第2話 怒り

胸の奥に何がが詰まった。 誰かが意味もなく吐いた言葉だろうか。 いつもは耳から流れていくはずの言葉が頭の中で反復している。


頭の中で言葉が繰り返される度、その声は大きくなっていく。


唾は思うように呑み込めず、胸の中はやけに息苦しい。 頭の血管が軋み、鈍い痛みが思考を遮る。後頭部から流れ出した熱が体全体に行き渡って、 僕を支配しようとしている。


僕は「怒り」を感じているのだ。 何に怒りを抱いているのかは分からない。 ただ、体を支配しようとする大きな力に体を預けたい気分だった。


でも、それは無理だった。 怒りは何故か外に出てこなかった。


そして、胸のざわめきだけが取り残された。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る