第16話
俺とエレノアは、昼夜を問わず歩き続け、何度も野宿を重ねて歩き続けた。時には魔物が襲ってきたがエレノアが一太刀で倒していた。
…なぜか今までのエレノアさんより強い気がする。気のせいなのか…。よくわからなかったがエレノアの活躍のおかげで旅は順調に進み、20日後俺たちは「叡智の城塞」へとたどり着いた。
街の門は、巨大な岩でできており、威圧的な雰囲気を醸し出している。門番の兵士たちは、皆、引き締まった体をしており、一目で、この街が戦いに特化していることがわかる。
門をくぐると、そこは、戦士たちの活気で満ち溢れていた。街路には、様々な武器や防具を扱う店が立ち並び、道行く人々は、皆、訓練着を身につけ、真剣な表情で歩いている。
「すごい……。本当に、修行の街だ」
俺は、感嘆の声を上げた。エレノアの言った通り、ここは、勇者として力をつけるには、最高の場所だ。
「さあ、悠斗様。まずは、この街の宿屋に、身を落ち着けましょう」
エレノアは、そう言うと、先を歩き始めた。彼女の背中は、いつも以上に凛々しく、俺は、改めて、彼女の覚悟を感じた。
俺たちは、街の中心にある、最も大きな宿屋に部屋を取った。部屋は、質素だが、清潔で、旅の疲れを癒すには、十分だった。
「さあ、悠斗様。わたくしたちの修行は、ここから始まります」
エレノアは、そう言って、俺に、この街での修行の計画を語り始めた。
昼は、修練場で、剣の腕を磨き、魔物の討伐クエストをこなす。夜は、この街の図書館で、この世界の歴史や、魔法について学ぶ。
俺は、エレノアの言葉に、胸が高鳴るのを感じた。
(よし!これで、俺も、真の勇者になれるんだ!)
俺は、やる気に満ち溢れ、エレノアの言葉に、何度も頷いた。
その日の夜、俺たちは、夕食を済ませ、部屋に戻った。
窓の外は、すでに暗くなっている。
「今日は、もう休んでください、悠斗様。明日の朝から、本格的に修行を始めましょう」
エレノアは、そう言って、俺のベッドを指差した。
俺は、エレノアの言葉に頷き、ベッドに横になった。だが、旅の疲れからか、なかなか寝付けない。
俺は、窓の外に視線を向けた。
昼間は、静かだった街が、夜になると、全く別の顔を見せている。
街路には、昼間とは違う、艶やかな衣装を身につけた女性たちが立ち並び、男たちに、甘い声をかけている。街のあちこちから、楽しそうな笑い声や、嬌声が聞こえてくる。
(え……?なんだ、これ……)
俺は、窓の外の光景に、目を丸くした。
「……エレノアさん。この街って、夜は、こんな感じなんですか?」
俺がそう言うと、エレノアは、静かに頷いた。
「はい。貴方も、この街の噂を聞いたことがあるでしょう?『エッチの城塞』、と」
エレノアは、そう言って、俺を見つめる。
俺は、エレノアが言っていた言葉の意味を、ようやく理解した。
昼は、戦士を鍛える場所として、夜は男と女の欲望が絡み合う街として、全く異なる顔を持つこと。昼の修練場は、夜には性交場へと変化し、男たちと女たちが欲望をぶつけ合い、お互いの身体を求め、性技を磨き合う場所になるのだ、と。
「……え、じゃあ、あの人たちって……」
俺は、再び、窓の外の女性たちに視線を向けた。
エレノアは、静かに、そして、少しだけ寂しそうに微笑んだ。
「はい。皆、この街で、夜の顔を磨いている者たちです。わたくしたちが、昼に剣の修行をするように、彼女たちは、夜に、別の修行をしているのです」
エレノアの言葉に、俺は、言葉を失った。
(修行……。エレノアさんは、この街で、女としての自分を鍛えるって言ってた……。まさか、エレノアさんも……)
俺は、エレノアに、そのことを聞くのが怖くて、口を閉ざした。
エレノアは、俺の様子を見て、静かに言った。
「悠斗様。貴方は、勇者です。この街の夜の顔に、惑わされてはいけません。貴方の目的は、ただ一つ。魔王を倒すこと、です」
エレノアの言葉は、俺の心を冷やし、俺の欲望を抑え込んだ。
俺は、エレノアの言葉に頷き、再びベッドに横になった。だが、窓の外から聞こえてくる嬌声は、俺の眠りを妨げた。
俺の異世界での旅は、新たな局面を迎えたようだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます