第23話 氷結支配と仲間との連携



 冬のある夕方、学園の周辺は冷たい風に包まれていた。雪乃は手のひらに微かな冷気を宿し、指先で氷の結晶を微細に操る。今日は後輩たちと共に、非日常的な大規模トラブルを想定した応用訓練を行う日だ。学園祭や都市応用で得た経験を活かし、雪乃は自分の氷結支配を最大限に試すつもりだった。


「雪乃先輩、今日は何をするんですか?」

 後輩の声に、雪乃は微笑みながら答える。

「今日は広範囲凍結と時間凍結を組み合わせて、大きな空間の安全を確保する訓練よ。みんなで協力すれば、どんな場面でも対応できるはず」


 校庭に集まった後輩たちは緊張しながらも、雪乃の説明に耳を傾ける。玲奈も側で準備を整え、雪乃のサポートに回る。雪乃はまず、校庭全体の空間を部分的に時間凍結し、安全な範囲を確保する。指先に微細な冷気を宿し、氷の結晶を空中に散らすと、結晶が光を反射し、幻想的な光景を作り出す。


「まずは小さな危険から練習するわ」

 雪乃の合図で後輩たちは氷結を操り、倒れた物や転がるボールを凍結して止める。最初はぎこちなかった動きも、雪乃の指導で徐々に精密さを増す。玲奈も加わり、氷結の造形を融合させることで、空間全体の調和を図る。氷の結晶は光を屈折させながら舞い、まるで冬の舞台が現れたかのようだ。


 その最中、想定外のトラブルが発生する。校舎裏の小川が氷の張り方の影響で崩れかけ、遊んでいた子どもたちが危険な位置にいる。雪乃は瞬時に広範囲時間凍結を展開し、流れを止めつつ、氷の壁で安全な通路を作る。後輩たちも雪乃の指示に従い、氷結で支援する。全員の力が融合し、危険は未然に防がれた。


「雪乃先輩……すごい……!」

 後輩たちの声には驚きと尊敬が混ざる。雪乃は微笑み、心の中で静かな達成感を感じる。能力は単独で使うより、仲間と協力することで、さらに大きな力を発揮できるのだ。


 夕暮れ、空が赤く染まる頃、訓練は終わる。雪乃は指先に残る冷気を感じながら、心の奥で思う。力の成長は確かにある。しかし、それ以上に大切なのは、能力の使い方と仲間との連携だ。雪乃の心には、責任感と友情が冷たくも温かく共存していた。


 夜、雪乃は日記を開き、今日の出来事を記す。

「今日は後輩や玲奈と一緒に、大規模なトラブル対応を想定して訓練した。能力は成長したが、仲間と協力することで力の幅が広がることを改めて実感した。氷結支配は単なる力ではなく、日常や非日常で人を守り、美しさを作る手段でもある。もっと高めて、広く活かしたい」


 窓の外、夜空には星が瞬き、校庭の氷結の光が淡く残る。雪乃の心もまた、冷たく凛としながら、友情と責任感で温かく満たされていた。氷結支配は日常と非日常の狭間で、雪乃と仲間たちの成長、そして世界への影響を確かに刻み続けている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る