第3話
椿「あはははははは!絵下手すぎだろ!」
は「うるさいな〜。」
文化祭前日の準備中、暇なのでポスターを作っていたら椿が覗いてきて指差して笑われた。
そして椿の前の席に来ていた拓也にも覗かれた。
拓「なんだよこれ?気持ち悪いな。」
は「フラダンスしてる人だよ!クネクネするじゃん。」
椿「クネクネしすぎなんだよ!こんなに関節ねーよ!あはははは!」
あまりに笑ってきてむかついたので椿が作ったのを見たら...めちゃくちゃ上手い。そして2枚も描き上げている。
ハワイアンな雰囲気のヤシの木やビーチサンダルなんかを描いていたり
亀やハイビスカスを書いていたり...。
予想外の方に驚いてしまった。
は「え。椿って絵上手いんだ。」
そう言うとドヤ顔で見せてきた。
椿「芸術的センスはあるんだな〜これが。」
は「運動神経は悪いもんね。」
椿「うるさい。」
拓「俺も上手いっしょ?」
は「え?!!上手い!!」
椿「上手くはねーだろ、底辺な争いだな。」
拓「あはははは、腹立つな〜!」
どうやら上手くはないらしい。文字大きく描いてデコレーションしていて、端っこにちょっと不細工な亀、私が見たら上手だった。
...もう一度言ってみる。
は「え?!!上手いよ!すごい!このちょっと不細工な亀とかさ。なんだ、拓也も絵うまかったのか〜。」
拓「お前、いじってるだろ?」
椿「あはははははは!」
は「あははは」
椿と2人でゲラゲラ笑っていると、他の人にも私のポスターを見られて笑われ、それは外に張るなとまで言われた。
渋々自分のポスターを眺める。この時間、何のために作ったのか。
キーンコーンカーンコーン
は「じゃあね〜、また後で。」
椿「うん、じゃ。」
授業が終わり、できる人だけ残って最後の準備をするらしい。
準備をやってくれるギャル達にお礼を言うと、部活頑張ってと言ってくれた。絡みは少ないが、みんないつも優しい。
部活に向かおうとしたところ、他のクラスの女の子に声をかけられた。
「あの!」
は「ん?私?」
小柄で明るめの髪をした可愛らしい人。
初めて話す。
「あの、椿くんと付き合ってますか?」
は「えぇ?!!ないない、付き合ってない!」
まさか突然そんなことを聞かれると思わずに驚いた。
そう答えるとその人は、そっかとお礼を言って立ち去った。
土「どうしたの?」
びっくりして立ち止まっていた私に土屋が声をかけてきた。
は「いや、椿と付き合ってんのか聞かれて驚きすぎて立ち止まっちゃった。」
土「あ、え。そっち?!あははははは!」
は「ねー。びっくりしちゃったよ。」
土屋が声をかけてくれたので我に返ってプールに向かって歩き出す。
土「まあでもずっと授業中話してるんでしょ?噂になるかもね。」
は「えー、嫌だな〜。」
土「嫌なの?いいじゃんイケメン。...そもそもはるな好きな人いないの?」
は「いないいない。好きな人とかできたことない。なんか、恥ずかしいじゃん。」
土「なんと、まあ。」
は「土屋は本当に椿狙ってんの?」
土「いやー、ちょっと私に興味なさそうなんだからもう無いかな〜。でもかっこいい。」
は「え。そうなの?なのに毎日送ってもらってんの?」
土「いや、......そうか、あなたそーゆータイプ。...ちょっと、驚くレベルな鈍感さだね。」
は「何が?どう言うこと?」
意味がわからないことを土屋が言っていたので聞いたけど、1人で考えて呟いていた。
土「...なるほど。好きな人できるといいね。」
は「えー、一生できない気がする。」
土「えー、恋しようよ〜。」
珍しくそんな会話をしてすれ違う友人に挨拶しながら今日も部活へ。
----------
「「お疲れ〜。」」
いつも通り部活が終わって椿と煇と合流した。
土屋は歩きなので他3人がそれぞれ自転車を取ってくる、私が最初に土屋と合流。
は「今日も送ってもらうの?」
土「...あは。」
てへっと笑う土屋を見て、そうですか、と思う。
は「...何で土屋じゃなくて私が噂されんのよ。」
煇「何が?」
待っていると煇が来た。
は「今日、椿と付き合ってんのかって聞かれた。」
煇「あ、俺も前に1回聞かれた。」
は「え?!」
椿「何が?」
そして椿もやって来たのでまた説明した。
椿「あ、俺も前聞かれた。いつも帰り待ってんじゃんって。」
は「え?!!何それ。めっちゃ噂になっちゃってんじゃん。」
知らぬ間にそんなことになっていて驚いたし焦った。
ど、どうしたらいいのか...。違うのに!
椿「...俺じゃねー。って言っといた。」
は「俺じゃねーって、そもそも彼氏なんていないわ!」
椿「まあできるかもしれないじゃん?ね。」
椿は煇に問いかける。
煇「.....。」
は「困って黙らないでよ?!できないってこと?!いやそうかもしれないけど??!」
煇「いや!違う!!違う違う!ごめん何言えばいいかって!」
「「あはははははは」」
困った煇を見て土屋も椿も楽しそうに笑っていて私も笑った。
全然椿は彼氏じゃ無いし、友達として面白いから好きだけど恋愛感情では無い、はず。
そもそも周りの友達が面白い人ばかりで毎日楽しい。
高校2年生にもなっていまだに恋愛に興味が無かったし、誰かを好きになったことも好かれたこともなかった。
一緒にいて楽しい友達がいてくれたらそれでいい、別に彼氏が欲しいと思わない。と考えてしまう。
だけど、世の中の女子はほとんどの人がそんなことはないらしい。
4人で歩きの土屋に合わせてゆっくり校門まで行って、椿と土屋と別れた。
土「じゃ、また明日!」
椿「また明日。煇、頑張れよ。」
煇「え、うん。また明日。」
は「またね〜。」
今日も煇と一緒に帰る。
椿じゃなくて煇が待っててくれてるんだけどな〜。
車の多い通りは1列になり、中の道に入って横に並んでゆっくり漕いで話しながら帰る。
は「何か頑張ることあんの?」
帰り際に頑張れと言われていたのが不思議だった。
煇「え?!あ、あぁ、明日ほら、ライブ本番だし。」
は「あーね。午前中だよね。土屋も拓也も当番じゃ無いらしいから見に行くよ。」
煇「ありがとう。」
椿と煇はバンドをやっている。
椿は2つもバンドを組んでいるらしく、さすが芸術家、と言うと煇は笑っていた。
あんまり音楽は聴かないけど、知ってる曲だったらいいなと思う。
煇のクラスはボードゲームカフェだって。
面白そうなので行ってみたいと言ったらちょっと嬉しそうだった。
あっという間にいつも別れる道に着いた。
は「じゃ、また明日〜!」
煇「あ、ちょっ、ちょっと待って!」
は「え??」
いつもチャリを漕いだまま別れるので急に止められて驚いてブレーキをかける。
乗ったまま振り向くと、煇はチャリから降りて歩いて少し近くまで来た。
煇「あのさ、」
何となく私もチャリから降りて立った。
煇「文化祭、良かったら一緒に回りたいんだけどどうかな?」
は「え、いいよ。時間合うかな?みんなが合う時間は難しいかな〜?」
煇「あ、いや、みんなというか。」
は「ん?」
煇「......2人で回れたら嬉しい、って話。」
は「2人??」
煇が、少しモジモジしながら恥ずかしそうに言っていた。
は「.....2人???!」
びっくりして考える前に2度も聞き返していた。
煇は縦に頭を振って頷いた。
2人って言ってたよね?
もう一度耳に残っている記憶を呼び起こす。
2人と言った、そして聞き返したら頷いていた。
は「.......いや、2人で文化祭回るって、それほぼデートじゃん。」
煇「うん。」
は「...。」
煇「...。」
は「.........え?!!!」
しっかりと確認してしまい、まさかそんな訳と思ったのに...
ようやく状況を理解をし、急に顔が熱くなってきて、ドキドキと緊張して来た。
煇は恥ずかしそうにしながらまっすぐこちらを見ていた。
は「.......えぇ?!!!」
煇「ふっ、あはははは」
驚きが隠せずにもう一度大きな声で驚いてしまい、煇は何だか笑っていた。
ドキドキと心臓がうるさい。
待って、どう言うこと?
今、もしかして、デートに誘われた???
私が?????
こんな経験は初めてで、ましてや毎日一緒に帰っている相手に言われると思わなかった。
....いや、今思えば毎日一緒に帰ってるって何なんだ???
え???
頭の中で色々と考えてしまいどれだけ黙っていたか分からないけど、しばらくしてから煇が言った。
煇「想像の5倍くらい驚いてて俺もびっくりしちゃった。ごめん、2人が嫌だったら普通にみんな誘おう?」
は「......。」
煇「...。」
は「......。」
煇「...だ、大丈夫?」
は「あ、ご、ごめん。え、ちょっと、待って。びっくり...した。本当に。すごく、びっく...え?」
煇「あははは、いや、笑うところじゃないんだけど。困らせてごめんね。」
は「いや、いやいや、違う。と言うか...私、こんなこと初めてで。....ど、どうしたらいいか分からないだけと言うか。」
煇「俺も。どうしたら良いか...。帰りに会った時からずっと、めっちゃ心臓バクバクしてた。あはは」
は「...。」
少し顔が赤い煇は恥ずかしさを隠すように笑っていた。
煇も、初めて誘ってくれたんだ。
そう思うと、嫌ではないのに断るのも違うけど、.....とはいえ、ちょっとハードルが高い。
は「...2人が嫌なわけじゃ無い、けど、ちょっと恥ずかしいかも。」
煇「そっか。」
素直に思っていることを言うとこちらを向いた。
目が合っている...。
は「...待って、今のこの状態も恥ずかしくなって来た。あはははは」
今の状況も恥ずかしくなってしまって口元を隠して笑ってしまう。顔が熱い。
煇も少し笑って、顔が赤いままだ。
煇「何だよー。ずっと脈なしだったのに。急にそんな顔赤くする?」
は「いや、だって分かんなかったから。」
煇「分かりやすかったと思うけどな〜。」
は「...。」
そう言われて、話すようになってからこれまでを思い返してみた。
椿が隣の席になって、たまに遊びに来ていて
いつの間にか毎日椿のところにやって来てお昼ご飯を一緒に食べるようになり
会えば必ず声をかけてくれるし、部活が終わるの待っててくれて一緒に帰っている。
...分かりやすく少しずつ近い存在になってきている。
は「..........言われてみればそうかもしれない。あはは」
煇「でしょ?何回空振ったことか。」
恋愛ってこんな風に気付かぬうちに進んでいくのですね???
初めての経験にドキドキが止まらずにいる。
は「ははっ...。」
ふとした瞬間に恥ずかしくなって黙ってしまう。
煇が話を進めてくれた。
煇「...とりあえず、明日はみんなで回ろうか。椿達に言っておく。」
は「...うん。ごめん、誘ってくれたのに。」
煇「ううん。...帰るのは、また一緒に帰ってくれる?」
そう言われてドキッとしたのが分かった。
一緒に...2人でと言うことだ。
は「.......うん。」
嫌なわけじゃない。
帰りは人と会うことがほぼ無いのでいいかと思った。
煇「やった。じゃ、また明日ね。」
は「うん。またね。」
そう言ってお互いに自転車に乗り直して、顔が赤いまま手を振って別れた。
ドキドキが止まらない。顔が熱い。
は「はぁぁぁぁぁ。」
どうしたらいいんだろう。
...別に告白されたわけじゃないか。
え。でも、煇、
私のこと好きってことだよね?
は「.....。」
またどんどん心臓の音が大きくなった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます