第12話 睨む

以前書いた大型スーパーでの話。

そこではたくさん心霊体験をしていたし、「また出たよ」とよく聞いていた。

いろんな人が、そこでいろんなものを見ていたのだ。


子どもが走り回っている姿なんて、何回も見た。

その子どもは、まるで典型的な花子さんのような格好をしていた。

おかっぱ頭に赤いスカート。


その子はただ店内を走り回るだけだったので、「ああ、また走ってるわ」と思うだけだった。

それくらい“普通にそこにいる存在”だったのだ。


ある日も、その子はやっぱり走り回っていた。

時には「あはは」と笑いながら。


私はレジカウンターでぼーっとしたり、店に届いた商品を補充したり、整理したり、いつも通りに過ごしていた。

やがてだんだんと忙しくなり、レジにはお客さんの列ができ始めた。

私はレジが得意だったので、いつものように淡々とこなしていく。


そこは衣料品のレジだった。

すぐ横のサッカー台(会計後に袋詰めをする台)では、何人かのお客さんが服を紙袋やビニール袋に詰めていた。


レジを打ちながら、ふと“視線”を感じた。

――なんか、めっちゃ見られてる気がする。


サッカー台の方に目を向けると……

お客さんとお客さんの間に、しゃがみ込んだような格好で、あの子がいた。

目から上だけを出し、こちらを睨んでいる。


「えっ!」

思わず声が出た。


今までただ走り回るだけだったその子が、はっきりと私を睨んでいた。

ただ、ただ、睨んでいる。


私はレジに集中しようとした。

でも、その間もずっと視線を感じる。睨まれている。


レジを打ちながら、「私、何かしたかな……?」と考えた。

全く心当たりはない。


そう思っているうちに、ふっと視線が消えた。

サッカー台を見ると、あの子の姿はもうなかった。


――ここから、今までで一番怖い体験をした話に続く。

でも、それはまだ書かないでおこう。

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