第九話 別れは突然に
「大丈夫ですよ。 心配しなくても」
「だからそんな不安そうな顔しないでください」
オーレタリアは使用人の部屋のベッドで横たわっている。
一向に良くなる気配はなく、髪の毛に白髪が混ざるようになってきていた。
でも、そんな彼女は私が寂しい思いをしないように週に一度は会うようにしてくれていた。
しかし、私が近づくと次第に体調が悪化し、咳と嘔吐に苦しまされるようになった。
私も馬鹿じゃない。
私の呪いが原因であることは薄々気づいていた。
もう彼女らには会わなくなった。
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次第に私は一人でいる時間が増えて行った。
体調の悪いオーレタリアや聖職者に代わり、名前も知らないような侍女が食事を運んでくるようになった。
「どうぞ、カルラ様 お食事でございます」
コトンと言う音を立てながら食事が机に置かれる。
その食事は、何をどう間違えても王族が食すようなものではなかった。
しかし、それでよかった。
呪いをばらまき、人を焼き殺し、感情も制御できないそんな怪物には十分すぎるほどの食事だった。
「それでは、失礼します」
侍女が会釈をして扉をしめる。
「あれが、噂の呪いの姫?」
「ええ、そうよ。 若い侍女を焼き殺したって言われているあの.....」
「あいつに近づくと呪いが移って死ぬんでしょ」
「あぁ、気味が悪い」
「聞こえないように言いなさいよ...ボソッ」
新しい侍女はこのように食事や飲み物を運んでは、廊下で陰口をたたくという幼稚な嫌がらせをしてくる。
もしかすると本当に聞こえていないと思っているのかもしれないが、毎日毎日陰口を言われるというのはなかなか
精神年齢が四歳のままだったのなら耐えられなかっただろう。
世界神には感謝をしなくては。
聖職者の授業を受けられなくなってしまった私は代わりと言っては何だが、すこし運動をするようになった。
夜遅くまで起きているとオーレタリアが「こんな悪い子には魔物がやってきて、かみ砕かれてドロドロに溶かされてしまいますよ。」だなんて言っていた。
本当かどうかは分からないが、聖職者の方を見てもうなづくだけだったので
おそらく本当であろう。
体力もないよりはある方がいいだろう。
体力づくりと言っても走ったり、
将来は適当に姿をくらませてオーレタリアや聖職者とともに旅人にでも出たいものだな。
このように、陰口を言われたり、一人で運動をしたりする日々が続いたある日、私はあの女に呼び出された。
「この長い廊下も一年ぶりだな」
護衛の騎士とともに歩きながら感想を述べる。
玉座へと向かう廊下には色鮮やかな花やそれを飾り立てる豪華な花瓶、絵画や大理石のような石で作られた石像や宝石、マジックアイテムなど、この世の富で手に入れられるすべてのものと言ってもいいほどのものがそこにあった。
「こちらです」
護衛の騎士が玉座の間の扉の前に立ちながら、扉の方に手を向ける。
「どうも、ありがとう」
護衛の騎士たちが扉に手をかけ左右に分かれ、その仰々しい扉を開ける。
「あら、もう来たの? ゆっくり来ても良かったのに」
「お久しぶりです。お母さま」
ヴァンジュは玉座の隣に座りながら、私のことを見下している。
王は相も変わらず、何もしゃべらない。
「ええ、元気そうね」
本当にそうおもっているだろうか?
もう、どうでもいいか。
「急で悪いけど、あなたには明日からパルドン公国へ留学してもらうわ」
急に言われたが、私としても好都合だ。
一刻も早くオーレタリアや聖職者から離れたい。
私のせいで死んでほしくない。
もう誰も殺したくないんだ。
「わかりました」
「そう、良かった! もう下がっていいわよ。なるべく早くね。私は呪いにかかりたくないから」
「明日の昼ごろに部屋に騎士を送るわ。説明は騎士から聞いて頂戴ね」
私が同意すると同時に女の目つきと表情が豹変した。
「では、失礼します」
明日で、この檻から出ることができる。
ようやく解放されるんだ。
適当に逃げて
これからは一人で森で生きていこう。
聖職者から教わった。
薬草学と魔法で生きていこう。
一人ならもう誰かを巻き込むことも殺すこともないもだから。
やっぱり、家族も友達も私には難しかったな。
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「良かった、生意気なガキが素直になってくれたようで、」
「しっかり、今日の夜も食事に
「承知いたしました。ヴァンジュ様」
侍女にしっかりとそう言い聞かせる。
一年前のあの日から、あいつの目が気に入らなかった。
だから、あの薬を使った。
悪夢を見せ人を食らう魔物、
そのおかげであのガキの衰弱した姿を見ることができた。
でも今日が最初で最後の奴の姿だ。
「あした、出発してから二時間後ほどで殺せ」
誰にも聞こえないほどの小声で雇った暗殺者に話す。
すると耳元でかすかに
「承知しました」
と言う声が聞こえた。
大金を払ったんだ。
失敗は許さない
あの呪いのガキを事故に見せかけて殺す。
じゃあな
カルラちゃん。
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「どうして、何にも相談してくださらなかったんですか?!」
「…ごめん」
「ごめんじゃありません。 私は理由が知りたいんです」
朝起きて、朝食を食べているとオーレタリアと聖職者が部屋に押しかけてきた。
二人の顔色は相変わらず悪そうで歩くのもやっとのようだ。
「まぁ、待て何かわけがあるんだろ姫様、そうだよな」
「一緒に行くんだろ」
「一緒に行くって言ったじゃありませんか」
「一人では行かせられません」
「「姫様!!」」
「もういいよ!! 二人とも、私が原因なの。 二人の体調がどんどん悪くなってい
って、見てられない。もうついてこないで」
へたり込み、うずくまる。
「なんでですか? まだ分かりません」
「そうだ、そんなのただの噂話だ。 あんたが信じてどうするんだ」
「もう、いいの…あっちへ行かせて」
護衛の騎士にそう呼びかける。
「承知いたしました」
騎士たちがオーレタリアと聖職者を治療室へ連れていく。
「おい、触れるな! 姫様、姫様!! 待ってくれ!」
「おい! 暴れるな!」
「姫様行かないでください。 私も一緒に行きます! おいていかないでください。」
扉が閉まり、次第に
二人の声は聞こえなくなっていく、
私は立ち上がり、荷物を詰めたカバンを持つ
「ごめんね、今までありがとう」
行こう誰もいない場所へ、一人で生きていけるところへ
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