なじみへあーず

つん

第1話 ロンゲとおさななじみの入学式

今日は高校の入学式。朝からそわそわと落ち着かない


朝食も食べ終え、身だしなみも整えた。それでも落ち着かずにいると、お母さんから「少しは落ち着いたら」とコーヒーを出された。


ありがとうとコーヒーを飲むと少しは落ち着きを取り戻す。


そうしているとインターホンがなる。玄関を開けると


「ロンゲー、行こうぜ」


と笑いながら幼なじみ達がやってきた。僕たちは髪型をあだ名にして呼びあっている。


生意気そうな顔のイケメンがウルフカットのウルフ。


だるそうな顔をしてる七三のアップバングがシチサン。


かわいい顔だちのくるくる髪の男がパーマ。


パーマの裾を掴んでいるツインテールがパーマの彼女のツインテ。


センター分けのいかにも博士っぽいメガネをかけたのはセンター。


そして髪が肩まである僕がロンゲ。


家族に「いってきまーす」と声をかけ、僕たちは高校へ歩く。



僕たちは家が近所で幼なじみ。


高校からみて西に3キロほどの住宅街に住んでいる。


その道のりを僕たちは歩き始めた。


歩きながらウルフが高校の文化祭でバンドやりたいと目標を語る。ウルフはバンドのギターボーカルになって売れるのが夢だから、その為の第一段だ!と意気込んでいる。


パーマが、じゃあ俺はドラムかな、と話すと、ウルフからおまえ叩けねーじゃんと、突っ込む。


だなー、と笑うと、ツインテが


じゃあ練習して皆で出ようよ!と興奮した様子で、手を胸の前で振りながら話す。ツインテは嬉しい時やワクワクしてるときなどでテンションが上がると手を振る癖がある。


そんな爽やかな会話に入ってこない2人、シチサンとセンターだ。


シチサンは空を眺めながら、

「彼女、高校ではできるかなぁ」とぼやいている。


センターは

「その通りだ!我々は!中学では!全く!モテなかった!」

わなわなと手を震わせる。



それを聞き、パーマが

「お前らならすぐモテるよ」と励ますが


2人は揃って

「慰めはいらん!!」

と怒り、それを聞いたツインテは笑っている。


今度は僕が

「僕も彼女いなかったから気持ち分かるよ」


と話すがシチサンにふくらはぎを蹴られる。


「いて!何すんだよー」


怒って見せるがウルフからもパーマからも


「今のはロンゲが悪い」


といわれてしまう。


と言うのも、僕は中学時代、一度だけ告白されたことがあった。それまでは僕とシチサン、センターはモテない同盟だったが、この一件で同盟を脱退させられた。


ウルフやパーマ、ツインテはモテており、他の学年からもよく告白されていた。それに比べたら僕はまぐれのたった一回。


だからモテない同盟に入れてほしいが、二人が言うには、0と1は全くの別物らしい。


ウルフが

「モテない野郎共は醜い争いしてんな」と笑うとすかさずセンターが襲いかかる。



しかし、ウルフは運動がかなり得意、対するセンターは全く運動ができず、追い付くわけはなかった。ぐぬぬ。と怒りに震えるセンター。


隙を見て掴みかかろうとするシチサンだが、流石は長い付き合い、ウルフはシチサンからも捕まらない距離を維持している。


シチサンは総合格闘技をやっており、捕まったら勝てないのは分かっているのだ。


もっとも、つかまってもじゃれあい程度なので力はかなりやさしめで、さっきの蹴りも実はかなり軽かった。


シチサンは朝にランニング、ジムで筋トレ。夜に格闘技ジムに行くというハードスケジュールを毎日こなしており、常にダルそうなのはそのためだ。



そんな悪ふざけをしながら歩いていると、学校に到着した。



学校の正門を潜ると校舎前にクラスの割り振りが出ていた。僕たちに緊張が走る。


どうか皆同じクラスに、、、


皆で一組から見ていく。





何度も見直すが間違いない



6人皆で顔を見合わせた。



みんな一組だった!


「「「「「「やったーーー!」」」」」」


6人が急にでかい声を出し、同級生であろう周りの生徒は驚いているようだった。皆で恥ずかしながらも嬉しさは隠せず、ツインテなんかは涙ぐんでいた。



まぁセンターは普通に泣いてるけど、、、


センターは人目も気にせず泣きまくり、近くにいたパーマに抱きつき、

「よがっだーー」


と鼻水を垂らしながら抱きつく



パーマが焦り

「おい、鼻水をふけ、制服につく!センター!おいってば!皆!助けてくれ!」


抱きつくのは私だと反対側からパーマ抱きつくのはツインテ。助ける気はないようだ。


にやにやと笑うウルフとシチサン。シチサンは更に

「こんなところにティッシュが、、、いやー、俺ののようなモテない男のティッシュなんて、モテるパーマさんには必要ないかなー」とふざけている。


それを聞き爆笑するウルフ。


いよいよ鼻水が制服に近づいて来たので、僕は持っていたティッシュでセンターの鼻をふき、センターを落ち着かせた。


パーマは危機が去り、シチサンに向かい飛び蹴りをしようとしたが、ツインテが離さなかったため諦める。しかし、復讐は必ず成し遂げるのがかわいい顔したパーマさん。


ツインテの頭を撫で、俺は彼女がいるから見逃してやるよ、と言わんばかりな表情でシチサンを見つめる。


その思惑に気づいたシチサンは顔から精気がなくなり、とても悲しそうな顔をしてトボトボと歩きだした。泣き止んだセンターがシチサンの肩をポンポンと叩き、教室まで一緒に歩く。



その後をしてやったり顔のパーマにとひたすら笑っているウルフ。

やりすぎだよと、少しパーマをしかるツインテが歩く。けど、実際はシチサンが悪いと思う。


みんなの後を追うとパーマが振り返り


「サンキューロンゲ」とにこりとパーマが笑いかけてくる。


僕も笑顔を返し、教室へと向かった。


教室に入ると黒板に席順がかかれている。名前順などではなく、ランダムで決められているように見える。


僕の席は一番窓際の後ろから二番目


席に荷物を置くと、すでに座っていた後ろの席の男子に挨拶する。


「これからよろし」


話し終わる前に、その男子はデカ!と驚いた。


僕は190センチあるから、結構言われることも多い。


「黒板みえな」


黒板見えなかったら先生に言って変えてもらおう、と伝えようとしたが、また話の途中で


「お前でけーな、何センチ?」


言葉を遮られ、少し困惑する。


「190せ」


「聞こえねーよ!」


にやにやしながらバカにしたように笑い、でかい声で話す男子。


戸惑っていると、先生が入ってきて簡単に挨拶をし、説明を始める。


これから入学式を行い、再度教室に戻り、自己紹介と明日の日程を話し、今日は下校になるとのこと。


先生の話が終わり、皆体育館に向かうため立ち上がる。僕も立ち上がると、


「でけーんだから、ちんたらすんなよ!」と背中を叩いていった。



困ったな、と去っていく姿をみていると、まず眉間にシワを寄せたパーマがやってくる。



「大丈夫かロンゲ?」


他の皆も近くにくる。気にすんなよと皆が慰めてくれ、皆で一緒に体育館へ向かった。




無事に入学式は終わった。ボーッとしていたシチサンが名前を呼ばれているのに気付かず、慌ててしまい、返事を『ぴゃい』と言い、笑いが起きた以外は、、、


クラスに戻り、自己紹介が始まった。

順番は窓際の前から


すぐに僕の番が回ってきた。


話し始めようとすると急に後ろの男子が


「僕はでくのぼーさんですぅ、いじめないでくださいー、友達もいないですー」


と話し始めた。先生が注意し、再度僕が話そうとしても


「はいはーい」


とおちゃらけて笑い出す。


それを見た先生は先程よりも強く叱責するがヘラヘラと笑うだけで聞いていない。


そう。こういう人は何を言っても聞き入れない。人の痛みを分からない人たちだから。


僕はそれを痛いほど知ってる。なぜなら僕は小学生の頃にいじめられていたから。


僕は一度だけ、小学五年生の時に皆とクラスが離れてしまい1人になった。



そこで僕はいじめられた。給食にごみを入れられ、シカトされ、物を投げられ、、、



帰り道や休み時間は、おさななじみに会えたから頑張って笑顔を見せた。



でも本当に辛くて、辛くて、辛くて、


いつしか上手く笑えなくなった



そこで皆が気付いてくれた。



俺たちが助けてやると笑ってくれた。



1人じゃないと思えて本当に嬉しかった。




そして彼らは本当に戦ってくれたくれたのだ。




体育の時、グラウンドで土を皆から投げつけられたら、五人が教室から走ってきて戦ってくれた。




給食にごみを入れられたらそのつぎの日からは五人がうちのクラスで給食を食べた。何度先生に連れ戻されても、どうにか来てくれた。



毎日乱闘騒ぎを起こしてくれたお陰で、学校全体に話が広がり、いじめが発覚し、しかるべき対応がとられ、いじめが終わった。その後のクラスもいずらかったけど、それでも僕は喜びが大きかった。



僕は気が弱くて人に強く出ることは出来ない。けど、あのいじめから成長出来たこともある。


後ろの男子と向かい合い、


「大事な友達がいるよ」


逃げてるだけではダメなんだ。


へー、とまだふざけている男子。

「おまえなんかと友達なんて、おまえの友達も気持ち悪いやつらなんだろうな!!」


それを聞いた瞬間、僕は男子の両肩を掴み顔に近づく。


なんだぁ、やんのかこらぁと息巻く男子。


目を見てゆっくりと話す。


「僕の、友達は気持ち悪くなんかない。」


更に力を込めて、伝える。


「僕の友達をバカにするのは許せない、だから、やめてもらえるかな?」


迫力に気圧され男子が頷く。


はっと我に返り周りを見回す


唖然としている生徒達の中で


ウルフ達がこっちを見て笑い親指をたてる。


ツインテは腕をすごい振って興奮していた。




一通りの自己紹介や説明が終わり、帰宅の時間になる。


肩を掴んだことを謝ろうとしたがそそくさと男子は返ってしまった。



皆が僕の席に集まり、良くやったと笑っている。





皆の笑顔を見て、改めて思う。



皆が一緒でよかった、皆が一緒なら、何があっても乗り越えられる









  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る