第7話 人生2週目はチートです
今日は4月3日。
入学式が4月11日だから、あと1週間くらいは春休みだ。
この時間を利用して、俺はあることをしようと企んでいた。
俺が部屋で中学の学習範囲の復習をしながらその計画について考えていると、家の電話が鳴ったので、下へ降りて、受話器を取った。
――ガチャ
<はい早瀬です>
<こんにちは、桜ケ丘中学校の佐々木です。早瀬優さんはいらっしゃいますか>
<はい、私が早瀬優です>
<あっそうでしたか。実は、あなたにお願いしたいことがありまして、入学式で、新入生代表の挨拶をしてくれませんか?>
思いだした。前世でも入学式の新入生代表の挨拶をしたんだった。そっか、お願い電話がかかってきたのってこれくらいの時期だったかー
<わかりましたぜひやらせてください!>
<ありがとう。では、入学式の前日に一度桜ケ丘中学校まで来てください>
<はい>
<親御さんにもお伝えしたいのですが。お母様かお父様はいらっしゃいますか>
<今は出かけておりまして、5時ごろであれば帰っていると思います>
<そうですか。わかりました。では、それくらいの時間にまたかけなおさせていただきますね。ありがとう。またよろしくお願いします!>
<こちらこそお願いします!>
<では失礼します>
――プツッ、ツーツーツー
うわ、緊張するな…新入生代表の挨拶かー
前は文章は用意してもらえたけど、今回はせっかくなら自分で作ってやろう。
どんな文章を作ろうか考えていると、
玄関が開く音が聞こえた。
「ただいまー」
「父さん!おかえりなさい」
「ただいま優、もうすぐ入学式だろう。中学校は楽しみか?」
「うん!勉強は難しくなるかもだけど、部活とか新しい友達とか、楽しみなことがいっぱいあるんだ」
「それはよかった。俺は数学には苦労したから、数学だけはちゃんとしとけよー」
そういって俺の父さん、
父さんは現在単身赴任中で、週末だけ帰ってくるという生活を送っている。
もっとも、今は春休みに合わせて有休をとってくれているので、しばらくは一緒だ。
この人は小さいころから勉強もスポーツもできて、いい学校に入学して、いい会社に就職した、いわば恵まれた人だ。苦労はしただろうが、苦労すれば大体のことができるような人だったらしい。
俺が浪人生になって堕落した生活を送っていた時は、俺と顔を合わせると喧嘩になっていたので、ほとんど家には帰ってこなくなっていた。
この頃は父さんとの仲もすごくいいんだよな。なんとも切ない感情が、胸に浮かんでくる。
今世は父さんと仲たがいしないように頑張らないとな!俺は改めてそう思うのだった。
それから少したってから、
俺は周りに俺と父さんしかいないのを確認してから、父さんに少し神妙な声でこう話しかけた。
「父さん、ちょっと大事な話をしたいから、一緒にちょっと散歩に出かけない?」
◇
俺たちは、家から少し離れた神社まで来ていた。
「で、優、大事な話ってなんだ?」
少し怪訝な感じで聞いてきた父さんに、俺は一呼吸おいて答える。
「信じられないとは思うんだけどさ…俺、未来から精神だけタイムスリップしてきたんだ。」
「・・・はぁ?」
ぽかんとする父さんに、俺は事のあらましを、遥のことは少しぼかしながら説明した。
◇
「なるほど、母さんと彩から、優が急に大人びたというか変になったって聞いてたけど、そういうことなら辻褄はあうな…」
え、俺変になったって思われてたのか…結構ショックだ
「でも、それだけじゃ未来から来たなんて荒唐無稽な話、ちょっと信じられないかな。というか、そもそもなんで俺にそのことを話したんだ?母さんたちには話してないんだろう?」
「父さんに協力してほしいことがあって、それで話した」
「お金を貸してほしいんだ。」
俺が考えてたことは、何ら複雑なことじゃない。
「俺が未来で知った、これから急成長を遂げる会社に、100万円投資してほしい。」
遥の自殺が、もしお金に起因するものだったとき。どうしようもない状況に陥った時、金は武器になる。
「もちろん、俺が言ったことをそのまま全部信じてもらえると思ってなかったから、証拠として、これからの5日間で起きることをいくつか言うから、それがもし全部あってたら、検討してみてほしい。」
前回の1年生の時、「春休み中にあったこと」を調べさせる課題が複数の教科であった。そのおかげで、俺はこの時期にあったことを割と記憶している。
「いいだろう。その時はきちんと検討するよ」
俺は父さんからの言質をもらい、その日はそれで終わった。
◇
5日間、俺が言ったことはすべて的中し、ニュースを見ながら父さんはかなり驚いていた。
「どうしたのお父さん?なんか変じゃない?優兄に続いてお父さんも変になっちゃったのー?」
彩に笑われて、父さんは少し苦笑いしながら言葉を返した。
「いや、なんでもないぞ」
「変なのー」
彩に同調して笑う天音兄と僕をみて、父さんの顔がますます変になるものだから
父さん以外みんな笑いが止まらなかった。
◇
そして5日後、僕たちはまたあの神社に来ていた。
「いや、みとめるよ。あそこまで優が言ったことが当たるとは思わなかった」
「びっくりしただろ」
「ああ、ほんとに心の底からな・・・約束どおり、ちゃんと検討したよ。投資用に残してたお金がいくらかあるから、そこから100万円優に貸すことにして、そのお金で投資しようと思う。」
「ありがとう。税とかは抜いて。この投資によって得た純利益の1割を、父さんに利子としてあげるよ。もし、前回と違う運命をたどって、その会社が破産とかしちゃった場合には、俺が大人になってから必ず払う。そういう約束にしてくれるか?」
「ああ。わかった」
「一応書面でものこしておこうとおもったから、契約書作ってきたんだ。
これにサインしてくれるかな。」
父さんは少しびっくりして、それから渋い顔をして頷き、契約書にサインした。
「…なんというか優、本当にタイムスリップしてきたんだな」
「だから言ってるだろ」
俺は不敵な笑み(12歳クオリティー)を浮かべてそう返した
◇
よしうまくいったな!不安は残るけど、これで少しは安心できる。
もうすぐ入学式だ。楽しみだなー
◇
「ちなみに、その会社は何倍くらい成長するんだ。」
「20倍くらいかな」
「!?!?!?」
父さんは目を丸くした。
◆
お久しぶりです
文月結です
まずは謝罪を。長らく更新できずすみません!!
詳しくは近況ノートに書いたのですが、学生生活が忙しくなりなかなかカクヨムに触れる時間が取れませんでした
9月中は、なかなか更新できない日が続いてしまうので、
読んでいただいている方には、申し訳ないですが、しばしお待ちいただきたいです。
大変な時期が終わったら、また必ず戻ってきますので。今後ともよろしくお願いします!!
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