第167話 「沈黙の理論 ― 戦うように語る」

― コラボの余韻


 格ゲーコラボ配信の翌日。

 LIVESTARの公式チャンネルには、“アリアの間合い”というタグが急上昇していた。


【SNSトレンド】

#格ゲー界の哲学者

#間合い理論

#アリア先生


紗南:「昨日のコラボ、すごかったね。

 気づけば全員があなたのプレイを見てた。」


 アリアは笑って首を振る。

「いえ、皆さんの動きが上手くて、私も勉強になりました。」


 だが心の奥では――静かに熱が灯っていた。


(次は、もっと深く“魅せたい”。)


― 解説付き配信、開始


「こんばんは。夜宵アリアです。

 今日は前回話した“読み”の考え方を、実戦を交えてお見せします。」


【コメント欄】

リスナーA:また格ゲー!?今度は一人!?

リスナーB:前回の理論回の続ききた!

リスナーC:ついに“アリア流”解説配信w


 カメラの前でアリアはマイクに手を添える。

 その声には、昨日よりも確かな芯があった。


「私が一番大事にしてるのは、“読む”こと。

 見てから動くんじゃ遅い。

 ――流れを感じて、先に“置く”んです。」


― 開幕の一撃


【マッチング表示】

対戦相手:RYU☆TENSEI(最高ランク・16連勝中)


アリア:「強そう……でも、ちょうどいい教材です。」


 開始3秒。

 相手の小技を呼吸で読み取り、瞬時に差し返す。


【HPゲージ】

RYU☆TENSEI:■■□□□□□□□□

アリア:■■■■■■■■■■■■


「焦ってる人は“間”が短くなる。

 だから私は、その隙を待ちます。」


紗南(裏で視聴中):「……本当に教えてるのか戦ってるのか分からないわね。」


【コメント欄】

視聴A:説明しながら反応してんの草

視聴B:理論と実技の両立www

視聴C:もう格ゲー講師でいい


K.O.


― 上位帯の罠


【マッチング表示】

対戦相手:LEON(大会常連プレイヤー)


アリア:「大会勢……少し緊張しますね。」

紗南(視聴中):「いや、あなたのほうが怖いわよ。」


 静かな間合い。

 アリアは攻めず、相手の焦りを待つ。

 そして一瞬――飛び込んだ攻撃を完璧に差し返す。


【HPゲージ】

LEON:■■□□□□□□□□□□

アリア:■■■■■■■■■■■■


「“間”を制するのは、速さじゃなくて冷静さです。」


【コメント欄】

リスナーA:沈黙で相手が崩れるの草

リスナーB:この人だけ違うゲームしてるw

リスナーC:静寂=最強理論


 二ラウンド目、アリアはあえて一撃を相殺し、受ける。

 相手のリズムを崩し、完璧なカウンター。


アリア:「戦いを終わらせる時は、必ず“美しく”。」


【HPゲージ】

LEON:□□□□□□□□□□□□□

アリア:■■■■■■■■■■■■□


紗南:「ほんとに……怖いくらい完璧。」


― 終幕 ― “沈黙の理論”


 配信を終えたあと、モニターに反射する光が淡く揺れていた。


「焦らず、動かず、ただ流れを読む。

 戦いの中にも、静けさはある――

 それが、私の理論です。」


【コメント欄】

リスナーA:格ゲー哲学者ここに爆誕w

リスナーB:アリアさんの配信、落ち着くのに燃える

リスナーC:#沈黙理論 トレンド入り確定


 アリアはマイクの前で小さく微笑む。


「――今日も、ありがとうございました。」


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