第一章 灼熱の出会い




『恋した時の気持ちじゃない?』


真人の言葉が頭の中をグルグルと回る。


学生服姿のまま、冬夜は、街をあてもなく歩いていた。


『恋……?恋って、何だ?俺は、今まで、誰にも恋をした事がない。何をしても、どんなに、いい女を抱いても、こんな気持ちにはならなかった。』


午後4時。


太陽は、まだ照りつけるように、暑い日差しを放つ。


汗を拭いながら、通り過ぎてゆく人々。


誰も、自分に興味なんて無い。


『煌びやかな衣装に、派手なメイク……。そうやってないと、誰も、俺になんて興味無いし、誰も振り向かない。俺だって、同じ……誰にも、興味が無い。』


フッと、冬夜の足が止まる。


『なのに……何なんだ?この感情は……?何時もと変わらない学校なのに、何時もと変わらない、くだらない時間だったのに…どうして、あいつの事が気になるんだ?!』


首筋を流れる汗をグッと脱ぐうと、冬夜は、フッと笑う。


『バカげてる。でも、もう関係ない。あれは、一時の迷いだ。この夏の暑さに、どうかしてただけだ。そうさ……でないと……。』



ー俺は、狂っている……!!ー





同じ男の事が、こんなに気になる事はない。





そうだ。


あいつは、男なんだ。




俺と同じ男なんだ。




「だけど、もう関係ない。もう会わなければいいんだから。」


冬夜は、独り言のように呟き、再び歩き出す。

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