neo侍日本党

龍玄

第1話 JICA解体? 

 天海は侍日本党を一旦解党し、幻想の世界で大胆に振舞い、現生に響かせるべく、魂界の龍玄と共にneo侍日本党を結党した。

 魂界の龍玄は、霊界と神界の狭間にある魂界の住人であり、神界の門前にある雷界に通じる存在だった。没後三百年の修行を経て魂界の一員となり、人間に憑依し、その者が三億円の稼ぎを通帳に一瞬でも記載させれば「徳」を得られ、その達成人数の多さで身分が上がる世界にいた。龍玄は達成者の数を早い段階でクリアさせ、魂界の「師」を司る地位にあった。龍玄の生い立ちは、「この世の花に魅せられて、今はあの世で生きて候」を参照して頂くとして、「蠢く烏は闇夜に笑う」で明智光秀を天海に導いた者でもあった。教え子の幾人かは独立し、米国の魂界からの要請でカード大統領の側近に憑依し、米国からの圧力によって日本を変えるため尽力していた。イーロンマークに憑依し日本のディープステートと親中議員を炙り出させ、次はザッカーバングに憑依し、スパイ防止法成立を目指して動いていた。龍玄が属する魂界は「独裁」を禁じ手とし、「派閥」を「良し」とはしなかった。龍玄は天海を通じ徳川政権の安泰に寄与していた。その際の陰の功労者は、服部半蔵だった。

 龍玄はneo侍日本党の人材に苦慮していた。熟考の時間はなかった。目前の問題に対処すべくその都度、人材を転生させようとしていた。既に侍日本党で転生させた武将を中心に組閣を考えていた。惜しまれるのは豊臣秀吉だった。秀吉は既に二度転生を行い、三度目が叶うのは百二十年後になっていた。

 総理大臣は徳川家康、天海は副総理のままで、黒田官兵衛を幹事長に、本田忠勝を政調会長に、加藤清正を総務会長に、服部半蔵を国務大臣に据えた。

 天海は組閣を簡素化したかった。目が届き、声が聞こえることの大事さを優先したかったからだ。効率の良さは迅速な判断に通ずると考えていた。

 そこへ服部半蔵がテレポーテーションで現れた。


天海「如何致した」

半蔵「JICAがとんでもないことをしでかし、大問題になっておりまする」

天海「何を犯した」

半蔵「JICAの曖昧な対応で日本の国土をアフリカに献上したように世界に配信され

   ておりまする」

天海「何と!」

半蔵「如何致しましょう」

天海「JICAとは独立行政法人国際協力機構だったな。それが国の代弁者と認識され

   ておると言うことか?紛らわしい。管轄は外務省か…」

半蔵「外務大臣はお決めになりましたか」

天海「やはりここは、伊達政宗殿にお願い致すか」

半蔵「では早速、政宗殿に繋ぎを取りまする」

天海「任せると伝えて下され」

半蔵「御意」


 半蔵は、伊達政宗の元に向かった。政宗は中庭を眺め、禅を嗜んでいた。


政宗「お引き受け致しましょう」


 以心伝心とはこのことかと思わせる対応だった。neo侍日本党になって意思疎通がこれほどにも素早くできるとは有り難いと満面の笑みで政宗は感銘を受けていた。


半蔵「内容は把握されていると言う事で宜しいでしょうか」

政宗「承知」

半蔵「如何なされます」

政宗「英語でアフリカの先走りを完全否定を行う。本来ならこのような誤解を招い

   た詳細を探るのが本筋も今後必要なき機構など眼中にはないわ」

半蔵「JICAは解散と言う事ですか」

政宗「そうと言いたいところだ資源搾取の手掛かりであるのは間違いない。お役所

   仕事のお花畑に笑顔が咲き誇っただけであろう」

半蔵「では」

政宗「担当者にお灸を据えましょう。更迭、いや二階級降格に足す。記憶教育の優秀

   な者とされておる。代わりを用意するのも面倒であろう。取り敢えず、曖昧な

   表現を避け、言語の意味を深堀させなければ同じことが起き得る。言語をし

   っかり精査し、言語の専門家に吟味致す。捉え方で大きな誤解を招く故にな。

   しかと、文章に起こさせる。それ以外、やらねばならぬことがある」

半蔵「御意」


 半蔵は、天海に政宗の判断を伝えた。


天海「冷静に判断したか」

半蔵「と、申されますと」

天海「怒りに任せて解体一択では浅いと言う事よ」

半蔵「分かるようにお願いできますか」

天海「あははは。裏には資源の奪い合いが絡む。中酷が債務の罠で発展途上国の資

   源を奪う。それは世界経済に悪影響と中酷の主導権を強くするものだ。騙さ

   れてからでは遅い。騙される前に意見を聞かせるためにも何らかの援助とい

   う仲良しこよしが必要じゃからな」

半蔵「JICAがその役割を担っていると言う事ですか。低姿勢でニコニコ接してつい

   大袈裟な内容を口走ったか誤解させる言動をしたと」

天海「それが事実だろう。直ぐに解体だなどと先走れば、即交代かと思うておった

   が、取り越し苦労だったわ」

 

 半蔵は羨ましかった。意思疎通の巧みさは喉から手が出るほど欲しかった。


天海「政宗殿は、開発途上国への国際協力は中国支配の防御策として使えるが、自

   ら学び向上しようとしない国への援助に血税を使うのはドブに金を捨てるの

   と同じとも考えている。JICAの支援はアフリカ民が帰国後に自立させるも

   の。政宗殿は、間違いなく、担当者を降格させるであろう。更迭したのでは

   恐怖は去る。傍に置いて二の舞になる恐怖を味合わせる方が効果的だ」

半蔵「確かに。自ら立ち上がらぬ者に手を差し伸べても、脛を齧られるだけで何ら

   見返りは望めませぬ。放置すれば、資源が奪われる。その匙加減だと」

天海「中酷が開発途上国へ援助・投資を行うのは、奪い取るための罠」

半蔵「債務の罠ですな」

天海「与えれば奪うは当たり前。その結果、友好どころか犬猿の関係ではないか」

半蔵「開発途上国とは礼節を考える領域に達していないと言う事ですね」

天海「礼節を求めるのは、教育を受けた者に限る。並では役に立たない。だとすれ

   ば、まずは教育を与えなければな。何かを成し遂げた実績のない国に恩を売っ

   た所で隷属関係にしかならぬわ。恩知らずに接するは馬鹿を見るのと同じか

   自己満足でしかないわ」

半蔵「あと、政宗殿がやらなければならないことがあると言われていました」


 半蔵は、天海の存在を頼もしく感じていた。




 












(主な登場人物)

魂界 龍玄総大法師

徳川家康総理大臣

黒田官兵衛幹事長

本田忠勝政調会長

加藤清正総務会長

伊達政宗外務大臣

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る