第39話「運命の最終競技!」

​シャベリン「続いてはスピード王決定戦第二弾! 200メートル走決勝です! 会場のボルテージも最高潮のまま、次なるドラマを待ち望んでいます!」


​ミチオ「100メートルとは異なり、カーブからの加速やスピードの維持も重要になってくる競技です。単純な直線速度だけでなく、より高い技術と総合力が試されますよ」


​シャベリン「なるほど! それでは決勝に残った、魔物界の韋駄天いだてんたちを改めてご紹介いたしましょう!」

​「第一レーン 炎のごとき情熱でトラックを駆ける! フレイムサラマンダー選手!」


「第二レーン ケンタウロスの友達! ミノタウロス選手!」


「第三レーン 100メートルとの二冠にかんなるか!? キュートな九尾のコン選手!」


「第四レーン 神出鬼没しんしゅつきぼつのトリックスター! フェアリーウルフ選手!」


「第五レーン 200も出れます! マンドラゴラ選手!」


「第六レーン 砂塵さじんを巻き上げ突き進む巨体! デザートゴーレム選手!」


「第七レーン 100メートルのリベンジなるか!? 逆襲ぎゃくしゅうのカマイタチ! イタゾウ選手!」


「最終第八レーンは、空中を滑空かっくうする翼の王者! グリフォン選手ーっ!」


​ミチオ「各選手、集中した良い表情ですね。場内を包むような歓声が響いています」




​シャベリン「さぁ各選手、位置について……。場内に緊張が走ります……そして、今! スタートが切られましたーっ! さぁ最初に抜け出すのは誰だっ!?」


​ミチオ「おお、グリフォン選手が良いスタートを切りましたね。空中を滑るような走りです。このままスピードにのれるか?」


​シャベリン「そしてイタゾウ選手とコン選手もやはり強い! グリフォン選手と三つどもえの先頭争い! さぁカーブを終えて直線に入ったところで先頭は……イタゾウ選手です!」


​ミチオ「イタゾウ選手、素晴らしい加速です。しかしコン選手もねばり強くその差を詰めていますよ」


​シャベリン「直線に入り抜け出したのはやはりコン選手とイタゾウ選手! 二人の一騎いっき打ちだ! 互いに一歩もゆずりません!」


​ミチオ「ものすごいスピードです。どちらも最後の力を振りしぼっている」


​シャベリン「コン選手が猛烈もうれつに追い上げるが……イタゾウ選手もゆずらない! そして勢いそのまま……ゴーーールッ! 200メートルを制したのはカマイタチのイタゾウ選手だーっ! 見事リベンジを果たしました!」


​ミチオ「イタゾウ選手、100メートルからギアを上げてきましたね。執念しゅうねんを感じる走りでした」


​シャベリン「最後まで加速し続けましたね! 優勝タイムは脅威きょういの8秒91! とんでもない記録ですねミチオさん!?」


ミチオ「8秒台ですか。これは素晴らしい魔物新記録が生まれましたね」



​◇


​シャベリン「さぁお祭り騒ぎの会場はいよいよ最終競技へと移ります! フィナーレをかざるのは4×100メートルリレーです! ミチオさん、注目チームはどこでしょうか!?」


​ミチオ「やはりチームマオでしょうね。ゴブオ、イタゾウ、コンという100と200メートルの決勝出場者が3名も入っていますからね」


​シャベリン「なるほど、そしてアンカーを務めるのは、大会考案者でもある冒険者マオ選手! 唯一の魔物以外からの参加者ですね!」


ミチオ「はい。『自信はないけど、せっかくなので皆と楽しんでがんばります』とのコメントをいただきました。参加することに意義がある、という姿勢が素晴らしいですね」


​シャベリン「最初の3人が作ったリードをマオ選手が守り切れるか? 注目ですね! さらにミチオさん、現役魔王のリリスヴェル氏もこのリレーに参加するそうですね!?」


ミチオ「はい。リリスヴェル氏はアンカーを務めるようですね。現役の魔王さまですから、きっと素晴らしい走りを見せてくれるはずです」


​シャベリン「いやー楽しみですね! 会場の期待感も最高潮さいこうちょうに達しています! さぁいよいよ各選手位置につきますよーっ!」









◇◆◇


​ グラウンドに立つ僕の耳に、魔物たちの咆哮ほうこうと歓声が地鳴じなりのように響いてくる。肌で感じる熱気ねっきが、この場の興奮こうふんすさまじさを物語っていた。


 思いつきで言った「陸上大会」が、まさかここまで盛り上がるとは……想像以上だった。


(でも……勇気を出して言って良かったな。みんなすごく楽しそうだ)


​ そして最終競技であるリレーのアンカーを僕がつとめることになった。

 コンとゴブオとイタゾウが、「マオも一緒に走ろうよ!」と屈託くったくのない笑顔で誘ってくれたのだ。


 まさか僕がこんなに大きな舞台で、こんな大歓声の中で走ることになるなんて。


(……自信はないけど、皆がつないでくれるバトンだ。せっかくだから思いっきり楽しんで走ろう!)


​ その時、ふと隣に立っていた魔王のリリスヴェルが僕の顔をのぞき込んで言った。


​「マオよ。このようなにぎやかな祭りはわらわも初めてじゃ。よくやったぞ」

「は、はい。ありがとうございます」


 彼女はとても楽しげに、大盛りあがりの観客席を見渡している。


わらわはな……魔物たちが楽しそうにしているところを見るのが好きなのじゃ」

「そうなんですね」


​ まるで我が子を見つめるかのような優しい表情でそう言ったリリスヴェル。そしてその目が急にするどくなった。


「だからこそ、魔物を見境みさかいなく襲ってくる冒険者共がにくくて仕方ない。大っ嫌いなんじゃ」

「な、なるほど……」


(こ、こわい……。だけどきっと、根は優しい人なんだな、この魔王さま)


わらわは闘いこそが、魔物の笑顔につながる道だと信じておった。……しかし闘わずして、こうやって皆で笑顔になれる方法もあるのだな」

「リリスヴェルさん……」


 そしてリリスヴェルは、僕の目を真っ直ぐに見て言った。


「改めて礼を言おう。……ありがとうな、マオよ」

「いえ……! とんでもないです!」 


 そしてリリスヴェルはニヤリと笑って言った。


​「しかしこのリレーに関しては、わらわも魔王として負けるわけにはいかんぞ? 其方そなたには悪いが、全力でいかせてもらう」


​ 一転、深紅しんくの瞳に勝負師の光が宿やどる。その言葉には、本気の闘志とうしが込められていた。


​「……はいっ! 僕も、がんばります!」


​ 僕も背筋を伸ばし、力強く答えた。僕の胸にも静かな闘志が湧き上がってくる。


(ようし、がんばるぞ!!)









​◇◆◇


​シャベリン「さぁいよいよ4×100メートルリレーが始まります! 各チーム準備完了しました! 会場の熱気は最高潮さいこうちょう、誰もが歴史的なレースの結末に注目しています!」


ミチオ「見届けましょう」


​シャベリン「……さぁ今、スタートのピストルが鳴り響いたーっ! 一斉に各選手が飛び出します! おっと良いスタートを切ったのはチームマオのゴブオ選手だっ!」


ミチオ「やはり素晴らしい反応ですね。100メートル決勝で見せたスタートは健在けんざいです」


​シャベリン「ゴブオ選手、他チームの選手をみるみるうちに引き離していきます! そして大きなリードのまま第二走者のイタゾウ選手へバトンが渡ったっ!」


ミチオ「完璧なバトンパスですね。チームワークも素晴らしい」


​シャベリン「イタゾウ選手もグングン加速! 200メートル決勝を制したスピードは伊達だてじゃない! 風のような走りでリードを広げていく! 独走態勢どくそうたいせいだ!」


ミチオ「後続のチームも必死ですが、チームマオとの差は開く一方ですね」


​シャベリン「そして第三走者は九尾のコン選手だーっ! もはや誰にも止められない! チームマオが圧倒的な速さで他チームを引き離していきます!」









◇◆◇


​(やっぱりみんなすごい……! いよいよ僕の番だ!)


​ ものすごい速さで走ってきたコンが力強く叫ぶ。


​「マオっ! 任せたよっ!!」


​ そう言ってコンがくわえたバトンが僕の手に吸い付くように渡された。


 会場全体からまるで世界が震えているかのような大歓声が聞こえる。


​(よしいくぞっ!)


​ 僕はバトンを握りしめ、ゴール目掛めがけて全力で駆け出す。


 一歩二歩、地面を蹴るたびに想像を絶するようなスピードが体中を駆け巡る。


​(うわっ、すごいスピードだ……!)


​ 想像以上のスピードに自分で驚く。レベルアップを重ねたことで僕のステータスもとんでもなく上がっているようだ。


​(これならいけるかも? みんなが作ってくれたリードを、僕がゴールまで運ぶんだ!)









◇◆◇


​シャベリン「おっとマオ選手も中々速いぞ! 2位との差は依然いぜんとして大きい! これはチームマオの優勝で決まりかっ!?」


​ミチオ「いえまだ分かりませんよ。バトンを待つリリスヴェル選手が力を貯め始めました。その身にまるでやみ凝縮ぎょうしゅくしたかのような黒いオーラをまとい始めています」


​シャベリン「あっ、ホントだ! リリスヴェル選手が黒いオーラを巻き上げながらバトンを待っています! ものすごいオーラ、ものすごい圧力です!」


​ミチオ「バトンを受け取った瞬間にオーラを一気に放出する気でしょう。とてつもない速度を予感させます!」










◇◆◇


​ 僕の後ろには、誰もいない。

 断トツのトップ。あとはこのままゴールへ飛び込むだけだ。


 ゴールラインが目の前に迫る。


 あと数メートル。


​(やった、勝てる!)


​ そう確信しながらゴールに飛び込んだのと──ほぼ同時。


 僕の横を、一瞬の黒い閃光が走り抜けた。


​(えっ、なんだっ!?)


​ あまりの速さに何が起きたのか、視覚が追いつかなかった。僕の目には、ただ黒い光の残像しか映らなかった。









◇◆◇


​シャベリン「こ、これは……とんでもないことが起きましたっ! 断トツのリードでゴールまであと数メートルまで迫ったマオ選手! その時に遥か後方でバトンを受け取ったリリスヴェル選手が、まさに爆発したかのようなスピードで一気にゴールまでたどり着きましたっ!!」


​ミチオ「ゴールのタイミングは、ほぼ同時に見えましたね。これは肉眼では判別不可能。ビデオ判定になる模様です」


​シャベリン「なんということでしょう! これが現役の魔王の実力だぁぁぁっ! 恐るべし、リリスヴェル選手!!」


ミチオ「ええ、とんでもないスピードでしたね……」


​シャベリン「さぁビデオ判定です! 賢者ソロモンが冒険者の街から調達してきた超大型モニターを会場の誰もが固唾かたずを飲んで見守っています! 栄えある第一回リレーの優勝は、一体どちらだっ!?」






――――――――――――――――――――――――――――


あとがき


Q.100m走やったのに、200m走も書く必要はあったのですか?

A.ギアを上げたが書きたすぎた。200mは絶対に必要だった(2025世界陸上200mのライルズが好きすぎる)。


……などと供述している模様。次回決着です!

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