第60話「舞台の主導権争い ― 歌と沈黙の攻防」

【システムログ】

《試合時間:4:00 → 6:00》

《無言姫HP:87%》

《オリヴィアHP:91%》


二つの舞台


「♪──La la la……」

 オリヴィアの歌声が再び響く。

 それは光を帯びた旋律。

 観客席は彼女の声に合わせ、手拍子を打ち始める。


 一方、私は言葉を発さない。

 ただ剣と盾の一撃を観客に見せる。

 無言の存在感が、空気を震わせていく。


(……どちらが舞台を支配するか)


リズムの取り合い


 オリヴィアが旋律に合わせて剣を振り下ろす。

 私はそのリズムをなぞり――最後だけ半拍ずらす。


「っ……!」

 彼女の声がわずかに乱れる。


【システムログ】

《オリヴィアHP:91% → 84%》


 観客の一部が息を呑み、ざわめいた。


【コメント欄】

視聴A:無言姫の一撃で歌が乱れた!

視聴B:舞台のテンポが奪われてる!?

古参:今、観客のリズムが二つに割れてる……!


観客の心が揺れる


 オリヴィアの歌に合わせて手を叩く者。

 無言姫の一撃に歓声を上げる者。

 観客席が「二つの舞台」に裂かれていく。


「沈黙で人の心を掴むなんて……そんなの認めない!」

 オリヴィアの声が震え、歌が荒くなる。


 私は無言で剣を構え直す。

 観客の視線が、徐々にこちらへ傾いていくのを感じながら。


攻防の極み


 歌と沈黙、光と影。

 ぶつかるたびに観客の歓声が揺れ動き、会場は熱狂の渦に包まれる。


【システムログ】

《無言姫HP:87% → 74%》

《オリヴィアHP:84% → 70%》


 互いに削り合い、主導権はまだ決まらない。


(……この戦いはただの勝敗じゃない。

 舞台を支配するのは、どちらか一人だけだ)

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