第二章 灼熱の想い
『ガキの頃から、ずっと考えている事がある。
何故、俺は、生まれてきたのだろう?
生まれてきた意味なんてあるのだろうか?
これから先、生きていく意味さえも……。
母親は、16の時に俺を産んだ。
父親は、何処の誰かも分からない。
寂しさで好きでもない行きずりの男と寝て、それで俺が出来たというわけさ。
母親は、経済的にも育てる自信もなく、ずっと子供に恵まれなかった姉夫婦に、俺を預けて、行方をくらませた。
姉夫婦は、とても優しかった。
だが、俺が5歳の時に、妊娠して自分達の血の繋がった子供が出来ると、俺に冷たくあたった。
それでも、まだガキの俺には、どうする事も出来ずに、姉夫婦の世話になっていた。
13の冬に耐えられなくなり、家を飛び出した。
行くあてなどない。
それでも、もう姉夫婦の元にいるのは辛かった。
実の親からも、育ての親からも愛されなかった俺。
俺は、ずっと、愛を知らずに育った。
人を信じる事も、頼る事も、全てが面倒臭いと思え、俺は、落ちる所まで落ちていった。
酒、煙草、女……悪い事は何でもやってきた。
そんな俺を拾ってくれたのが、橘プロダクションの社長、橘 慎太郎(たちばな しんたろう)の一人息子の真人だった。
ーお前、芸能界に興味無い?お前、背高いし、顔もイケてるし…どうよ?ー
芸能界に興味があったわけじゃない。
何の躊躇いもなく、俺に話し掛けてくれた真人が、何故だか信じられると感じた。
それから、俺は、芸能界で働くようになった。
モデルや俳優…どれをやっても、パッとしなくて、ダラダラと、無駄に時が流れていった。
15になって、初めてアーティストとして、歌を出した。
それがヒットして、俺は、そこそこの有名人。
気だるい歌声が魅力だなんて言われて…まぁ、その通り、俺のやる気の無さが、そのまま歌に出てたってだけで、俺の歌が評価されたわけじゃない。
そんな、やる気のない奴の人気なんて、続くわけもなく、俺は、今、モデルと歌手…そして、学生をしている。
全く、くだらない人生だ。
いや、俺自身がくだらない人間なんだ。
そんな中、あの人と出会った。
そして、生まれて初めての感情に、俺自身も戸惑いながらも、あの人に惹かれていく自分がいた。
この感情が何なのか、俺には、分からない。
分からないけど……。
あの人の側にいたい。
あの人を守りたい。
あの人に……触れたい。
その感情だけが、俺の胸を押し潰しそうだ。
他の誰かに、何と思われてもいい。
世界中の奴等が敵になったって構わない。
だけど、あの人にだけは……。
嫌われたくない。
だから、このモヤモヤとした感情が、もしも……。』
この感情は……殺してしまおう。
あの人に知られる前に……。
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