振り返れば

振り返れば、すべては善意から始まっていた。


多様性を大切にしようとしていた。

個人の自由を尊重しようとしていた。

社会を効率化しようとしていた。

安全を確保しようとしていた。

危機に対応しようとしていた。

世界と協力しようとしていた。

経済を成長させようとしていた。


誰も悪人ではなかった。

誰もが理想を叶えようとしていた。


しかし、それぞれの善意と理想が積み重なったとき、予想もしなかった結果が生まれた。


多様性は分裂を生んだ。

自由は責任の放棄を生んだ。

効率化は人間性の喪失を生んだ。

安全は監視を生んだ。

危機対応は権力の集中を生んだ。

国際協力は主権の放棄を生んだ。

経済成長は格差の拡大を生んだ。


そして、これらすべてが企業の支配を可能にした。


企業に罪はなかった。

彼らは単に、与えられた条件の中で最も合理的に行動しただけだった。


国家が弱体化すれば、企業がその機能を代替する。

人々が個人主義に走れば、企業が新しい共同体になる。

政府が信頼を失えば、企業が新しい権威になる。


それは自然な流れだった。

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