19話:白昼夢説
「わかったわ……ゲームの為にもとにかくストーリーを短くするわ……ゲームを面白く……するためにもおおおお!」
机を振動させながらも俺の感想を受け入れてくれ、落ち着いた中村。
とりあえず、小倉に言った感想をもっと事細かく話した。
俺なりのこうした方が良いのではないかという改善も素人だが彼女にしっかり伝えられたと思う。
「傷つけてしまったかもしれないが、ゲーム自体は面白かった。だから、メインのゲームを食わないようにストーリーを調整すれば……」
「ゲーム部分は、ほぼ小倉達が作ってるけどね」
「……あ」
俺は咄嗟に片付けをしている小倉へ振り返る。
奴と目が合うと、
「ヌヘヘ……」
っと照れくさそうに頭を掻いていた。
これは……俺は間接的に中村の事を……
「とりあえず、アタシが足を引っ張っていたってことでしょ」
「い……いや、その……」
「別に良いわよ。アタシの実力がまだまだだったってこと」
大きく息を整える中村先輩。
暴れたりしたが、気持ちが落ち着けばまともに戻る気質みたいだな。
あと、胸がデカい。
「そう言えばアンタ……えっと松本だっけ? フウリに用事があるって話だったけど、何の用事なの?」
ちゃんと俺の話も覚えていてくれたみたいだ。
そして思っていた通り神瀬に会いたい理由を聞かれる。
「……」
たぶん、この件に関してはシュークリーム如き有耶無耶に出来ない話だろう。カオルが昨日言っていた事を思い出す。
――今の話をしたら興味を持ってくれるかもよ!
信じる信じないにしろ、寧ろこの人には普通に話した方が刺さるのかもしれない。
「赤い空……巨大な手って知ってるか?」
「……赤い空?」
中村にジャブとして世界の終わりの記憶があるか確認する。
だが、やはり記憶は無さそうだ。
「……」
息を整える。
カオルには話せたが、今度話すのは完全な他人。
頭がおかしい奴だと思われるのはもう覚悟するしか無い。
俺は人に見せる用のメモを中村達に見せた。
「……?」
「実は今……俺の周りで変な事が起きているんだ……」
俺は話した。
赤い空。
死にゆく人々。
世界の終わり。
大野の名前を伏せた殺人鬼。
高い建物を向かう梅沢。
空から降りてくる大きな手。
下水道へ向かう神瀬。
そして、チュチュリナというパスワード。
時系列をなぞり俺は彼女達に話した。
小倉は終始ポカンと口を開けていたが、中村はジッと何も言わず、笑わずに話を聞いてくれた。
「俺の頭がおかしくなったのかもしれない……だけど、確認しないいけない気がするんだ」
「……」
「そして、神瀬フウリに会ってパスワードの意味を聞きたいと思ってる」
話していて自分が正気なのか改め自信がなくなっていく。
だが、それでも神瀬に近しい人物である中村には本当の事情を説明する必要があると思ってしまった。
信じてもらえないとは思ってはいるが……
しばらくマルチ制作研究部に沈黙が流れるが、それを破ったのは中村の一言だった。
「……統合失調症」
淡々と彼女は続ける。
「もしくは解離性人格障害。幻聴幻覚、白昼夢なんかを見てしまい現実と妄想の区別がつかなくなる精神疾患のこと……今の話を聞いたらそれが浮かんだわ」
中村の話に小倉が聞く。
「トモちゃん先輩詳しいっすね……」
「小説のネタとして調べた事があるだけよ」
「なるほどッす! あ、でもつまりその……DQN先輩は病気……って事っすか?」
「今の話を聞いて正気な奴だって思う方が無理あるでしょ」
……それはそうだ。
当然だが彼女も俺の話はただの妄言だと思ってしまったようだ。
それは仕方が無い……
彼女に神瀬の研究室や居場所を聞くのは無理だろうとこの時悟った。
しかし――
「でも、あり得ない話しなのは前提だとしても……支離滅裂って程話の筋が飛んでいるように思えないのが感想よ」
俺を睨みながら中村は続ける。
「妄想、もしくは創作話として聞きたいわ。質問しても良い?」
「え……」
「議論よ」
圧の強い睨みをきかせる中村。
「小説のネタとして、アタシにその話を提供しなさい!」
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