魔王の娘ですが、拾った勇者に懐かれました ~禁断の恋? それっておいしいの?~
森 湖春/ビーズログ文庫
プロローグ
雲間に見えるのは、
呼吸することさえままならない
「勇者よ、おまえの実力はその程度のものなのか?」
「くっ……!」
対するケイトの背後には、
「ケイト、しっかりしろ!」
「ボルグ……」
魔王との
(ここまでか)
持ちうる手段をすべて講じて戦いに
ここへ至るまでに出会った人々の顔と彼らから
「ボルグ、ウィロー。ここは俺に任せて、人の国へ
「おまえだけを残していけって言うのか!」
「そんなこと、できるわけないじゃないですか!」
「
ケイトは死を
ケイトの持つ神の祝福は、状態異常を無効化し、回復力を上げる効果がある。
聖女の
「俺は残るぞ。帰りを待っている家族なんていないからな」
「ボルグ、すべてが終わったら女遊びを卒業して家庭を持つんだと言っていたな」
「僕も残ります」
「ウィロー、
人の国に残してきた未練を
「さぁ、聖女を連れて早く行くんだ!」
「…………すまん」
「態勢を立て直して、必ずケイトさんを
ボルグとウィローは意識のない聖女を
ケイトはこれでいいと笑いながら、魔王を
「別れは済んだか? おまえの覚悟をたたえ、
「その
ケイトは
「おまえは我に
魔王の宣言とともに
(ボルグとウィローは
倒れ臥した体は動かず、頰に伝わる地面の冷たさだけが、ケイトを現実につなぎ止めている。視界はじわじわと
音も色も
「今代の勇者は戦い
一歩、また一歩と魔王は近づいてくる。そして││ カツン、となにかを
「これは……おまえのものか?」
ケイトはぼんやりと魔王の動きを目で追い、彼の手にあるブローチを見て必死に手を
「くっ。それだけは……!」
「ほう。こんな腹の足しにもならないようなもののために
つくづく
倒れ臥したケイトの
この
「おまえ、その目の色は……」
「ルシフェル! そこにいるか」
「はい、ここに」
ルシフェルとは、魔王の第一子のことだろうか。たしか、
(俺たちを迎え
魔王を倒せたとしても、ルシフェルと連戦になっていれば負けていた。どう
勝てる見込みなどなかったのだ。
(俺の判断は
少なくとも三人は助けられたのだ。負け勇者にしては、まずまずの結果を残せたと思う。
「ルシフェルよ、この者を
「牢へ? 父上、勇者にとどめを刺さないのですか?」
「おまえには関係ない。いいからこの者を牢へ入れ、アスモを呼ぶのだ」
「なぜアスモを……いえ、分かりました」
(たしかアスモも、魔王の子だったは、ず……)
引きずり込まれるように意識が遠のく。
重たくて仕方がなかった体が急に軽くなり、
で、ケイトは意識を失った。
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