第六話 呪いの進行と地獄の始まり


別にあのゴミたちを灰にしたことに後悔しているわけではない。

なぜなら、私にとっては人間じゃなかったし、私の大切な人を傷つけるものなんて

この世に必要無かった。



しかし、事実彼女らにも家族はいたのだろう。

彼女らを愛していた者たちもいるのだろう。

それらは揺るぎない残酷な現実だ。


だからこそ私もオーレタリアや聖職者に恐れられる覚悟も嫌われる覚悟もしてきた。



それなのになぜ、彼らは私のことを抱きしめているのだろうか。

どうして二人とも泣いているのだろうか?


そしてなぜ私もつられて涙が出るのだろうか?


私にはわからない。



あれからはいつもの日々が帰ってきた。

オーレタリアをいじめていた侍女たちの件に関しては、王家の者専属の侍女や護衛は王家の者の次に扱いを良くしなければならないという謎の法律により、今回は不問とされた。


あれからいつもの日々と言ったが、私としては正直今まで通りに接してもいいのだろうか。という自責の念に押しつぶされそうだった。


「あれは、私が悪かったんですよ」


「ああ、姫様が気にすることないさ」


異世界と言うこともあるのかもしれないが、あの侍女を殺してしまったことに対してそこまで、彼らはあまり忌避感を感じていないようだ。


さらに、残念ながら恐れていたことが起きてしまった。

やはり一度目は幸運が幸運だったのか、遂に呪いのデメリットが顔を出し始めた。

目の周りの痣が拡大し始めたのだ。

今のところ被害はないし、このまま様子を見る予定だ。


「だから、早く呪いを治して、今度は三人で中庭に行きましょう」


「どっかの誰かをいじめる奴らは姫様が退治してくれたしな」


「そうですよ。本当に助けてくださってありがとうございました」


「うん、またいじめられた言ってね。今度は言葉で辞めさせるから」


でも、みんなと一緒ならいつかまたあの生活を取り戻せるのかもしれない。

今度は明るい気持ちで薬草を見に行きたいな。



「は?」


「何を言っているの?」


「どうして、あなたみたいなクズがのうのうと生きて」


「「「私たちが死ななくちゃいけないの?」」」


「ねぇ、どうして?」





「どうして堂氏テどうして童してどうしてど丑てどうして?、導子てど    う   死   手?」





ベッドから飛び起きる。寝巻は汗で、ずぶぬれになっていた。

どうやら、悪夢だった。

最近は夢と現実の区別がつきにくいほど

悪夢にうなされている。


「やっぱり、きついな」


しかし、私はこれに耐えなくては行けない。

それが彼女らに対する追悼なのだから。




_____________________


あの出来事から、程ないころ

問題が起きた。


ある日を堺に、急に痣が痛むようになった。


「どうしましたか?!」


「うぅ、痛むんだ」


その時は数秒で痛みが治まったが、日を追うごとに痛みと時間は増していった。

聖職者がどうにかしようとしてくれたがどれも効果はなかった。

私が痛みに喘いでいた時に音信不通だったあの女たちからお呼びの声がかかった。



「久しぶりねカルラ」


ることが久しぶりに見た、女の顔には私への憎しみの表情が浮かんでいて目の敵にしていることが丸わかりだった。


よほど、あの炎が堪えたらしい。


「母様、お初にお目にかかります」


もちろん覚えているが、あの時の黒炎が故意だと知られないよう、初めて会ったふりをする。


「初対面で悪いのだけれど、あなたには二年後に隣国のパルドン公国へ留学に行ってもらうわ」


パルドン公国、私たちの国、アラルニコス王国から東へ進むと広がる国土を表土に囲まれた国だ。我々の国とは違い、まだ小国だが高い鍛冶の技術を持つドワーフを主にする国だ。


「訳を聞いても?」


「他国との外交とあなたの成長を見越してよ」


半分嘘ね、もしも本当に私の成長を望むのならば南の大国イクシオン王国に留学をさせるだろう。

なにしろイクシオン王国はダンジョンに恵まれた魔術や魔道具、魔法の最先端を走る国なのだから。


「謹んでお受けいたします」


「では失礼いたします」


「ええ、励むのよ」


二年後のことを今から伝えるということはこれから、奴らに呼び出されることはおそらくないだろう。

今は留学のことよりも、呪いについて考えないと


________________



痣が痛む以外に被害が出ていなかった呪いだが、どうやらあれはほんの第一段階に過ぎなかったようで、私は倦怠感と頭痛、激しい痣の痛みに苦しんでいた。


「まずいな、」


聖職者やオーレタリアにはここ最近、迷惑をかけてしまっている。

特にオーレタリアは、夜中までずっと看病をしてくれていて、自分もあまり寝ていないようだ。


聖職者が用意してくれた薬草やかけてくれた回復魔法も、あまり効果はなかった。


「ごめんね、迷惑かけて」


「何言っているんですか? もしそう思うのでしたら早く元気になってくださいね」


「わかった。善処するわ」


しかし、その思いとは裏腹に4歳になるころには呪いの代償はさらに重くのしかかっていた。



もう、長い間立っていることも出来なくなり、一日の多くをベッドで過ごした。

苦痛はさらに耐えがたいものとなり、何もできない無力感はさらに私を追い詰めた。悪夢と呪いに苛まれる。

その日々に私はついに


「楽になりたい」



そう願ってしまった。

そう、これが本当の呪いの始まりだった。


翌日、信じられないほどに体の調子がいい。

オーレタリアも聖職者も私の回復に喜んでくれた。


またその翌日、今日は三人で中庭に薬草を見に行くことにした。

前回は邪魔が入ってしまったが、今回は薬草の効能や危険性、取り扱い方法など多岐に渡る知識を教えてもらった。

このアラルニコス王国はかなり寒く、俗にいう雪国と言うやつだった。

昼食も外で食べ、少しの間この時間を楽しんだ。

また、いけたらいいな。


しかし、次の日なぜかオーレタリアの顔が青く、途中で休むように言っておいた、今まで休んだことなんて一回もなかったのに、今まで私が迷惑をかけてきた分、少しくらいは私も支えていきたいと思う。




つづいて、聖職者も体調を崩した。

本人は大したこの無いと言っていたがかなり具合が悪そうだった。

理由は何だろうか、この世界にも疫病や風邪なんかが流行っているのだろうか。


まぁ、パルドン公国に行くまでは一年ほどある。

みんなでいけたのならそれ以上に幸せなことはないだろう。

そう考えると少し楽しみにすらなってきたぞ。

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