第八話 面接 8(言葉の壁)
今日の宰相は一味違った。今までわしに助言などせず、急に来る勇者面接者への対応をみて嘲笑ってあったのに、今日だけは何故か一言だけ助言があったのだ。その助言というのも、王侯貴族たるもの互いを尊重しあい、文化を受け入れる事が重要ですな、という言葉であった。
「バーラルーハーラル(次の者まいれ!)」
わしはびっくりした、宰相が訳のわからない事を言い出したかと思ったのだが、幼き頃に歴史を学んだ時に聞いたような言葉であると思い出す。
そして、何を意味しているかはわからない…。
宰相の言葉を聞いて一人の体の一部が鱗で覆われ、簡素な革鎧を纏った青年?が現れた。顔つきは人のなりと言うよりかはトカゲに近しい。
間違いない…バラル族だ…。少数民族で滅多に領地からは出ないが、同じ魔王に苦しむ者たちである。
「面を上げよ。名をなんと申す?」
わしのその言葉に何も反応せず、バラル族の青年はずっと頭を垂れている。わしは思った…、これは彼らの言語しか通じないのでは…と…。
宰相はわしの助けて目線を悉く無視するが、痺れを切らして重い口を開いた。
「ハジマリオウ、バーバララッタ、バルラ!(王が面を上げよと申している。名は何か?)」
「オオヨ、カンシャ。ナハ、ハロルド。バーラハラルラ、ヨヨリットム、ロロカム(バラル族族長の息子、勇士ロロカムの末裔)。」
片言の部分はなんとかわかったが、その後半部分が全くわからなかった。何か重要そうな話であるが、バラル族の言葉を学んだ過去の記憶はもう彼方なのである。
「王、彼はバラル族族長の息子です。粗相が無いように…。私は位が合いませぬのでここからは王が進めて下さい。」
いや…これはわしが悪いが、流石に宰相もわかってやってるよね。実質の死刑宣告受けたものだ…、相手は族長の息子!?。粗相があったら友好関係にヒビが入る重大な面接じゃないか…。
必死でわしは、片言の単語でも思い出せるように、脳をふる活動させる。うぉぉぉお、わしのシナプスよ活性化せよ。すると、記憶の片隅から単語が出てくる出てくる。
「オヨヨ、ピーナ、ハロルド(嬉しい、来た、ハロルド)。ロナ、スキタ(教えて、出来ること)。スタ、パパイ(よろしく、お父上に)。」
「ナルトランドム、スキタ、ソウジュラン、カミマホマ(槍の扱いと雷魔法が得意です)。パパイ…、パパイ…、ハロルド、シリランドム(おっぱい…、おっぱいより、私はお尻派です)。」
わからない。全くわからない。流暢に話されると右から左に抜けていく。しかし、パパイの部分はハロルドは何かを考えていたのかゆっくり話してくれていたので、よく聞き取れた。
コミュ強のわしからすると、ここの話を上手く繰り返しながら、相手との距離を詰めるのが一番良いとわかる。
わしは笑みを返して、片言でハロルドと会話を続ける。
「パパイ…、パパイ…、ハジマリオウ、シリランドム。」
「ハジマリオウ、シリランドム(王も尻派でしたか。)!ハロルド、シリランドム(私も一緒です。)!アナキラル、ココムス、バラル(子孫繁栄はバラル族でも最重要。)。シリラン、ロコロコリ、ココロム、バラムラム。(尻を鍛える事で、バラル族の強き者は過酷な出産を乗り越える)。」
すっごい、ハロルドめっちゃ喜んでる。わしの片言コミュも捨てたもんではない。この調子で、面接を進めよう。とりあえず、相手の言った事を、うまく広いなが、会話の話を広げていく。
「シリラン、ロコロコリ、ハジマリオウ!」
「シリランドム、ロコロコリ、ハジマリオウ(尻をきたえているんですか!?)!?アマジン…、カランファ、バラル(なんとも…、我が文化と同じですね)!」
反応が良くて安心する。わしはもしかすると外交に向いているのかもしれないと思ったが束の間、宰相がわしに耳打ちしてきた。
「王よ、そろそろ、話を締めて下さい。このままでは、私の腹筋が崩壊します。」
「なんじゃ、お腹がいたいのか…。ハジマリオウ、ハロルド、シリランドム(私とハロルドは尻派同盟)。フレンテ、アグリル(友好関係、築く)。500万ゴル、バラル、フレンテ(500万ゴルをバラル族との友好のために)!」
「サイオヨヨ、ハジマリオウ(史上の喜びです)。」
これで万事解決、わしもなかなかの外交手腕を見せられたので満足じゃ。
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