第3話:とりあえず冒険者になると決めた
無事に母親から聖凛高校の受験許可を貰えたので、これからは聖凛高校に合格するために魔法の修行を頑張る事を決めていった。
(だけど魔法の修行を頑張るって決めたのは良いけど、そもそも魔法の修行ってどうすれば良いんだろう?)
俺がいた元の現実世界では魔法なんて概念は無かった。だから魔法の勉強方法とか修行方法なんて俺にわかる訳がない。なので俺は母親に素直に尋ねていった。
「お母さんさ。そもそも魔法の修行とかってどうやれば良いのかな? 何かそういうのを教えてくれる塾とかスクールみたいなのってあるのかな?」
「あー……そうね、魔法塾みたいなのは都会にはあるらしいけど、でも残念ながらここは田舎だから、そういう魔法塾とかスクールみたいなのは一つも無いのよ」
「そっかぁ。それは残念だなぁ……」
「うん、そうね。せっかく幹也が頑張ろうとしてるのだから、私としても何かしら応援が出来れば良いんだけど……あ、そうだ。それじゃあさ、良かったら今から一緒に冒険者ギルドに行ってみない?」
「冒険者ギルド? それってどんな所なの? というかそもそも冒険者って何?」
「冒険者ギルドは名前の通り冒険者が集まる施設の事よ。そして冒険者というのはダンジョンを探索する人達の総称ね」
「ダンジョン? あ、そういえばさっきもテレビでそんな事を言ってた気が……」
「あら、幹也はダンジョンも忘れちゃったの? それじゃあお母さんがダンジョンについても簡単に教えてあげるわね。ダンジョンというのは……」
そう言って母さんは今度はダンジョンについて説明を始めてくれた。
ダンジョンは今から百年以上前に世界の至る所で突発的に発生した洞窟のような場所らしく、ダンジョンの中では貴重な植物や鉱石など様々な資源やアイテムが手に入るらしい。
そしてそんなアイテムを手に入れるためにダンジョンの中を探索していく人たちの事を冒険者と呼んでいるそうだ。
だけどダンジョンの中にはそんな貴重なアイテムが手に入るだけではなく、中にはモンスターと呼ばれる凶暴な魔物も沢山生息しているらしい。なので冒険者たちはアイテム集めをするだけでなく、これらのモンスターとも戦わなければならないという事だ。
そして多くのモンスターは強靱な肉体や高い身体能力を持っているので、魔法を駆使して倒していくのが一般的となっている。つまりそれは冒険者たちはモンスターを倒すために魔法について知識が一般人よりもとても多いという事になる。
「なるほどー。ダンジョンに冒険者か! それは何だか凄い人たちみたいだね! でもさ、そもそも何でそんな危ないモンスターが沢山生息しているってわかってるのに、ダンジョンを探索する人たちがいるのかな?」
「ダンジョンの中には自然界では得られない貴重なアイテムが色々と手に入るからよ。それに貴重なアイテムの種類によってはとても高額で売れる物もあるらしいのよ」
「ふぅん、貴重なアイテムかー。さっきも言ってたけど、その貴重なアイテムって具体的にどんなのがあるの?」
「例えば一般的に販売されてるポーション薬の素材になってる薬草はダンジョンでしか手に入らないし、今の産業機械とか工業製品に広く使われる硬くて強靱な鉱石とかもダンジョンでしか手に入らないのよ。だからそういう貴重なアイテムを集めて必要としている会社に売って生計を立てる人もいるのよ。そしてそのアイテム売買の仲介役を担っているのが冒険者ギルドという施設なのよ」
「なるほどね。冒険者と冒険者ギルドの役割はよくわかったよ。それじゃあつまり、その冒険者ギルドに行ってみれば魔法に精通してる冒険者が沢山いるって事だね!」
「そうそう。それでこの田舎にある冒険者ギルドには私の親戚が職員として働いているのよ。だからその人にちょっと相談してみましょうか」
「えっ!? 本当に!? うん、わかった! それじゃあ今から行ってみようよ!」
「うん。わかったわ。それじゃあ行ってみましょう」
という事で俺達は早速その冒険者ギルドに向かってみる事にした。
◇◇◇◇
それからしばらくして。
「……それで冒険者ギルドに来たってわけか」
「そうそう。従吾おじさん。良かった幹也の事を見てあげて貰えないかしら?」
「見て貰えないかって……そもそも幹也はまだ小学生になったばかりの子供じゃないか。そんな子供の面倒を見てと言われてもなぁ……」
母親は冒険者ギルドの受付に立っていた男性職員に話しかけていってた。その職員の見た目は40代前半くらいのコワモテなおじさんだった。彼がこの冒険者ギルドの支部長だそうで、母親の親戚の叔父さんでもあるらしい。
「良いじゃない。別に面倒くらい見ても。ここら辺は人口の少ない田舎だから利用する人も少ないから冒険者ギルドだって暇なんでしょ? 閑古鳥が鳴いてるじゃない」
「まぁそりゃあな。というかそもそも今時冒険者なんて滅茶苦茶キツイ職業をやる奴もあんまりいねぇしな」
「え? そうなんですか? 冒険者ってあんまり人気ない感じなんですか?」
「そりゃあな。貴重なレアアイテムを沢山手に入れる事が出来れば大金は稼げるけど、でも凶暴なモンスターと戦う事もあるし、大きな怪我とか負う可能性もあるしな。だから今時はリスクとリターンが見合ってないと言って冒険者をやるヤツはかなり減ったよ。魔法士の仕事がしたいんなら冒険者よりもっと安全な仕事だって沢山あるしな。今時の魔法士なら生産業やインフラ、化学、医療、運転手などなど幅広い分野で大活躍できるしな」
「なるほど。まぁ確かにそう言われてみればそうか」
普通に考えたら冒険者になってモンスターと戦うのってめっちゃ怖いに決まってるよな。
それならもっと安全そうな魔法関連の仕事をやりたいって思うのは当たり前だ。でも俺としては……。
(魔法を使ってモンスターと戦うとか……マジでゲームの中の世界観じゃん! めっちゃ面白そうじゃん!)
俺はそんな事を思いながら思いっきりワクワクとしていった。だってこんなの面白すぎるじゃんか、俺も冒険者になって沢山のモンスターと戦ってみたいよ!
「まぁそんな訳で香澄の言うように閑古鳥が鳴いてるのは事実だ。でもだからといって幹也の世話をしてくれって言われてもなぁ……別に閑古鳥は鳴いてるけどギルドの仕事は普通にある訳だし」
「何もずっと面倒を見て欲しいって言ってる訳じゃないわよ。少しで良いからこの子の魔法の修行に付き合って欲しいのよ。ここら辺は田舎過ぎて魔法塾とか魔法スクールなんて何もないでしょ? だから幹也に魔法を教える先生になって欲しいのよ。従吾おじさんはほら、冒険者としては一流なんだし、人に教えるのも得意でしょ?」
「え? おじさんって一流の冒険者なの?」
「うん、そうなのよ。従吾おじさんはS級冒険者として若い頃は全国のダンジョン巡りとかしてたんだからね。その成果もあって今は地元の冒険者ギルドの支部長をしているって訳よ。支部長ってかなり偉いポジションだからね。だからこの叔父さんは意外と結構凄い人なのよー!」
母さんは誇らしげな表情をしながら従吾おじさんの事を紹介してきてくれた。
「意外とは余計だ。でも幹也は魔法の修行がしたいだなんて……それはどうしてなんだ? 魔法の修行がしたい理由を教えてくれよ」
「僕は魔法専門高校の聖凛高校に入りたいんだ。だから聖凛高校の受験に合格するためにも今から頑張って魔法の勉強をしたいんだ!」
「聖凛高校? 確かあそこって由緒ある家系のエリート様がめっちゃ多くて、一般人は魔法の才能があるヤツしか入れない事で有名な高校じゃなかったか? 幹也の魔法適正は強化魔法の1つだけなんだろ? たった1つしか魔法適正がないのにあの高校に入りたいってのは流石に無茶が過ぎると思うが……」
「私もそう言ったんだけど、でも幹也がどうしても聖凛高校に入学したいっていうのよ。だからお願いよ従吾おじさん。幹也の魔法の修行に付き合ってあげてよ」
「お願いします叔父さん! どうか僕に魔法の修行をつけてください! 僕、聖凛高校にどうしても入りたいんです! だからどうか……お願いします!」
「……はぁ。わかったよ。親子揃われてそこまで全力でお願いされたら流石に断れねぇよ。でも俺は今まで冒険者しかしてこなかったから、冒険者流の修行方法しかわからんぞ。だから都内にあるような魔法塾とか魔法スクールみたいな懇切丁寧な教え方なんて出来ねぇからな。俺のは冒険者流の圧倒的にスパルタな修行になるし、それでもしも幹也が修行中に泣き言なんて吐いたら俺は二度と修行なんて見ないからな。それでも良いならお前の修行を見てやるよ」
「うん、もちろんそれで大丈夫だよ! 絶対に泣き言なんて言わないからビシビシと僕の事を鍛えてください! という事でそれじゃあ改めて……よろしくお願いします! 従吾おじさん!」
「おう。わかった。こちらこそよろしく頼むな」
「はい、お願いします! それじゃあ早速なんですけど、まず最初にどんな修行から始めていけば良いですか?」
「そうだな、それじゃあまずは基礎訓練からスタートしていこうか。まずはランニング、腕立て伏せ、腹筋からだな。それが終わったら一緒にダンジョンに入って薬草を集めに行ってみようか」
「はい、わかりました!」
という事で俺はその日に親戚の元冒険者である従吾おじさんに弟子入りして、まずは身体を鍛える修行から始めていく事になった。
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