第35話:来栖を追い払っていく

 来栖はクリス先輩にそう言われて一瞬たじろいでいった。でもすぐに調子を取り戻してクリス先輩にこう言っていった。


「い、いや、どうしたんですか先輩? 俺は当然の事を言っただけですよ? だってコイツは由緒ある家系の先輩とは違って、ただの庶民かつ無能のゴミカス男なんですよ? そんなヤツが先輩と話すなんておこがましいに決まってるじゃないですか! だから俺からガツンとその事実を伝えてやったまでです!」

「ふむ。幹也君が庶民だから私と話すのはおこがましいというのかな? でもそれを言うのなら私の母も元々は普通の一般庶民だよ? それなら庶民の血を引いてる私も来栖君の言う所のゴミカス女になってしまうんじゃないかな?」

「えっ……あっ! い、いや、そ、それは違いますよ! お、俺はその……そ、そういう事を言いたかった訳ではなくて……!」


(へぇ、クリス先輩のお母さんって普通の一般家庭の人だったんだな)


 クリス先輩たちの話を聞いてたら、俺はその部分にちょっとだけ気を取られた。


 何となく由緒ある家系というのは、由緒ある家系同士で結婚するのが一般的なのかなと勝手に思ってたので、今の話を聞いてちょっとだけ意外だと感じた。


「え、えっと、いや、庶民についてとかそういうのはどうでも良いんです! そ、そんな事よりも……あ、あの男は魔法の素質が限りなく0に近い無能男なんですよ! そんな無能男と交流を深めている事が大問題だと言ってるんです!」

「来栖君はそう言うけど、でも幹也君は無能ではなくとても優秀な男の子だよ? 入学してまだ日が浅いのに既にダンジョン探索をしているし、ゴブリンやスライムなどのモンスターも楽勝に倒しているんだよ? 私はこんなにも優秀な新入生は生まれて初めて見たと思っているくらいだよ」

「いやいや! コイツがダンジョン探索をしたというのは俺もチラっと聞きましたけど……でもそれって初級ダンジョンじゃないですか! そんなショボいダンジョンを探索した所で優秀な理由にはなり得ませんよ!」

「ふむ。確かに幹也君が探索したのは初級ダンジョンだね。でも初級ダンジョンであってもダンジョン探索自体とても難しい行為なんだよ。来栖君はまだダンジョンには一度も入った事がないだろうから、あまりピンとこないかもしれないけど、とりあえず来栖君はダンジョンをそんな甘く見ない方が良いよ」

「ふ、ふん、何を言ってるんですか! 初級ダンジョンなんて聖凛高校に入れるヤツなら誰でも探索出来るに決まってます! それに俺だってゴブリンやスライムくらい何度もシュミレーションで倒して来たんです! だからそんなダンジョン探索なんて余裕です!」

「来栖君。いくらシュミレーションで練習したとしても実践とは全然違うよ。その辺りについては近い内に体育実習で習うと思うから先生の講義をちゃんと聞くんだよ? そしてせっかく魔法の名門たる聖凛高校に入学したのだから、そんな他人を庶民だとかゴミカスだとか言って見下すんじゃなくて、来栖君も幹也君のようにしっかりと魔法の勉強を励みなさい。それに人に悪口を言うのは自分自身の格を落としてしまうから止めた方が良いと私は思うよ?」

「う、うぐっ……そ、それは……その……」


 クリス先輩は来栖に対して全力で𠮟っていく、というよりも子供を諭すような感じで優しく注意をしていっていた。やっぱりクリス先輩はとても心優しい女性だというのがよく伝わってくる。


 まぁでも俺はそんな光景を見ながら来栖に向かって……。


「はは、怒られてやんの」

「ぐうっ……う、うるさい!! 黙れこの下劣な無能なゴミカスが!! ふんっ!!」


―― ダダダダダッ!


 俺はそんな注意を受けてた来栖に向かって笑いながら煽っていった。すると来栖は不快そうな表情を浮かべながらそう言って走るように逃げていった。


 まぁアイツには散々と悪口を言われてたからちょっとだけスカっとしたな。でもそれからすぐにクリス先輩はジト目になりながら俺をジっと見てきた。


「こら。幹也君。そうやって無暗に人を煽る行為は褒められたものではないよ?」

「あ、すいませんクリス先輩。アイツには色々と悪口を言われてたのでちょっとだけイラっとしたんでつい煽っちゃいました。でも今のは良くなかったですよね。すいません、反省してます」

「うん、反省してるのなら良いよ。それに今回の件は来栖君の方が圧倒的に悪いしね。だから幹也君が煽りたくなる気持ちもある程度は理解してるよ。それでもあんまり人を煽ったりするのは良くない行為だから、これからはあまりしないようにね」

「はい。わかりました。これからはなるべく控えるようにします。それとちゃんと注意してくれてありがとうございます」

「ふふ、反省するだけじゃなくて、感謝の言葉もしっかりと出せるなんて幹也君は本当に立派だね。よし、それじゃあ私たちもさっさと学校に向かおうか」

「はい!」


 という事で俺たちはそれからも一緒に他愛無い話をしながら学校へと向かって行った。


 それにしてもクリス先輩は普段はとても温厚で優しいだけではなく、悪い事をしたらちゃんと𠮟ってくれる辺り、クリス先輩って本当に素晴らしい人格者だよな。


 俺もそんな人格者な先輩の事をしっかりと見習っていこう。

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