第7話「国内大会参戦」

【ステータスログ】

◆ 所持ポイント:7pt

◆ 本日の配分:持久力+1

◆ ボーナス獲得:ミッション「FPS10連勝」+2pt

◆ 現在の主な成長:反射神経Lv2/動体視力Lv1/集中力Lv2/空間認識Lv1/持久力Lv1


 画面に「国内大会エントリー完了」の文字が浮かぶ。

 参加条件は、直近ランク戦の勝率と認定ポイント。私は当然、余裕で突破していた。


(撃ち合いは問題ない。あとは、大会という場でどこまで戦えるか)


 心臓が高鳴る。けれど恐怖よりも楽しみの方が大きい。

 なにより、私はゲームが好きだから。


「……始めます」


 マイクを切ると同時に、画面には配信のコメント欄が流れ始めた。


【コメント欄】

古参:ついに大会か!!

視聴A:初参戦でどこまでいけるかな

視聴B:正直、優勝候補じゃね?

切り抜き師:伝説の始まりを録画します


予選ラウンド


 試合が始まる。

 最初のマップで、私は足音を聞き、銃声を予測し、敵の動きを読み切った。


(右から来る――)


 ヘッドショット。

 二人目、三人目。

 気づけばチームの勝利は決まっていた。


【コメント欄】

視聴C:味方いらなくて草

視聴D:個人技で勝ち切ってんじゃん

古参:やっぱり撃ち合い最強


 二試合目、三試合目も同じだった。

 私は一人で敵を薙ぎ払い、気づけば予選全勝。

 その時点で「無言姫は決勝確定」という見出しがSNSに並んでいた。


決勝戦


 相手は国内最強チーム。

 有名ストリーマーや元プロで構成された本命。


(……強い。けど、やれる)


 一ラウンド目、私は飛び出してきた敵を3人連続で倒した。

 会場の実況が叫び、コメント欄も爆発する。


【コメント欄】

視聴E:3人抜きwww

視聴F:やっぱり化け物

実況民:このまま優勝か!?


 だが、最後の一人を倒しきれない。

 設置された爆弾を解除され、ラウンドは相手の勝ち。


(……あれだけ倒しても、負ける?)


 二ラウンド目も同じ。

 私は確かに敵を撃ち倒しているのに、自分が孤立し、ラウンドを落とす。


 相手は徹底してカバーを回し、情報を共有していた。

 個人の撃ち合いでは私が勝っても、チーム全体では押し切られる。


【コメント欄】

視聴G:無言姫、強いけど孤立してるな

古参:戦術面で負けてるかも

視聴H:やっぱチーム戦は別物だな


 三ラウンド目、私は必死で仲間をフォローした。

 だが、無言では伝わらない。

 タイマー管理も、人数差の調整も、相手が一枚上手。


 最終ラウンド。私は最後の敵を目前まで追い詰めた。

 それでも――爆弾解除の音が聞こえた瞬間、敗北の文字が表示された。


【掲示板:無言姫FPS総合#5】

1:準優勝だったな

4:撃ち合いは完全に無言姫が勝ってた

9:でも戦術で負けたな。連携不足

16:初参戦で準優勝なら十分だろ


 配信終了前、私はマイクをオンにした。


「……次は、勝つ」


 小さな声に、コメント欄がざわつく。


【コメント欄】

古参:おおお、ついに決意表明きた

視聴I:無言姫、燃えてる

切り抜き師:名言入りました


 悔しさが胸に残る。

 でも同時に、私の中に新しい火が灯った。


(反射神経だけじゃない。次は“戦術理解”だ)


 そう決めて、配信を切った。

 準優勝。悔しいけど、ここからが本当の始まりだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る