第6話いんしょくぎるど
詰めた詰めた。
目測誤ってそもそも皮から肉出ちゃってるじゃんっていう手作りの餃子くらい中身を詰めた。
概要は以下の通りである。
・飲食ギルドでは、街における飲食関連業の「衛生管理および各種支援」を担っている。その一環として開業相談や行政および他ギルドとの連携企画も行なっている。
・行政では、飲食関連業の「営業許可」の審査決定のみを担っており、大部分の運営管理は飲食ギルドへと委託されている。
・飲食ギルドとして運営の管理している区画はノードと仲見世通り(シュートと呼ぶらしい)、そして裏路地にあるグリッド(苗床、いやな名称ではある)という区画
・その他で、街で見かける屋台や飲食店はギルドの管理管轄外はあり、行政の「営業許可」と併せて、ギルドではなくそこの建物や土地の所有者の認可がいる。
・飲食業は雇用の受け皿でもあるし、ギルドとしても新規参入を歓迎しているため、支援を行なっている。
・内容としては、屋台運営ではあるがグリッド区画での新規出店を支援しており、条件を満たせば入れ替えの形でシュート区画での出店に繋げられるようにしている。
・だから熱意があるなら、もちろん事業計画の提出は必要だが、非認可の屋台でなくグリッドから始めろ。それが絶対いい。
・だからまず行政支部で「営業許可」とってこい。
・「営業許可」は、金貨一枚。
・…………
・……え?
・ないの??
・その喋り方で無いの!?…マジか?
・マジかお前…
・またぜひいらしてくださいね
受け付けてくれていたヒゲの態度が気に食わないが、当面の目標は見えた。
助けてルークえもんー!!
家に着くとすでにルークは出たあとだった。机の上に大銀貨1枚。ありがたや。…言えねえわ。いやちゃんと言うし今日はもう金使わねえし考えが甘かったのもあるけど金貨1枚はでけえなあ、と思いながら炒めた米をパクつく。まあそもそもそんな至れり尽くせりだとは思ってなかったし、明日からすぐ出来ますよ!の方がこっちになんの準備もなくどうにもならないし、思考がぐるぐるしてうまくまとまらない。。。
……
「ちんちくりん」
「へあ!?」
いつの間にか寝てたのだが、起きたらこけしがいてディスられてる。なんぞこれ。
「保護者の顔を見に来た」
「えーっと、こちら『リュシオル』のシノさん。もっと奥に行くつもりだったんだけどなんか先にうちに来るって言って聞かなくて…」
苦笑するルークと態度のでかい無表情の黒髪ボブ。顔、整いすぎ。やっぱこけしの化身だろこいつ。
「はぁ、まあいらっしゃい……?んで、なんの用向きで?」
「ルークはうちのパーティに入るべき。だけど全然いい返事をくれない。だから保護者に会いに来た。ちんちくりん」
おーけい、俺もいい大人(精神年齢上は)だから怒るなどは無いが、家の防犯、とくに除霊関係については見直す必要がなさそうなのは幸いだ。
「だから僕、作ってもらったごはんを家で食べるのが習慣なんだって言ってるじゃないですか」
「そ。まあ、加入自体はそこまで期待はしていない。判断は自由、それが
「そもそも女性5人のパーティに僕が加入ってなるとちょっと……」
「それは問題ない。普段はスカートを履いているわけでもないし、可愛い下着も一緒に探す」
話が怪しくなってきたところで助け舟。
「ならシノさんは、今日は俺に何を?」
ぐるぅりと首だけで振り向いてこけしは言い切る。
「ルークがレストラン出すっていうから見にきたら何にもない、ちんちくりんは嘘つきだ」
……かっちーん
「ご馳走様。店長はなかなかやる」
「ごめんね、コトウ。ちょっと休憩したら今度こそちゃんと潜りに行くから」
すっかり掌を返したこけしはさておき、ちょうどいいタイミングかと登録料について打ち明ける。
「まあ高いけど……とりあえず潜ればなんとかなるかな」
「悪いな、としか言えねえけど。絶対返すから乗ってくれ」
「あはは、返されたいわけじゃないし、決めたことだから、やるよ」
「足りねえもんもまだ多いんだ、負担をかけるが」
「“共同経営者”なんでしょ?きっとそういうものなら、そうなんだよ」
「わりーな本当に、道筋は見えてっから」
「わたしは氷菓があるといいと思う」
「オメーは黙ってろ」
とりあえず、ルークはどっかでダメな女に騙されるんではなかろうか。俺がそうでは断じてないが。だよね?
マジで灰色の色付きだったこけしとルークを見送り、グリッドの下見に向かう。多分あの暖簾とかしまってある屋台のところが割り当てられるんだろうなあ。大っぴらというわけでもないが、「ビギナーズ・グリッド」と銘打たれた宣伝看板もあるし、立地は望外のもの。仲見世(ちゃんとこれからはシュートと呼ぼう)から2本ほど裏路地に入った先、昼時だとしてもいっそうの賑わいを感じられる。野外ではあるが椅子やテーブルも置いてある。思ったより「まとも」だ。
なんでかずっと料理が好きだった。
残ってる「俺」の記憶だ。
祖母は俺を女の子に育てたかったらしくずっと台所に立たせられていたせいかもしれない。
教育熱心な両親の信頼を外すのが怖くて、それなりに堅い進路を選び、大人になった。
だけどアルバイトはいつも飲食業だった。
料理を本業にしたいとは言えなかった。
業務でいう体力には自信があった。
技術が増えるのも嬉しかった。
自分のお店を持ちたいと強く思うこともあったし、できる自信もあった。
だから、意を決して、再就職というかたちでようやく料理の世界に飛び込んだ。
そして俺が住んでいた世界を、未曾有の病原菌が襲った。
そして、何事もなかったかのように終焉した。
収支が何もかも変わってしまった。
前まで来てた人が来なくなった。
前までできてたことが出来なくなった。
前まで買えてたものが買えなくなった。
競争、といえばそれまで。
個人の店を経営していた友人の中には、行方が知れなくなった者もいた。
お店を開かなくて良かった、とも思うなどした。
そして今、
たぶん、
やっぱり、
ここで飯屋をやるしか俺は俺に納得できない。
この生なら。ここでしか。
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