?」


「@@#@!」


 怪人は意味不明な言葉を発した後、二本の腕で柊命の両足を掴み、ぶっ飛ばす!


 そのまま柊命は食品棚に勢いよくぶつかった!


「柊命!」


 近くにいた愛鈴が駆け寄る。


「やっぱ一人じゃキツいか……」


 そう言って再び柊命は立ち上がる。


「あーもう! 変身ステッキさえあれば私も戦えるのに!」


 ……変身ステッキ?


 まさか……まさか!


 バッグの中を漁る。


 ……あった!


 先日落としてたステッキ!


 これ玩具じゃなかったんだ!


 てか渡しそびれてたわ!


 これを彼女に渡せば……変身ステッキって言うくらいだし変身できるのだろう。


 俺は魔法少女になれるほどピュアじゃないから彼女に任せる。


 車の影から飛び出し、ステッキを投げた!


「愛鈴! 受け取れ!」


「え? え!?」


 愛鈴は驚きながらもステッキを確実にキャッチした。


「なんでコレ持ってんの!?」


「拾ったけど渡しそびれてた!」


「は!? 何やっ……はぁ!?」


 本当に申し訳ないとは思ってる。


「ま、まあいいや!」


 ステッキの先端、ピンクの宝石が輝き出す。


「”サクリフィス”!」


 宝石の光が最高潮になると、、放たれる光が彼女の周囲に集まり、半透明なピンク色の宝石を形成した。


 宝石の中で彼女は全身がピンクの光に覆われ、その光が徐々に形を変化させていく。


 ツインテールの髪は伸びていき、先ほどまでの服の影は消え、新たな服装の形となっていく。


 僅か数秒、宝石は弾け散り、彼女は変身した。


 いかにも、魔法少女といったような装いに。


「魔法少女、”ソリアムド”!」


 全体的にピンクを基調としたまさに主人公のような魔法少女の姿がそこにはあった。

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